★★★★★ 2019年2月16日(土) 大阪ステーションシティシネマ12
原作は未読です。
っていうか、そんな派とかあるんかしらんが。
ハルキ・ムラカミの小説の主人公って、何か食うって言えばパスタで間違ってもご飯と味噌汁と沢庵なんか食いそうにないっしょ。
この映画でもパスタ、出ます。
あと、アメリカ文学。
チャンドラーじゃなくフォークナーってことで、意識の流れの人ですな。中学生のころ「八月の光」ってのを読みましたが、覚えておりません。
まあ、イ・チャンドンは、よくハルキに寄り添ったと思うし、独自の世界も加味して相乗的に出来上がったものはサスペンサブルな暗喩に富んだ傑作になったと思う。
意識して夕暮れ時の仄かな光を取り入れようとしている。
主人公の住む農村部での場面は概ねそうで、そこに北と隣接する為に情宣放送が断続的に聞こえてくるってのも刹那な感じが深まる。
はっぱ吸って、ビニールハウス焼く話聞いて、女が踊りだす。
「死刑台のエレベーター」のマイルス・デイヴィスが1曲まるごと使われるが、俺はたまんねえって思った。
そんなん、自信がよっぽどないと無理っす。
で、このあと女は消える。
「シークレット・サンシャイン」も子供が消える迷宮譚であったが、これは新たな迷宮を描いた傑作。
適度に春樹意匠は残存させつつ独自世界が延伸する理想形で『いとこ同志』な人物配置にマイルス丸っぽなド真ん中で詠嘆するというNVも侵食する失踪の迷宮。転換点のマジックアワーに拘った光と北情宣放送の幽かな響きの刹那が無辜な地獄への入り口。(cinemascape)