★★★★★ 2021年11月3日(水) テアトル梅田1
アレクサンダー・ロックウェル初見です。
だいたい寡作だし日本での公開作も少ないのだが、本作を見ればもっと公開しやがれ!と思うこと請け合いですな。カサヴェテス次世代のアメリカインディーズの巨塔なんでしょね。
自分の子ども2人に主演させて母親役も自分の女房というパーソナルな作りが好感。
特に目新しい物語ではない。
ダメ親たちがいて、子どもたちがいて、そんなだから必然的に子どもたちは親のもとから逃げだす。と言っても自立もままならない年頃ゆえの束の間の逃避行。
姉弟と知り合った少年が加わった3人は、盗んだ車でぶっ飛ばし、金持ちの別荘に入り込んでやりたい放題。とまあこれもよくあるパターンだ。
この映画が、それでも往々にして観るものの心を射抜いてくるのは、撮り手の彼女彼らに寄せる親愛が16ミリ・モノクロ、全篇手持ちで撮られた画面からヒシヒシと伝わってくることによると思います。
映画内では悲劇や陰惨なことも起こるけど、最後には至福に包まれる。これが、映画の便法ではなく形成された親和世界の必然と思わせるのです。
ダメ親からの逃避とプチ冒険と刹那な悦びと暗転する帰結。そういった物語は有りがちと言えばそうなのだが、16ミリ手持ちカメラの手触りを通して伝わる撮り手と子供たちの信頼と親愛。悲劇を受け入れ到来する至福は形成された親和世界の必然と思わされる。(cinemascape)