男の痰壺

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夏時間

★★★★★ 2021年5月6日(木) シネヌーヴォX

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おじいちゃんの実家に帰っての少女の夏休み。

的な遣り尽くされた感のある少女視線の物語とはかなり違っていて、父親とその妹とおじいちゃんという大人の世界も同等に描かれて、世知辛く生々しいのが骨太。

女房に逃げられた兄と亭主のもとを逃げてきた妹の世界が、少女と弟の世界と隣り合わせで互いに干渉しないままにおじいちゃんの家で並存している。そこにリアリティがあると思います。

 

母親が出ていった理由は語られないが、少女が母親を忌避して、会いに行った弟を激しく詰ることから女同士の直感に触れる何かがあったと思われる。しかし、一方でまだ幼い彼女は母親を求める気持ちもある。そういったアンビバレントな心の揺らぎを自制していた何かが、おじいちゃんの葬儀に現れた母を前に決壊する。

抑制の効いた語り口だから尚沁み入るものがあります。

 

刹那な時間と空間の中で子どもと大人の2つの世界は各々の事情に追われて混わることがないという生なリアリズム。それでも時の流れの中で人が逝き世界は変わっていく。同性嫌悪と母への思慕の狭間で少女は耐えきれず涙するが夏時間が押し流していくだろう。(cinemascape)

 

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