男の痰壺

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のぼる小寺さん

★★★★★ 2020年7月10日(金) 梅田ブルク7シアター5

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不思議ちゃんキャラの同級生の女の子に惹かれるってのが、昨年の「殺さない彼と死なない彼女」みたいな滑り出しなのだが、あれが2人だけの世界に耽溺していくのに対し、今作は複数人に余波がもたらされる。

この小寺さんというキャラが、背景とか来歴が全く語られないのが、ともすれば表層的な脳内でっちあげの謗りを覚えかねないのだが、ボルダリングという俺なんかであれば到底ぶら下がっただけでギブアップしちまいそうな難物を熟す工藤遥の身体性の一点突破で押し切り納得させられてしまう。

絶対的な映画成立の条件だという揺るがない確信があったと思います。

 

中盤にある学園祭のシークェンスがいい。

このダラーっとしたモラトリアムな感じに微かな既視感を覚えたのだが、考えてて「翔んだカップル」のモグラ叩きの空気感だと思いました。この映画、ボルダリング部の先輩のキャラも含めて総じて80年代の香りがします。

 

監督の古厩智之はPFF出身。たぶん森田芳光とかのチョイ後の世代だろう。ずーっと以前に「まぶだち」を見たっきりだが、こういう映画ならもっと見たいと思わされました。

 

モラトリアムに過ぎゆく10代の黄昏。彼奴も此奴も同じと思ってたがそうじゃない彼女への興味は何時しか連帯渇望になる。押しつけがましくない青春への提言であり茫漠とした過渡期への慈しみ。茶番になりかねぬアイコン性は工藤遥の身体性で担保される。(cinemascape)

 

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