男の痰壺

映画の感想中心です

曠野

★★★ 1981年2月8日(日) SABホール

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荒涼とした辺境から町への長い道行きが少年の成長過程に於ける通過儀礼となるというのは決して目新しいテーマでもないのだが、とにかくステップの描写が自然主義的に素晴らしい。それだけに、文学的アプローチの幻想シーンはうるさく言わずもがなに思える。(cinemascape)

 

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ダンシング・レディ

★★★ 2020年3月22日(日) プラネットスタジオプラス1

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映画史的には、アステアの銀幕初出作品って以外にこれといったトピックもない代物だと思う。

で、そのアステアに大して興味もないし、そもそも俺は50年代のMGMミュージカルが大好きってわけでもないんです。

 

まあ、最近見た「雨」のジョーン・クロフォードと「紅塵」のクラーク・ゲーブルが共に絶品だったので見たようなもんです。

その点では満足しました。特にクロフォードの老け顔にお目目ぱちくりのオーラは相変わらず頭抜けております。

でも、彼女が新人から抜擢されてミュージカルの主演するって設定は無理がありますなぁ。

だって踊り下手ですやん。重くってドタドタしてる。アステアはさすが軽やかですから彼女の重さが際立つ。そこを目力でカバーしようったって限度があります。

 

3角関係の映画でもあるのだが、その点でも、クロフォードの心の揺らめきは合点がいかない。揺らめく必然がないんです。ゲーブル1点張りでええやんて思えちゃいます。

そういう意味では、前半が楽しい映画ではありました。

 

クロフォードのドタ踊りがゲーブルのお眼鏡に適い主役に大抜擢って段階で破綻しているのだが、2人の半端ないオーラが有耶無耶にする。が、彼女がトーンによろめく3角関係はこうも3者の感情の表出に無頓着ではさすがに無理。促成感が否めない。(cinemascape)

 

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おもひでのしずく(2003年6月8日)

※おもひでのしずく:以前書いたYahoo日記の再掲載です。

武豊

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つまらん!
武豊って野郎は
ほっんとうにつまらん!

…って別に武豊に何の怨みもございません。
あんたの乗った馬が2着に来なくたって、俺の張った金は戻っては来なかったのです。だから、恨み辛みを言う筋合いはございません。
ただ、忘れた頃にやって来た、あなたの意地に、ふと忘れかけた苦い想い出を思い出したのでございます。

A Long Long Time A Go…
関西のとある競馬場でまことしやかに流布された1つの伝説。
1人の馬鹿ミーハーOLが土日の度に競馬場に通い詰め、「ユタカ~!ユタカ~!」と馬鹿のひとつ覚えに、あなたの乗る馬に金を張り続けたそうにございます。
彼女は、週が明けると「競馬ブック」や「Galop」という雑誌を買って次のレースを精緻に分析し続け、金曜の晩には「競馬四季報」を片手に徹夜で翌日の全レースを検討し、土曜ともなると始発電車で競馬場に向かい茶店でモーニングを食べながら又も新馬戦を検討し直し、200円の自由席入場券を並んで買い、お気に入りの席を確保し、やって来た顔なじみと蘊蓄をたれ合い牽制し合い、パドックと観覧席を脱兎の如くに行き交い、馬が糞すれば「根性すわっとる」と自信を持ち、小便すれば「ビビッとる」と自信を無くし、馬体重とオッズを見て悩みぬき、なけなしの金を祈るが如き思いで券売機に投入し、結果メインが始まる前にはオケラになって侘びしき帰路についたであろう、大方の競馬ファンの蔑視と突き刺さる視線なぞは多分、金輪際感じることは無かったことでしょう。

結果、彼女はマンションを購入したとのことでした。

教訓Ⅰ:メインストリームに逆らってはいけないし、忘れてはならない。
6月8日。安田記念

愛、 アムール

★★★★ 2013年3月15日(金) シネリーブル梅田1

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捻りも無い老老介護映画とも思えるのだが、それでも、感情を抑制し事の進行を淡々と凝視する精緻さには引き込まれる。鳩とトランティニャンの引き芝居の長廻しこそハネケの真骨頂。過酷な帰結のあとの黄泉への誘いの陶然。随分優しくなったもんだ。(cinemascape)

 

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ウエスト・サイド物語

★★★★★ 1975年11月30日(日) ニューOS劇場

             1976年1月18日(日) ビック映劇

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原作でテイボルトやマキューシオが担う役割を集団に置き換え前面に出し、不良グループ同士のみならず不良と警官、男と女など多様な対立の劇的緊張の連続をモダンバレエで描いてド迫力。加えて映画史を正味塗り替えたワイズのテクニカル編集は極み。(cinemascape)

 

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レ・ミゼラブル

★★★★ 2020年3月22日(日) シネリーブル梅田2

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暴走する悪ガキどもを描いて「シティ・オブ・ゴッド」が惹句で準えられるが、実弾やナイフが使われ人も死ぬあれに比べて、投石や花火攻撃なのが、まあぬるい気もするが、いや待てこれがリアリズムちゃうんかと思ったりもする。

 

むしろ俺はデンゼル・ワシントンの「トレーニングデイ」を見ながら思い浮かべた。ワルに対峙するに、警官もまみれにゃあであって、治安の悪いエリアをパトロールする彼らもお真面目ではなめられるぜってなもんです。

でも、主人公の新任警官は、そんな先輩諸氏に倣わない。これが、言うのは易いが中々出来ることじゃないんです。

 

真摯に相手の言い分を聞く。誠意をもって間違ったことなら正そうとする。

そういったことが悪の吹き溜まりのような場所でも通用するんじゃないかと映画は言ってるような気がする。

 

それでも、一旦破綻に向けて動き出したストリームは、ちょっとやそっとでは変わらない。

少年は思い止まるか、トリガーを引いてしまうのか。わかりませんが、相対で通用した誠意も大きな流れには木っ端微塵に飲み込まれる。

これもまた紛れもないな真実なんです。

 

モラルが破綻したかの如き状況下に於いても真摯で誠実な言説は人の心を動かし得るという希望と、それでもマスに蔓延する怒りが一旦着火してしまうと反動の奔流に個の力は最早なす術はないのだという諦観。優れて政治的ロジックが仏のひとつの現況を抉り出す。(cinemascape)

 

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おもひでのしずく (2003年5月24日)

※おもひでのしずく:以前書いたYahoo日記の再掲載です。

無惨

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ジャンボ宝くじで3億円が当たった。税引き後の残りが2億4000万。ローンの返済に2000万を回し、親たちに「今まで迷惑かけたな…ふっ、これで老後つつがなく仲良く暮らすんだぜ」と各1000万ずつ渡した。女房に1億渡し「ちょっくら旅に出らあ。しばらく、これでしのいでおくんなせえ」と言って家を出て、実は旅になんか出なくて市内でマンションを借りた。会社では「いつまでもこんなことやってたって先が見えてまさあ、男一匹最後の勝負に打って出させておくんなせえ」と言って辞めた。平日の昼は映画を見るかパチンコをして過ごし夜は昔のポン友を呼び出して新地で遊びまくる。で、週末は競馬場に入り浸るか地方開催に出かけて、ひなびた温泉宿に逗留し小説家を気取る。何故か勝ちまくり手元資金は何倍にも膨れた。お金の回しどころに困って株と不動産に投資した。不景気の波は底を打ち、20年の下げ相場が反転、又もや資金は何倍にも膨れ上がった。そこで、ふと思うだろう。「生きてるって素晴らしいことだったのねんのねんのねん」

こんな夢を見た…。
土曜の早朝。スカスカの電車の中で。