男の痰壺

映画の感想中心です

ザ・メニュー

★★★ 11月28日(月) TOHOシネマズ梅田4

撮影と美術が秀でていてなんとなく満足感が得られたような気がするのだが、全てが浮ついていてどうってことなかったという、そういう新規オープンの器だけオシャレな飲食店ってあるよなと思わせる出来。

 

孤島にある有名レストランに何人かの男女が招待される。それは誰かに何らかの意図で集められた面子であった。とまあ、アガサ・クリスティみたいな設定です。

 

【以下ネタバレです】

まあ、結局それはシェフが仕組んだものだったわけだが、その理由がボカされていてスッキリしません。料理を酷評した評論家だとか、たまたま休日に見たしょーもない映画の主演俳優だとか、ネタを割るほどに底浅が露呈していく。

一方で何十人もいる店のスタッフたちが洗脳されたみたいにシェフの言うがままという奇異な設定があって、剣呑なムードを醸成するだが、ぶっちゃけ思いつきの飛び道具の域を出ません。

 

セレブな招待客たちのなかに、下層階級のコンパニオン、アニャ・テイラー=ジョイが紛れ込んでいて、映画はシェフのレイフ・ファインズとの対決構図を志向するのだが、行き切れてません。だってアニャとレイフは同じ側の人間だから軸にはなり得ないんです。

 

」リベラル富裕層が保守庶民を拉致して弄び殺しまくる「ザ・ハント」や田舎の村民を富裕層が殺しまくる「バクラウ」みたいな分断の表層を逆撫でする映画を見た後では、この映画の構図は未整理でてんで甘いとしか言えません。

 

ネタが割れるにつれ底浅が露呈していく。内装と器だけご立派で料理は凡庸な新装レストランみたいな映画。中盤以降アニャVSファインズの対決構図を指向するが行き切れるわけない。だって2人は同じ側の人間だもん。撮影と美術の良さには唸らされた。(cinemascape)

 

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