男の痰壺

映画の感想中心です

映画 2014

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正月明けに見たアンゲロプロスの旧作「エレニの旅」で打ちのめされ、ドン詰まりの我が運命を何とかする縁もなく、エレニのように運命に流され茫漠の終末日本で朽ち果てるかと思われた1年。
辛うじて生きてはいるが、もはや、労苦に苛まれた肉体は各所から変異を呈し始めている。眠っていた歯周病・結膜炎・各部位の発疹が猛威を振い始め一晩で10数回の下痢の見舞われ俺は縋りつくように医者に問うた。
ノロでっしゃろ。入院でっか」
「まあ、何らかのウィルス性の腸炎かもしれん」
ノロ…」
ノロかどうかなんてわからんがな。とりあえずビオフェルミンン出しとくわ」
死なん程度の病気で入院したい願望は潰えたのである。
 
それでも結局、映画館で143本も観ている。
昔は映画館にばっかりおって、こんなんでいいんか?と自問していたのが、歳食ってそーんなのどーでもよくなっちまったってことかも知れん。
年末に、シネスケのある女性コメテからご結婚される旨の連絡をいただいたが、彼女曰く「ネットとか映画とかから離れて全てがうまくいくようになった」
そういえば何年か前に別の女性コメテが仰ってたことも思い出される。「映画を一生懸命観たけどなーんにもいいことが起きなかった」
そう言う彼女たちは健全だと思うが、一方で今年も142本映画館で見てる俺は思うのだ。
「確かに映画を観てなーんにも変わるはずないが、映画を観てなかったら俺、とーっくに自己瓦解してまっさ、ほんまでっせ」
 
Cinemascapeにての採点上位を列挙すると
 
日本映画★★★★★
舟を編む」「ほとりの朔子」「そこのみにて光輝く」「ぼくたちの家族」「捨てがたき人々」「昭和おんな博徒」「喰女 クイメ」「FORMA フォルマ」「清水港の名物男 遠州森の石松
日本映画★★★★
「麦子さんと」「ジャッジ!」「愛の渦」「銀の匙 Silver Spoon」「白ゆき姫殺人事件」「クローズ EXPLODE」「悪夢ちゃん The夢ovie」「トラック野郎 望郷一番星」「緋牡丹博徒 鉄火場烈伝」「WOOD JOB! 神去なあなあ日常」「私の男」「渇き。」「TOKYO TRIBE」「日本の首領 野望篇」「人生劇場 続飛車角」「舞妓はレディ」「昭和残侠伝 吼えろ唐獅子」「神の月」「日々ロック」「福福荘の福ちゃん」「バンクーバーの朝日」
外国映画★★★★★ 
「エレニの旅」「ウルフ・オブ・ウォールストリート」「新しき世界」「家族の灯り」「パラダイス:神」「アデル ブルーは熱い色」「ある過去の行方」「ブルージャスミン」「罪の手ざわり」「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」「GODZIILLA ゴジラ」「ソニはご機嫌ななめ」「天才スピヴェット」「ゴーン・ガール
外国映画★★★★
「エンダーのゲーム」「シテール島への船出」「オンリー・ゴッド」「泥棒成金」「エージェント・マロリー」「スノーピアサー」「アメリカン・ハッスル」「それでも夜は明ける」「ラム・ダイアリー」「パラダイス:愛」「マラヴィータ」「クーリエ 過去を運ぶ男」「ラヴレース」「グランンド・ブダペスト・ホテル」「ウォーロード 男たちの誓い」「さよならをもう一度」「オール・ユー・ニード・イズ・キル」「リアリティのダンス」「8月の家族たち」「イーダ」「ヘウォンの恋愛日記」「フライトゲーム」「悪童日記」「ファーナス 訣別の朝」「ザ・シークレット・サービス」「イコライザー」「レッド・ファミリー」「インターステラー」「ジゴロ・イン・ニューヨーク」
 
日本映画
正直、不作だったと思うし、年末の健さん、文太の逝去が時代の終焉を示唆して物哀しいのだが、彼らの旧作を新世界東映で偶然観ていたのが何かを示現していたのかと思う…はずもなかろうが、それでも「残侠伝」「トラック野郎」のシリーズ中でも上位と思われる好篇に出会えた喜びを噛み締めつつ、しかし、この映画館での更なる僥倖は加藤泰、マキノのフィルモグラフィの中で殆ど言及されない(寡聞にして読んだことないだけかもしれぬが)2本の傑作に出会えたことで(「昭和おんな博徒」「清水港の名物男 遠州森の石松」)、正直この2本の前では新作の日本映画は到底太刀打ちできない。
新鋭・坂本の「FORMA」の妥協ない透徹された世界の構築や、まだ抽斗あるんかいなと驚かされた三池の「喰女」や、 千鶴10年目の再ブレイクを心から祝した「そこのみにて光輝く」などに心惹かれつつ、それでも「ほとりの朔子」を押す。なんと言うか、この映画、一見ロメールもどき・相米もどき的体裁をとりつつ軟体動物的に底が見えない感じで余力を残しまくってる気がするし、3・11への言及が浮ついてないし、無理ばっかりしてる感がある二階堂ふみも身の丈に合った役だったと思うからだ。
 
外国映画
アメリカが国力を衰退させた反動で皮肉にもその映画は久々に開花した。映画とはそんなもんである。スコセッシ、アレン、コーエン兄弟フィンチャーといった30年以上にわたり中軸を担ってきた作家達が自身のフィルモグラフィの5指に入ると思われる良作を揃って出してきた。正直、壮観だった。
しかし、やっぱりどっかこなれ過ぎてて、歯触り良すぎるのだよーん。ハリウッドってのは。
その点、オーストリアから出てきたザイドゥルのパラダイス3部作は剥き身の毒とユーモアががっつりと末梢神経を逆なでするのだ。最も趣味な「神」をベストとする所以である。
 
そんなわけで
2015年マイベスト映画は
「ほとりの朔子」
「パラダイス:神」