優しいおとな(桐野夏生)
会長はなぜ自殺したか 金融腐敗=呪縛の検証 (読売新聞社会部 )
書を捨てよ、町へ出よう(寺山修司 )
深海のYrr(フランク・シュッツィング)
歌うクジラ(村上龍)
ダ・ヴィンンチ・コード(ダン・ブラウン)
ジェノサイド(高野和明)
空 中庭園(角田光代 )
悪魔のパス天 使のゴール (村上龍)
日本の聖域( 「選択」編集部 )
オレンジの壺(宮本輝)
平成猿蟹合戦図(吉田修一)
「松本」の「遺書」(松本人志)
リング(鈴木光司)
気まずい二人(三谷幸喜)
コンセント(田口ランディ)
女たちはニ度遊ぶ(吉田修一)
55歳からのハローライフ(村上龍 )
最近読んだ本だが、最近といってもどれくらいの期間に読んだのかは定かではない。
金がないので、もっぱら古本屋の100円コーナーにある文庫を買い求めているのだが、そういう読み方は逆説的に視野を広げる。
谷崎の「細雪」も、今あえてこれを読むきっかけなんて皆無だったのだが、上中下の3分冊300円で踏ん切りがついた。
正直、良いのはわかってたが、3分冊が100分冊でも永遠に読み続けていたい世界とでも言おうか、読み終わってこの世界と別れるのが辛く感じた。
「細雪」の中で次女幸子が夫貞之助と奈良旅行をする件があるのだが、その中で、概ね肯定的見解で彩られたこの本には珍しく、奈良ホテルが南京虫がいるとこきおろされる。恐らく谷崎は相当嫌な思いをしたことがあるのだろう。
30年前、社会人なりたての俺は入社した会社で奈良支店に配属された。
ひたすら新規開拓の飛び込み訪問を命じられ、住宅地図を全件つぶせだの、名刺1日50枚集めろだのを真面目にやっていたのだが、そうは言っても疲れ果て汗みずくでスーツはぐちょぐちょ、奈良公園でベンチで鹿を眺めながら涼んでいたが、思い立って市街地から更にはなれてドライブウェイを歩きだした。何かプチ逃避みたいな感じだったと思う。
そして、しばらくして奈良ホテルが見えてきた。
だめもとと思いそこに入っていって支配人に面会を頼むと、簡単に出てきてくれて一応話を聞いてくれる。
「まあ、今はそれは検討できないね」
「そうですか」
「…」
「わかりました」
「…」
「…」
「時間ある?」
「えっ」
「せっかく来たんやから、ちょっと見て行きなさい」
「はあ…」
支配人について館内を案内してもらいつつ行きついた部屋。
「ここです」
「…」
「天皇陛下がお泊りになる部屋です」
「えっ」
若草山の山焼きが正面から眺望できる景観は素晴らしかったが、予想外にこじんまりした部屋だったのを記憶している。
あの支配人は飛び込みセールスでアポもなく来た若造になぜそんな酔狂なことをしたのだろう。よほど暇だったのか…。
白昼夢のような思い出だ。