男の痰壺

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逃亡者

★★★ 2021年11月14日(日) プラネットプラスワン

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ジョン・フォードの映画見に来たんだよなと戸惑うくらいにカフカ的な不条理展開が繰り広げられる。まあ、不条理というより単に説明不足なのかもしれません。

 

カトリック信仰と酒が禁じられた中米の架空の国で、官憲に追われる神父が悲惨な目に遭う話で、どことなく「沈黙」を思わせる。

前半は物語が停滞し相当な睡魔に襲われる。廃教会でのミサを隠れキリシタン(?)から請われた神父が必要な葡萄酒を探しに町中に行く件があるのだが、もう執拗に加虐的に神父をいたぶる、フォードどうしたんのヨーロピアンテイストだ。まあ、これは原作のグレアム・グリーンのもつ越境観が反映されたもんでしょうが。

 

後半、一旦捕らわれた神父は再び逃亡し、逃避行の途につくのだが、ここでやにわに現れた武器密売人のウォード・ボンドが加担する。アメリカ的なテキトーさとボンドのフォード映画との親和性ゆえに映画は一瞬だが開放されたように感じる。

このシークェンスでのガブリエル・フィゲロアのモノクロ撮影も素晴らしく、先日プラネットでやっていた「真珠」を見れなかったことが今更に悔やまれるのであった。フィゲロアってのはメキシコ時代のブニュエル作品の撮影者です。

 

金太郎飴みたいなフォードのフィルモグラフィの中では異端の作品と思われる。そういう意味での見る価値はあると思われます。

 

葡萄酒調達の挿話に於ける停滞する展開と纏わりつく加虐性がフォード映画異彩の陰鬱さなのだが、唐突にウォード・ボンド加担の磊落が風穴を開ける。グリーンの越境感とフィゲロアの土着神秘などの要素が未整理で倫敦巴里に混在する神の沈黙。(cinemascape)

 

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