男の痰壺

映画の感想中心です

少女ムシェット

★★★★★ 2020年11月17日(火) テアトル梅田1

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ブレッソンをそんなに見てるわけではないが、これは今まで見た中でベストであるし、今年見た旧作の中でも最上位に置くだろう。

 

貧乏で悲惨ということを映画はけっこう好んで取り上げる。そして、この主人公の少女を取り巻く状況も貧乏で悲惨なのだが、この映画の傑出してるのは、徹底的な不寛容に行き着いてしまっているところで、彼女の外界に対する価値基準は憐憫や理解を拒絶するのだ。

だから、映画は通常の感情の行き来で形成されるドラマトゥルギーとは無縁の孤高に立っている。純粋に行為のみが映画を起動させる。

 

この映画では行動は往々にして反復される。

パブのカウンターでワインを飲む。

同級生に泥塊を投げつける。

電動カートでぶつかり合う。

 

ムシェットは何度か大粒の涙をポロポロ流すが、そのとき表情は無である。悲しいとか悔しいとかの表層の感情が極まり涙を流すのではない。もっと根っこの部分がダイレクトに反応してるみたい。

 

人の営為は、ほとんどが後付けで解読され修飾されていく。我々の生活はそういった欺瞞に満ちている。ブレッソンは、そういう欺瞞を剥ぎ取ったあとに残るものを呈示する。

だから、終局もあっけないほど唐突に訪れるし、水面の波紋は瞬く間に消え去るのだ。

 

不寛容に行き着いた感情は他者の言葉を受け容れないので一方通行で断ち切られる。逆に行為は映画的運動として執拗に繰り返される。遮断と反復が交互にやってきて後付け解釈の欺瞞を排除した純粋映画が完成される。だから、水面の波紋も瞬く間に消え去るのだ。(cinemascape)

 

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おもひでのしずく (2012年5月26日 (土))

※おもひでのしずく:以前書いたYahoo日記の再掲載です。

 

金環蝕と便

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※注 便に関する話だから、食事中の方は読まないで下さい。

俺は便通が良い。
朝起きて、食事をする前に出るし、場合によっては食後にも、もう1回出る。そのあと、仕事先に行っても出ることもある。
便通があれば、爽快だし、きっちり出ると達成感も感じる。
例えば、女房などが何日も出ていないなんて話を聞くと、あり得なく思い、その想像し得る不快に眩暈さえ覚える。

だが、最近気づいたのだ。
便通が良い=肛門が緩い
であることに。
ある朝、勤務先で便意を感じ、俺は一種の心地良い緊張と余裕で、その便意が更に切迫するのを待っていた。
ギリギリまで待ってトイレに行く方が出るときの爽快度が飛躍的に高まるからなのだし、毎度そうしてるわけだから、そのタイミング的頃合も、俺は熟知している筈なのだった。
が、いざ限界ちょい前でトイレに行った俺は、ズボンを下ろす途中で、あっけなくパンツの中にお漏らししてしまったのだ。
「えっ…」と思った。
一瞬何が俺に起こったのか理解できなかった。
俺の瞳は夢遊病者のように目の前の壁とパンツの中の物体とを往還する。
やがて、事態を理解した俺は、おそるおそるズボンとパンツを脱ぎ、そのホカホカしたものをこぼれないように注意しながら包み込みトイレットペーパーでぐるぐる巻きにした。
ノーパン状態でズボンをはき事務所に戻り、ペーパー巻き物体を更にビニール袋とかで何重にも包み、俺はコンビにに行ってそれをポイしてニューパンツを買った。

先月、脳梗塞以降に経過診療で通ってる医者に、このまま体重が減らないのなら薬を増やすぞと脅され、絶対に痩せますと言って帰って以降、1年365日まず酒を飲まない日がない日常を改めると宣言し、実際に週2,3日は飲まないようにしてみたら、異変が生じた。
便通がものすごく悪くなってしまったのだ。
硬度が高まりコロコロ状態で、しかも出切った感がない。

便通がいいと、心密かに喜んでいた俺だが、要は酒浸り生活の結果だったのである。
その後、体重も全然減らないし、女房から不機嫌な面されて辛気臭いから飲んでくれと懇願され、また毎日飲むようになってしまった。
そして、便通も戻ってきた。

先日、金環日蝕の朝、空を見上げながら句をひねった。

翳り行く日々の移ろい我が人生
オムツをする日も遠からじかな。

メカニック

★★★ 2011年12月23日(金) トビタシネマ

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性急にマニュアル的過ぎ心に何も留まらず過ぎていく展開の味気無さ。相変わらずベン・フォスターは一見いかがわしいが実は腰が据わったキャラで十全だっただけにステイサムの孤高に成りきれない温さが惜しまれる。ウーとかトー的情緒の欠落。(cinemascape)

 

