男の痰壺

映画の感想中心です

2018-01-01から1ヶ月間の記事一覧

雪の轍

★★★★★ 2015年7月11日(土) シネリーブル梅田3 ベルイマン・カサヴェテスクラスの深層心理の表出により切り裂かれる魂の痛みは、インテリゲンチャ崩れな高等遊民の防御壁をやがて徐々にだが融解する。ニヒリスティックな世界観だが、それでも融和と希望を託…

修羅雪姫 怨み恋歌

★★★ 1980年12月23日(火) 新世界座 内容的に1作目と比して何が違うわけでもないが、鈴木達夫のカメラが素晴らしい美術と相まって寺山的猥雑さを醸し出し、役者のコラボも一線級の面構えを揃えて「男騒ぎ」な華々しき重厚。正直この映画には勿体ない位。(cinem…

花筐 HANAGATAMI

★★★★ 2018年1月30日(火) 大阪ステーションシティシネマ3 本卦還りとでも言おうか…最初期の「HOUSE」や「ねらわれた学園」のテイストで驚いた。 大林宣彦は前述2作や尾道3部作など、ほぼ同時代で見ていたが、たぶん「水の旅人」あたりを最後にずっ…

オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分

★★★★★ 2015年7月11日(土) シネリーブル梅田1 愛する妻子をどん底に落とし責任を負った仕事を放っぽらかしても男には断腸の思いで果たさねばならぬ信義則がある。リミッターが振り切れそうな真夜中の疾走と孤独が皮膚感覚で迫る濃厚な86分。アウトバーン…

理由なき反抗

★★★ 1979年4月6日(金) ビック映劇 反抗とか言っても大人は判ってくれない的スネ坊世界の戯れ言なので真面に観れば退くし、ディーンの演技が路線に忠実に走行するのも少し鼻につく。ましてやレイの作家性なんぞあるのかどうか知らないので今更どうしようもな…

アトラクション 制圧

★★★ 2018年1月20日(土) 新世界国際劇場 エンドクレジットを見るとCG関係のスタッフロールがめっちゃ多い。 確かにハリウッド映画並にクオリティは高いと思う。 演出もかなりに骨太。 監督はセルゲイ・ボンタルチュクの息子らしいですなあ…力あると思いま…

ラブ&ピース

★★★ 2015年7月10日(金) TOHOシネマズ梅田6 どうにも手垢ついた骨子では仕方なく寄木のように捨てた者・物への想いを配してみたが上手くない。一途に謳いあげることへの照れは被虐志向で粉飾。一生懸命歌い上げた自身の作詞作曲が「スローバラード」1曲で…

結婚しない女

★★★★ 1979年1月28日(日) 伊丹グリーン劇場 1980年9月11日(木) 梅田ロキシー 未だ離婚が一般化する以前に於いて尚その衝撃を徒に煽情的に描かぬスタンスを早朝のマンハッタンのシーンに代表される空気の透明感が支える。人生の難事を切り抜ける処し方は女性の…

ルージュの手紙

★★★★ 2018年1月26日(金) シネリーブル梅田1 まず、主人公の助産師としての日常の丁寧な描写に惹かれる。 仕事バリバリ女性ってのは、往々にしてタカビー女として描かれるが、真に仕事に打ち込む人は美しい。 で、ドヌーヴ登場だが、彼女も大概映画に出倒…

ストレイヤーズ・クロニクル

★★★ 2015年6月28日(日) MOVIXあまがさき5 悪くないトーンだとは思うが、世界との関係性に演出が無自覚だからママゴトにしかならない。又、この今更題材に期待した石森章太郎や平井和正への憧憬も充たされることはない。『Xーメン』以降に問うべきものと…

ミスター・グッドバーを探して

★★★★★ 1980年12月5日(金) ビック映劇 1981年7月3日(金) 梅田ロキシー 見え透いた扇情的題材に見えるが、軽やかにニュートラルで、故に描かれる孤独も抜きんでる。息つく間もないカッティングの冴えは自走しシュールな時制の垣間からドッペルゲンガーが顕現す…

エルネスト

★★★★ 2018年1月20日(土) 新世界国際劇場 おそらく、企画段階でのキーワードは「日系人」と「ゲバラ」なのだろう。 しかし、そのキーワードは阪本の手によってきれいさっぱり葬り去られる。 フレディという日経2世の主人公は「日本人」というアイデンテテ…

ラン・オールナイト

★★★ 2015年8月16日(日) 新世界国際 シーン繋ぎのシャープネスなど所々惹かれるが、練れてるとも思えぬ脚本に無理くり感がある。全員敵という程の矢継ぎ早設定でもなく一晩凌げばの確証も無くエドは言うほど怖くも強くもない。大体リーアムの酔いどれダメ設…

女囚701号 さそり

★★★★ 1980年12月25日(木) 梅田東映ホール 劇画的であることに自覚的であり大胆としか言いようのない誇張演出が壺にはまった前半は文句なしの傑作。ロジカルな唯物史観の高みにさえ到達し得ているかのようだ。が、情に浸食された後半は一気にトーンダウンして…

嘘を愛する女

★★★★ 2018年1月21日(日) MOVIXあまがさき6 何年間も一緒に暮らした男が、実はどこの誰とも知れぬ野郎だったという話。 失踪者の数が年間数万人に達する日本でキャッチーな題材である。 俺だって、いつそうなるかわかったもんじゃないと思ってるし、…

