男の痰壺

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ブレードランナー2049

★★★ 2017年11月5日(日) MOVIXあまがさき3
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こんなんなら、いっそ物語なんて無くても良かったのに…。
終盤で「救世主」である子供を旗頭に地下に潜ったレプリカントたちが集うシーン。
俺は既視感に萎えたのだった。
これは「猿の惑星」か?
 
導入から映像はすばらしい。
都心部から郊外の農村部へ飛翔する映像が目くるめく。
ビニールハウス越しに着陸する機体を捉えたショットの粋さとモンタージュの快感。
 
だが、この映画は以下の点で初作と決定的に違う。
①人間がレプリカントを狩る前作に対しレプリカントレプリカントを狩るという点。
  これにより人間になりたいと切望するレプリカントがその人間に狩られる悲哀感は消失した。
②狩る者と狩られる者個の対決に収斂していった前作に対し一応個の闘いは描かれる。
  体制側の女レプリカントとの対決が相当の尺で費やされるが、もともとロクなドラマがあるわけでもないので盛り上がろうはずなく冗長でしかない。
 
AI美女との恋愛が悲哀をそそるように中盤で組み込まれるのも出し殻感が弥増す。
 
煎じ詰めればこの映画、人間が不在なんだわ。
唯一の「人間」ハリソン・フォードが又ぞろ顔出すが食傷気味。
実際、ほとんど活躍もしないし…。
 
開巻からの未来造形の美術・撮影の完璧さは対立軸を喪失した物語によって褪せていく。いっそ何もないならまだマシだが既視感のある陳腐へと流れて情緒も過多。メシア待望の反旗は主人公の自分探しと噛み合わず形骸化する。フォード起用もオーラ無さすぎ。(cinemascape)