男の痰壺

映画の感想中心です

白鍵と黒鍵の間に

★★★ 2023年10月7日(土) MOVIXあまがさき10

見てる間、主人公の過去・現在を錯綜させて描いてるものと思っていたが、同時制・同空間の話なんだそうで、従って過去と現在と思っていた2人は別人なのだとか。しかし、原作者・南博の姓と名を分解して其々「南」と「博」とされた2人は同一人物の過去・現在としても見做される。

何年間かの物語を1晩に集約させるアイデアとして実に冴えて映画的にトリッキーな構成なのだが、惜しいかな先述した通りボンヤリ見てると単なるカットバックに見えてしまう。富永の本分が、そういう映画的ケレンにないんだろうが惜しいと思った。

 

じゃあ、語られる物語がそんなに波瀾万丈かといえばそうでもなく、「ゴッドファーザー愛のテーマ」を巡るドタバタも茶番めいてなんだかなーである。何かになれるという根拠ない自信と何者にもなれなかったという諦めと喪失。そういう肝の部分が言うほど伝わってこない。茶番にかまけてる間があるならそこもうちょっと力入れろよと思った。そういうのは得意な監督な筈なんだけどね。

 

秀でた構成アイデアの筈が叙述トリックへの拘りがなく空転している。何かになれるという根拠ない自信と何者にもなれなかったという諦めと喪失。そういう肝の部分が言うほど伝わってこない。ドタバタにかまけてる間があるならそこもうちょい力入れろよと思う。(cinemascape)

 

kenironkun.hatenablog.com