男の痰壺

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女の顔

★★★ 2020年9月21日(月) プラネットスタジオプラス1

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ヒッチコックが舌舐めずりして撮りたそうな題材だと思った。後段にあるロープウェイと馬車による2つの大構えな見せ場はテイストもヒッチコック的だ。

スウェーデン時代のイングリッド・バーグマン主演で撮られた作品のリメイクだそうで、監督のジョージ・キューカーは次の「ガス燈」でバーグマンを主演に迎える。バーグマンはその後、ヒッチコックの数作で主演するわけだから、この3者は何となく親和性がありそう。その円環の外にジョーン・クロフォードはいる。

 

幼い頃に顔に傷を負い、そのせいで悪の道に転がり落ちた女。これが目力の強いクロフォードだと、怪我なんかせんでもそっち方面に行きそうである。だが、引け目ゆえの虚勢をもって精一杯生きてきた女とも見える。そのへんが拮抗するヒロイン像はサークルの枠外から辛うじてセンターの位置に滑りこんでいる。

 

物語は、半ばから幼気な少年殺しにいきなり跳躍する。世のモラリズムを越境してるようだが、この時代、ヒッチコックも「ゆすり」で少年を爆死させている。子どもの命が軽かったことを窺わせるのだ。10人産まれたら2、3人は成人する前に死んでしまう時代であったことを改めて思わせた。

 

ノワール的キャラ仕立てで人物出し入れする前半から、大構えな見せ場が連なる陰謀劇への跳躍。決して悪くないキューカー演出だが余りのヒッチ好みの仕掛けに、そっちで見たかったの思いが拭えない。クロフォードの目力が展開の破綻を繋ぎ止める。(cinemascape)

 

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