男の痰壺

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ハウス・オブ・グッチ

★★★ 2022年1月19日(水) 梅田ブルク7シアター2

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とりあえずガガ無双と言っておきます。

親がシチリア島からの移民だそうで、序盤のイタリアシークェンスでの画面への馴染み込みはそういうことかと納得。デ・シーカやジェルミの映画に出てきそうなザ・イタリア女の実存。

取り巻くベテランの役者たちパチーノ、ジェレミー・アイアンズ、ジャレット・レト等の役への的確な把握とアプローチも楽しい。

でも、それだけだった。

 

庶民の女がグッチの御曹司とたまさか知りあい千載一遇のチャンスと猛アプローチ。で御曹司は落とされる。さて玉の輿に乗り名門企業の一員となった彼女は何をしでかすのか。

殆ど何もしません。

実話の映画化だから仕方なかったのかもしれないけど、スターガガ主演での序盤の展開が中盤で放逐されるのは、見える上辺だけ売れ線商品でその下は在庫品ばかりのクリスマスのサンタ靴だ。

 

本来、これは守旧的な同族企業の事業承継と新たな時代のコーポレートガバナンスよる創業者一族の淘汰の話で、そこにガガが関与する余地がないのは当然だった。

 

殺人事件というスキャンダラスな顛末は映画として美味しい筈だが、そこに収斂するようなドラマの構築が不足で付け焼き刃感が如何ともし難いのです。

 

老舗企業の創業者一族が瓦解していくドラマと成り上がり嫁の覇権争奪に因果関係がなく空中分解する。ガガの腰の据わったシチリア血流がパチーノの腹芸と相乗する前半が見ものなだけに勿体ない。終盤は取ってつけた感が横溢して観客は置いていかれる。(cinemascape)

 

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