男の痰壺

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七つの会議

★★★ 2019年2月5日(火) 大阪ステーションシティシネマ
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野村萬斎の能の形式がどうしたってにじみ出る時代がかった大芝居に期待するものがあった。
俺は「柳生一族の陰謀」って映画での萬屋錦之助大芝居が好きで、まわりの役者の日常的な芝居とまったく噛み合わないフリクションに笑いをかみ殺す者で、監督の深作が頼むから普通に演ってくれと頼み込んでも頑としてその芝居をやめなっかったという逸話も大好きなのだ。
であるから、香川照之お得意のハイボルテージ顔技とのガチンコに大きく期待したのである。
 
【以下ネタバレです】
 
ところが、その2人が同じ側にいるのではガチンコは成立しないではないか。
相手側が鹿賀丈史とか北大路欣也とか橋爪功とかじゃ悪いが2人の異形に拮抗できないのだ。
 
土台、昨年の「空飛ぶタイヤ」が小が大を喰う物語であったのに対して、今作は企業内での対立に閉じてしまっているのがつまらない。
しかも、前述の2人は若いころからの超優秀社員だったという設定なので、われわれ凡庸な一般観客からすれば、勝手にやってくれのどっちらけにならざるを得ないのだ。
決定的なのは、主人公がモーレツ社員やーめたっていう動機が映画本流の企業内隠蔽とリンクしていない点であって、老人に高価なバスユニット売りつけて自殺に追い込んだってのでは、なんじゃそれはってなもんである。
 
賑々しく多くの役者が出てるが使い捨てに等しい人も多い。
土屋太鳳なんて使う必要ないやんか。
 
萬斎と香川の大時代ガチ顔面技対決が対立軸を逸れて雲散する配役ミスはともかく、所詮は本質トップセールスによる社内改革と五十歩百歩なので凡庸な庶民は出る幕ないという話である。隠蔽と主人公の過剰セールスの帰結が全くリンクしてないのも瑕疵。(cinemascape)