男の痰壺

映画の感想中心です

線は、僕を描く

★★★ 2022年10月23日(日) MOVIXあまがさき5

水墨画という俺を含めて大概の人には縁もゆかりもない世界が舞台の話で、それはそれで目新しい。でも競技かるたというニッチな世界を取り上げヒットさせた小泉徳宏監督の柳の下に何とやらの思惑も感じます。それが悪いことではないんやけど。

 

リヴェット「美しき諍い女」のように描くという行為が映画の尺の大半を占めることで何かを浮かび上がらせようとする。とまあ、そこまで突き詰めた何かは当たり前だが本作にはありません。無い物ねだりだと思います。

代わりに謎めいた主人公の過去のトラウマが後半から浮上するのだが、どうにもそれが取ってつけたように感じられるのは作劇の甘さだと思います。もう少し前半でそこに触れるべきだろう。でなければ「シコふんじゃった。」をはじめとする多くの若者の異世界との遭遇話がそうだったように登場人物の私生活や過去は切って捨てるかだ。そのへんのどっちつかずの踏み切りの甘さが純度を低めてると思いました。

 

結局、今回瞠目したのは清原果那ちゃんのめざましい飛躍ぶりだけだった。スケールのでかさを感じました。

 

描くという行為を突き詰めた地平が現れるわけでもないが静謐なトーンは維持さる。しかし、降って湧いたかかの如きトラウマ話は構成的に御座なりで克服の過程が物語を機動させない。水墨画に人生救われた感が不足なのだ。クールな果那ちゃんはドンピシャ。(cinemascape)

 

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