男の痰壺

映画の感想中心です

おもひでのしずく (2004年3月9日)

※おもひでのしずく:以前書いたYahoo日記の再掲載です。

 

スケープゴート

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「お父さん…あたし、もう、疲れちゃった…」
「うん…」
「…」
「…」
「なんで、こんなことになったのかしら」
「…」
「何か悪いことしたの?私たち」
「うん…軽く考えすぎてたんだよ…俺が」
「…」
「でも、まさかこんなことになっちまうなんてな…」
「…」

「何考えてる?」
「えっ…うん、昔のこと。楽しかったよね、あの頃は…最初は…2人だけだった」
「なけなしの金はたいてよ、朝から晩までよく働いたよな、苦労かけたよ」
「ううん、苦労なんて全然思わなかったよ…ありがとう…お父さん」
「こっちこそ…ありがとう母さん」
「…」
「あの世で会おうな」
「うん」

少し前の「雪印乳業の社長発言」にせよ、最近の「古賀代議士の学歴詐称」にせよ、くだらない瑣末な小事を面白おかしく論うマスコミ程醜いものはない。
弱みを見せたら最後、傷口に寄って集って貪り食う蛆虫みたいだ。
損をしたくない一心で鶏を出荷した男が死に追いやられた一方で、発症=死の病に罹患する可能性のある血液製剤を人の肌に針を刺して流し込んだ老人はボケたということで無罪放免らしい。

現代の法制度の矛盾に馴らされ諦めて生きる大多数の鬱憤を、追い詰められた弱者は一身に引き受けさせられるとしたら
それをスケープゴートと言わずして何と言うのだろうか…。