男の痰壺

映画の感想中心です

映画 2019

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2010年代が終わろうとしている。ミレニアムだなんだと騒いだのがそんなに昔のことと思えないのにあれから20年が過ぎたわけで、歳もとるわけだわいと、のほほんと感慨にふけるより、寧ろ最近では人の一生が有限であることが心にじわじわと浸食してくる。今更に生が終わるってことがそんなに遠くない日に我が身に訪れるってことが肌身に沁みるのだ。

虚しい。虚しすぎる。闇だ。この世は闇なのだーとカーツ大佐よろしくひとりごつ年の瀬なのであった。

 

年央に来阪したKZN氏と飲んだ席で「主戦場」をめぐって意見をやりあいしたのが自己嫌悪をともない尾をひいた年でもあった。総括ということですみませんが思うところを少々記しておこうと思う。

 

日本がこのままでは遠くない未来に劣等国に成り下がるって論は主に海外の投資家中心に折にふれて言われ続けてきたわけで、我々はもっと真剣にこのことを考えないといけないのに桜の会とかマジどーでもいい話にかまけていい気になってるヤトーなる輩に俺は心底うんざりしている。

折しも年末になりNYダウが史上最高値を更新するなか日経平均は未だ40000円まで迫った30年前の半値近辺で低迷している。なぜか?。人口の構造問題とか各種規制が温存される社会システムの問題に本気で取り組まない日本の主権者が海外から見放されているからだ。1800兆の個人金融資産に対して国債発行残高が900兆なんだから半分しか担保に入ってないじゃん。まーだぜんぜん大丈ー夫だあ!ではない。社会保障金利負担が歳出の半分を超えるなか来年度も国家予算が史上最大規模となったが、それって借金で予算を賄ってるわけで、こんなことが続けば担保の残り半分は早晩食い尽くされるだろう。流れはこれから加速する。叩き売られた円と日本国債が大暴落をして一瞬で日本という国家がクラッシュする日はそんなに遠くない。

 

俺の息子たちは、何年も前から日本には見切りをつけているとほざいている。今の若者たちは皮膚感覚で危機を察知しているんじゃなかろうか。太平楽に国会前で反アベを唱えてデモってるのは今の生活になーんも心配してない団塊世代ばかりだ。彼らは劇的な構造改革で自分の生活が変わってほしくないだけ。ほんまアホらしい。

俺はアベシンパでもないし、アベノミクスはろくな成果も出せなかったと思っている。後世でクロダは史上最悪の日銀総裁として名を残すだろう。でも、反アベしか謳えることがない連中ってまんまその合わせ鏡じゃん。そう思うんです。

 

そんななかでも劇場で156本の映画を見た。

以下、自己採点で上位のものを新旧ないまぜで列挙すると。

 

日本映画 ★★★★★

チワワちゃん

さよならくちびる

ウィアーリトルゾンビーズ

ホットギミック ガールミーツボーイ

凪待ち

よこがお

火口のふたり

台風家族

蜜蜂と遠雷

秋津温泉

ひとよ

殺さない彼と死なない彼女

 

日本映画 ★★★★

マスカレード・ホテル めんたいぴりり 悲しみは女だけに キングダム エリカ38 町田くんの世界 海獣の子 旅のおわり世界のはじまり 僕はイエス様が嫌い 青春の蹉跌 天気の子 アルキメデスの大戦 ダンスウィズミー 遠雷 タロウのバカ 宮本から君へ 惡の華 解放区 最初の晩餐 決算!忠臣蔵

 

外国映画 ★★★★★

日の名残り

ヴェラクルス

イタリア式離婚狂想曲

バーニング 劇場版

グリーンブック

ROMA ローマ

幸福なラザロ

12か月の未来図

スケート・キッチン

下り階段をのぼれ

黄金の腕

グランド・ホテル

ロケットマン

アド・アストラ

雷鳴の湾

マリッジ・ストーリー

家族を想うとき

パラサイト 半地下の家族

 

外国映画 ★★★★

氷壁の女 蜘蛛の巣を払う女 ミスター・ガラス サスペリア 君とひととき ジュリアン ファースト・マン 13回の新月のある年に 女王陛下のお気に入り アリータバトル・エンジェル 運び屋 天国でまた会おう THE GUILTYギルティ ザ・バニシング消失 マローボーン家の掟 ハンターキラー潜航せよ イメージの本 ダンボ 深夜の告白 誰もがそれを知っている サイド・ストリート マザー、サン メン・イン・ブラックインターナショナル ピアッシング COLD WARあの歌、2つの心 アマンダと僕 巴里祭 あなたの名前を呼べたなら ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド SHADO影武者 ブラインドスポッティング サンセット物語 荒野の誓い 帰れない二人 ウエスタン 工作黒金星と呼ばれた男 真実 都会の叫び 永遠の門ゴッホの見た未来 嘆きの天使 Tー34レジェンド・オブ・ウォー スター・ウォーズスカイウォーカーの夜明け

 

日本映画で「家族」ってものがあらためて問い直された年だったんじゃなかろうかと思う。「台風家族」「ひとよ」「最初の晩餐」などだが、これらでは、親子の関係以上に兄弟間の絆がピックアップされている。先日も出生数の劇的な減少が衝撃をもたらしたわけだが、産まれた子供たちがやがて産む子供は更に減少するわけで減少のスパイラルがもたらす未来像の暗澹に対しての危惧感が無意識下に顕現したんじゃなかろうかと思うのだ。「ウィアーリトルゾンビーズ」や「タロウのバカ」や「宮本から君へ」といった強烈な攻めを渾身で叩きつけた映画の存在も含めて今の日本映画の作り手の時代認識に俺は少なからぬ希望を感じた。だが、そんななかでも結局のところ昭和感が横溢する「さよならくちびる」に最もしっくりするものを感じる俺って歳だなあと思うのであった。旧作では「秋津温泉」の吉田喜重の不相応に正統なロマンティシズムに枠外から急襲された驚きが図抜けていた。

 

外国映画ではNET配信の映画が席捲した年であった。ガキ向け映画ばかりがラインアップされる既存大手制作会社に対してのスコセッシの苦言は大人の対応とは思えなかったが、それでもこれだけの結果を出されると最早NET配信なんてとそっぽを向くわけにはいかなくなった。「ROMA」はブルジョワ出のキュアロンが貧困層の女性を主役に撮ったことがひっかかるにしても、これほどの中身と手法の幸福な相乗効果を見せられると最早ひれ伏すしかない。年初と年末に見た格差を題材にした2本の韓国映画「バーニング」と「パラサイト」も激しく趣味であって最後まで俺の中で拮抗したがNET配信映画をトップに置かざるを得なかった。旧作ではプラネットで見た「ヴェラクルス」や「黄金の腕」や「雨」といった今更の名作に今更に打たれた年でもあったが、それらを抜いて「イタリア式離婚狂騒曲」の鈍色の輝きが印象に残った。庶民派イメージのジェルミが自分の出自であるブルジョワを描いて「ROMA」と逆ベクトルで対照される逸品だと思う。

 

そんなわけで2019年ベストは

「さよならくちびる」

「ROMA ローマ」