男の痰壺

映画の感想中心です

FEAST 狂宴

★★★ 2024年3月6日(水) シネリーブル梅田3

【ネタバレです】

 

父と息子が車で前方を走っていたバイクを轢いてしまう。急にUターンしたバイクにも非はあるにしても、乗っていた父と幼い娘は路上に投げ出され血を流している。だが、彼らは救急車も警察も呼ばずに逃げてしまう。えっ?!である。この時点で日本だと人生詰んだと思うのだが、フィリピンではそうではないのか?と初動でひっかかった蟠りが尾を引く。

 

轢かれた父親は病院で死に、加害者側は運転してた息子に代わって父親が自主する。女房が被害者の妻のところへいって示談にしてくれないかと頼むがけんもほろろに追い返される。そりゃそうや。

 

映画はその後、時制をとばして数ヶ月後。被害者の妻はあろうことか加害者の邸宅で働いている。一介の家政婦とかじゃなく色々任されて仕切ってる感じで何だかイキイキしてる。金持ちの加害者一族が貧乏人の被害者に救済の手を差し伸べたってことなんだろうが、夫を亡き者にした憎っくき野郎どもの傘下に下るってことに当然あっただろう妻の葛藤なんかは全く描かれない。

働き手を亡くして寡婦となった妻は子どもたちを抱えて当然金を稼がないといけないわけだから、やむを得ない選択だったかもしれないし、加害者一家にしても基本的には良い人ばっか。にしても端折りすぎでは?でないと見るものは心の基軸の立て方がわからない。

 

最後は仮釈で帰ってきたオヤジを迎えての祝宴。寡婦妻は盛大な料理をこさえて準備を整える。宴が始まり一族は美味い美味いと料理と作った彼女を褒め称える。あなたも座って一緒に食べなさい。いいえ、私は…。とそこで、ウゲー!苦しい!ゲロゲロ、アヒー!と食に盛られた毒で加害者一族は悶絶しながら全員死に絶えた。冷ややかにそれを見つめる彼女。

とまあ、そういう展開には一切なりません。美味しい美味しいで終わります。

 

ブリランテ・メンドーサの「ローサは密告された」を俺は非常に買っていて、彼の新作ということで見ましたが、今回、映画の本筋ではない細部の違和感に戸惑いました。そういう一筋縄ではいかない人の営為を描くのが彼なんでしょうし良いシーンも多いんですがね。

 

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