★★★★ 2023年11月23日(木) プラネットプラスワン
毎回、役を演じるときにその役が入りすぎて日常にも侵食してしまう。それが高じてとうとう殺っちゃいましたって話なんですが、どうなんでしょう。
そういう男だから、「オセロ」を演じる話が来たとき躊躇する。だってあれは、女房が浮気してるとあらぬ疑念に囚われてとうとう殺してしまう話ですから。
舞台で妻の役を演る女性は私生活での元妻で、よく事情を知ってるので怯えて、あわやのところを回避する。餌食になるのは、レストランの女給であり、そのへん「オセロ」との整合性はどうなんという感じだが、とにかくその役を演ったシェリー・ウィンタースが良い。彼女で加点しました。
元よりの変質者ではなく、役が入り込むことで異常を来してくるあたり、「ジキルとハイド」の変奏バージョンとも言えるかもしれない。
ロナルド・コールマンは本作で1947年のアカデミーとゴールデングローブの主演男優賞を獲得してますが、功労賞的側面もあったんじゃないでしょうか。
かなりに無理筋な設定に思えるのだがコクのある演出で引っ張る。素の好漢と役が憑依した魔、光の当たるスターと深夜の裏道を徘徊するショボくれ中年。2つの「二重生活」の後者に於けるシェリー・ウィンタースの冴えない場末感と哀しみが際立っている。(cinemascape)