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日本春歌考

★★★ 1983年12月17日(日)  伊丹ローズ劇場

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春歌は切欠に過ぎず展開されるのは世代間のイデオロギーの相克。討つ側の先鋭であった大島が伊丹に代弁させた討たれる側に立つというジレンマは未解決のままアナーキズムにすり替えられる。建国記念デモという時事的なモチーフを得ただけに勿体ない。(cinemascape)

 

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そんなアホな 幼年期の終わり2

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何がって、飲み屋で食う飲むときのみ瞬間的にマスク外して、食って飲んだら即マスクつけなさいって話で、そんなん無理っしょ。

だって、そういうときって、飲む食う話す笑う泣く管巻く喚くが不可分に混然となってるもんだから。

いやいや、だからそれを分離しなさいって話なんでしょうが、人類が数万年にわたって体と脳に染み込ませた食いながら喋るの習慣を変えることは並大抵じゃござんせん。

唐揚げだの天麩羅だの焼肉だのお好み焼きだの焼そばだの食いながら、マスク付けて外し繰り返してるうち、口の周りについた油やソースやタレがマスクに付着してベトベトになりそうなのも目に見えております。あー考えるだに気持ち悪いっす。

 

所詮は御用学者や小役人の考えそうなお為ごかしじゃあありませんか。

俺ならドーンとやるね。ピンチはチャンスなのよ。えっ何するか聞きたいってか?

 

俺が為政者なら、今後、飲食店での会話は一切禁止します。守らない奴は罰金10万円。

えっ、しょーもないって?

まあ、聞きなさい、話はこれからや。あのな、例えばおっさん4人で居酒屋行って、テーブルに向かい合って座るわな。で、会社の同僚やったら愚痴のひとつも聞いてほしい、でもお互い顔見合わせてジーッと座ってるだけなわけやん。そんなん続いてるとそのうちにな、おっさんAのこの愚痴きいてくれーって思念とおっさんBのこいつ何訴えたいんやーって思念の波長が同期して意思が伝わってしまうねん。テレパスの誕生やな。嘘や思うやろ、でもな毎日毎日、何万人という人が黙って2時間向き合って互いの顔見つめ合うねん。これが何ヶ月も続くわけや、絶対そういう潜在能力が目覚める奴でてくるわ。これは新たな人類のステージに向けた壮大な実験やねん。

 

えっ、聞いて損したって、フッフッフッ、せいぜいバカにしとれや、俺が目覚めたあかつきには、お前ら旧人類はニュータイプの下部として生きるしかないんじゃー!アホンダラ。

おもひでのしずく (2012年4月16日 (月))

※おもひでのしずく:以前書いたYahoo日記の再掲載です。

 

マインドコントロール

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何ヶ月か前のことだが、マインドコントロールという言葉が世間を賑わせた頃、俺は会社の女の子と、そのことをネタに話していた。

「そう言えば、こないだ、ネットの映画サイトで知り合った人らと飲んだんやんか」
「うん」
「野郎ばっか4人で飲んでんけど、1人だけ初めて飲んだ人がおってん」
「うん」
「若い男の子やってんけど、その人にな、飲みだして大分たったころ、俺聞いてん…今年見た映画で何が1番やった?って」
「うん」
「そしたらな、しばし考え込んで、こう言ってん。『歪み』かな、って…俺、考え込んでもうてな…俺の知らん韓国映画か何かかなって」
「…」
「で、俺の向いの人が、こう言わはってんやんか…『あなたもあれ評価してはったよね』って」
「…」
「えっ?ってなもんでさ…そしたら、横に座ってた人がこう言ってん…『俺、園子温ってダメなんですよ』って」
「…」
「それって、もしかして『ヒミズ』のことかって思ってんけど、皆が皆『ヒズミ』って言ってるもんやから、俺言い出せなくてさ、『あーヒズミ!あれ俺も好き』とか言ってさ、で、心の中で『もしかして、俺ずーっと間違えてた?』とか思ってしまってんやんか」
「…」
「で、帰ってから確認したら、やっぱ『ヒミズ』やってん」
「…」
「これって一種のマインドコントロール…に近い?…かなって」
「知らんわ」

 

マスコミは、どうでもいいオセロ中島のことは、いっとき狂騒的に報道したが、もう1人のマインドコントロールされてるおっさんのことは言わない。
これさえやれれば、辞めてもいいとかぬかしてる現総理大臣のことだ。
俺は消費税を上げることが良いとか悪いとか言うつもりはない。
むしろ、進退をかけるほど大層なことではないことに気づかないバカさにうんざりする。
そんなもん、上げても上げなくても、日本は何も変わらない。
ここ20年でやってきた政策の焼き直しで直せるほど病巣は甘くはないのだ。

アジョシ

★★★ 2011年12月10日(土) 新世界国際劇場

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主人公と少女の関係が表面上ベタついていないのが救いなのだが、結局、心根ではメロウな野郎であることが嘘臭い。ゲスな兄弟とその配下の超プロなタイ人傭兵という敵キャラ配置も最早見飽きた感がある。警察の介入も半端。常に止めを刺す殺陣が若干新鮮。(cinemascape)

 

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