★★★★ 2020年8月23日(日) 新世界東映
監督の山口和彦ってあんまり取り上げられない人だが、デビュー作の「ずべ公番長 夢は夜ひらく」を数年前に見て佳作だった覚えがある。ってことで期待して見ました。
これも、佳作といっていい。
買春禁止法施行の前夜から始まる。遊郭が廃絶されたが、経営者たちは個室浴場にリニューアルして同じことを続けた。いわゆるトルコ風呂ですが、その後トルコ国からクレームがきてソープランドに呼称が変わりました。当然、泡踊りや潜望鏡(のシーンはありませんが)などエロ要素満載で、そこに、化け猫が加わって飽きる間もございません。
極悪非道男にたおやかな女が虐め殺される。憎っくき外道めと女の飼い猫がニャー、死んだ女も猫又と化して蘇る。とジャンルパターンを基底としている。
しかし、この映画は中盤から、殺された女の妹ってのが主線に出てきて展開が全く読めなくなる。飽きさせません。
女が谷ナオミ。男が室田日出男。谷ナオミはロマンポルノ転身前だけど、縛られどつかれるってのが最初から得意やったんですね。
そんで、死んだ彼女の死体は倉庫の壁に塗り込められる。で、猫の怒りが爆発したとき雷鳴轟き壁にヒビが、崩れ落ちた壁の奥から彼女の死体、でその時又もやの雷鳴と閃光、一瞬にして猫又となった彼女がニャギャー。
瞬間、俺の思考は3.5秒ほどフリーズした。猫の要素のかけらもない猫又。ザンバラ白髪に隈取りのようなメイクが安い。しかし、一点の迷いもなく映画は猫又たることを確信しております。脱力感は消えていきました。なんだか歌舞伎のような伝統芸的高みに至ってる気さえしてくる。虚構を見せることへの信念の圧がハンパない。
映画とは嘘を突き通したもんが勝つ。
あらためてそう思わされました。
人非人なゲス男に蹂躙された女の怨みから物語は逸れていき妹が主線に立つかと思うと別の少女へとゲス道一直線が加速する様が図太い。山城旦那の泡踊り指南の脈絡なさも混沌を深めるなか雷鳴轟き壁割れニャーの唖然。演出の押し出しが価値観を転倒させる。(cinemascape)