★★★ 2023年6月28日(水) シネリーブル梅田3
80歳手前のポール・シュレイダーが同年代の盟友スコセッシの協力を得て戦争後遺症のギャンブラーを描く。唆らないでもないが、まあ、2人ともお歳ですから、そんなにエッジの効いたもん期待してなかったし、実際なんだかどんよりした停滞感が横溢している。それを、ボケたと見るか味と見るかは岐れるだろうが、俺は一応は枯淡の味と見たい。
であるが、このお話の捻りの無さというか、裏表の無さはやっぱどうしちゃったのか思います。余りにまとも過ぎて物足りない。
ジャンルの定石であるギャンブル勝負のタイマン相手がいない。それを描くのが目的じゃないとしても、ある程度のポーカーシーンは触れずに通れないもんだと思うんです。USA連呼野郎が目新しいキャラだっただけに勿体ないと思いました。
ヒロインのコメディアン出身というティファニー・ハディッシュも一筋縄でいかない常道の裏をいく存在感を醸して絶品。でも、主人公との心情的交流が薄過ぎてもったいないです。
歳とると執着心ってもんが薄まっていくんです。申し訳ないけど焼きが回ったというしかない。
枝葉を削ぎ落としていったら何の変哲もない戦争後遺症と復讐譚が姿を見せてきたというだけで、嘗ての豊穣なエピソード群の紡ぎ合わせから真実を掬い上げた力業はない。USA連呼野郎とのコクあるタイマンやハディッシュとの更なるゆらめきが見たかった。(cinemascape)