毒薬と老嬢

★★★ 2015年7月11日(土) プラネットスタジオプラス1 グラントの躁演技がキャプラと相性悪い感じがする以上に題材的に不可避なダークサイドへの共振を欠いた状態で物語だけひた走るのが如何にも空疎だ。ヒッチかラングあたりで見たかった。ラッパおじさん他…

サウンド・オブ・ミュージック

★★★★★ 1976年2月1日(日) 伊丹グリーン劇場 1976年3月29日(日) ビック映劇 大甘お子様ランチでも贅の限りを尽くし冴えた演出にかかるとヒネた大人でも涙する。結婚式や音楽祭の巨大なリアリティとアルプスの大パノラマの美しさに素直に感銘した。そして、今で…

オペレーション・クロマイト

★★★ 2018年1月20日(土) 新世界国際劇場 安いヒロイズムと安いCGとご都合主義がテンコ盛りで食傷します。 …で、済んじゃうような映画です。 が、それでも、あらためて朝鮮戦争って何だったのかを考えてみる切欠にはなる。 リーアム・ニーソン扮するマッカ…

ミッション・インポッシブル ローグ・ネイション

★★★ 2015年8月19日(水) 大阪ステーションシティシネマ2 何だかスパイ大作戦から行路を経て007に行き着いちまったみたいな今更言うのもなんだが虚しさを感じるのはスペクターみたいな大雑把な敵役のリアリズム。最高ランクのレベッカを得ながら野郎同…

暗殺のオペラ

★★★★ 1980年12月27日(土) 三越劇場 サスペンスフルに謎が解明されるわけでもないが、ストラーロによる緩やかな移動と匂い立つ緑萌えるイタリアの田舎町の環境描写が、じわじわ絡め取られるかのような白昼の夢幻とでも言うべき雰囲気を醸し出している。そして…

伊藤くん A to E

★★★★ 2018年1月19日(金) TOHOシネマズ梅田5 TVドラマがあったようだが、未見。 なので比較のしようもないが、予想外に良かった。 「伊藤くん」とタイトルに冠されているが、これは木村文乃扮するアラサー女の再生譚だ。 で「伊藤くん」は単なる狂言…

ターミネーター 新起動 ジェニシス

★★★ 2015年7月12日(日) MOVIXあまがさき7 庇護の対象がジョンでなくサラになったおかげで爺さんと孫娘みたいな雰囲気が生成され、老化シュワへの危惧を先回りで緩衝した。キャメロンに尻尾振りつつ実際は大概ええ加減な展開も悪くない。でもやっぱもう打…

白夜

★★★★ 1979年2月18日(日) 大毎地下劇場 1980年5月24日(土) SABホール 余りにもの内向的世界に退く部分もあるが、確固たるポリシーで統一された透明感には微塵も隙が無い。その世界を構築するのは叙事的物語ではなく刹那の叙情なのだ。わけてもセーヌをたゆ…

嘘八百

★★★★ 2018年1月14日(日) TOHOシネマズ梅田3 終盤の結婚式場でのドタバタの中でエレベーターでの鉢合わせがある。 そのとき、瞬間的にこういうシーン見たことあるとの既視感が去来した。 見終わったあとも何の映画やったかとずーっと考えていて、ふと…

犬どろぼう完全計画

★★★ 2015年7月25日(土) シネマート心斎橋2 子供のチャチい計画を大人脳で斟酌せぬまま出されても仕方ない左程ポップでもなく諧謔も皆無な児童映画。ただ安易に太平楽な結末を迎えるのではなく現実を噛みしめたかのようなラストがいい。何よりイ・レちゃん…

赤い殺意

★★★ 1977年11月20日(日) 東梅田シネマ 単なる痴情話で終わらせまいとしてポジ『昆虫記』のネガと対置し日本論的な風土や因習を加味して物語的な強度は拡散した。暗鬱な東北の風土の中で描かれる図太く強かな女のバイタリティは春川ますみの木偶のような受動…

8年越しの花嫁

★★★ 2018年1月11日(木) 大阪ステーションシティシネマ1 こういう難病ものってのが好きではないし、実話ベースってのも気が重い。 よっぽど好きな女優でも出てればと思うが、土屋太鳳にはあんまり食指がわかないのだ。 なんで見に行ったのかようわからんの…

悪党に粛清を

★★★★ 2015年7月18日(土) 梅田ブルグ7シアター4 全篇を貫くジャンル愛とでも言うべき思い入れが濃厚で、それならこの何の芸もない継ぎ接ぎストーリーも強度と言い換えたくなる。愛する全てを失って尚の展開は、更なる虚無地獄に生きるらしいエヴァが物語…

サード

★★★★ 1979年4月2日(金) 伊丹ローズ劇場 1980年8月16日(土) 毎日ホール 閉塞世界に穿たれた風穴から見える幻影の「九月の町」は蜻蛉のように儚いが、一方で確固たる現実世界は劇画チックに暑苦しい。モラトリアムということの平熱での表現。底流では通暁する…

希望のかなた

★★★ 2018年1月8日(月) シネリーブル梅田1 カウリスマキは昔は好きだったので、凡そ観てはいたのだが、最近はごぶさただった。 たぶん、「浮き雲」が最後だったと思う。 まあ、時間の都合がつかなかったとか色々あったのだろうが、煎じ詰めれば「飽きた」…