男の痰壺

映画の感想中心です

夜の浜辺でひとり

★★★ 2018年6月22日(土) シネリーブル梅田4
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女性の主人公と振り回される周囲を描いている。
そういう意味でホン・サンス系譜上では「ソニはご機嫌ななめ」の変奏バージョンに見える。
酒を酌み交わしのグダしゃべりがシネマ・ヴェリテ風の逸脱と自走を始めるあたりいつものことで、本作でも最大のみどころはそこである。
ハンブルグで1回とカンヌンで2回、それはある。
 
ただ、今までのホン・サンス映画のそれらとはどうも違った感じを受けるのはキム・ミニの異物感。
うまく言えないが、世界と親和してないように感じる。
見ていて、それらが心地よくないのである。
 
もちろん、これは、自我が暴走して壊れていく女の話なのだから、それでいいとも言える。
のだが、それだとテーマとして、映画の世界では再三にわたり描かれてきたテーゼなのだ。
ベルイマン、アントニオーニ、カサヴェテス…と切りがないくらいのヒリヒリした名作が渦巻く。
 
そういうジャンルにホン・サンスがキム・ミニを得て挑もうとしたのだろう。
今後を見守りたい。
 
呑みのグダ話連鎖で曲りなりにも親和した世界を形成してきたホン・サンスの系譜はキム・ミニの削げのような異物感に撹乱される。自我が暴走して自壊する女の話だからそれで良いのかもしれないが、どうにも統御できてない感が横溢し気持ちよくない。(cinemascape)