男の痰壺

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アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダル

★★★★ 2018年5月12日(土) 梅田ブルク7シアター6
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なんだか、本当に描くべき多くのことが欠落した映画にも見える。
のだが、演出の押し出しの良さがあって勢いで寄り切られた感じだ。
ワイドサイズのスクリーンにミディアムで正対された対象は一見、自信は揺るがない…風に見える。
音楽も実にキャッチーでMTV風に画面とリズムは同期している。
まるで、バズ・ラーマンの映画みたいだ。
 
アバズレだのなんやかんや言われたトーニャであるが、
そんでもオリンピック代表に選ばれるのだから、そりゃあ血のにじむような努力があったはず。
そんなスポ根的な労苦はまったく描かれない。
或いはしがないウェイレスでしかない母親が金持ちスポーツといわれるスケートで、娘を大成させる。
台詞では、その苦労は語られもするが、切実感をもっては描かれない。
 
この映画の、真のポイントは、トホホなタブロイド3面記事的事件。
それが、華やかな世界を舞台にしたオリンピックとリンクした点。
そういう意味で実にコーエン映画的なモチーフなのだが、映画はそこに力点を置ききれない。
 
軸足が定まらないのである。
 
正道タイプならスポ根的成長譚が、逸脱路線ならタブロイド的事象のカリカチュアが足りなく軸足定まらぬ描き込み不足感が付き纏う。それをケレンとハッタリを効かせた快楽描法で押しまくり欠落を糊塗し演技も「らしい」部分だけで構成。だがそれも又仕方ない。(cinemascape)