男の痰壺

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恐怖の報酬

★★★★ 2018年12月2日(日) シネマート心斎橋
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映画のデジタル化に本質的には賛同しない俺であるが、この映画の鮮明な「緑」にはちょっと参った。
オリジナルが同じ南米を舞台にしながら、砂漠みたいな背景だったのと違って、こちらはジャングル。
その点が、差異はいろいろあっても決定的な点だと思う。
どんな名匠が撮影してんねんと思ったが、あまり知らん人であった。
 
これは、絶頂期にあった映画クリエイターが、調子にのって青天井の予算を引き出して独裁的に作ってコケた映画として、コッポラの「地獄の黙示録」やチミノの「天国の門」と並ぶ映画だ。
なんせ、フリードキンが直前に撮ったのが「フレンチ・コネクション」と「エクソシスト」なんだから。
 
まあ、オリジナルと話はおおまかには変わらないので、ストーリー的に妙味は無い。
ああ、ここでこいつら死ぬんやなと思ってて、その通りになる。
 
ただ、描写って点では凄い強度であって、どんだけねばったんやろかとそら恐ろしい。
白眉は、ポスターや予告編でも相当に使われているが、吊り橋の渡河シークェンスで、CGの無い時代によう撮れたもんだ。
トラックの重量感とか半端ないし、グラグラ傾くのが、本当に落っこちそうで固唾を飲むのである。
こんなもんそんじょそこらで撮れるもんやない。
 
今回、この南米の吹き溜りに集まった面々の、それ以前がけっこうな尺で描かれるおかげで、最果てまで来ちまった感と胸苦しいまでの望郷の念が鮮明になった。
特にセレブなパリの銀行マンだったが手張って穴開けて逃げてきたブルーノ・クレメル。
その相貌の変貌と置いてけぼりにした愛妻への想い。
まじ泣ける。
 
密林の深遠な緑が豪雨と相俟る吊り橋渡河シーンはその重量感と傾斜の絶妙が神業で映画遺産級。最果てまで来ちまった感もオリジナルを凌駕し仏人クレメールの「望郷」はギャバンのそれより切実で泣ける。そして醜女とのダンスが奈落を彩るアイロニー(cinemascape)