男の痰壺

映画の感想中心です

おもひでのしずく (2004年9月7日)

※おもひでのしずく:以前書いたYahoo日記の再掲載です。

 

アンダー・サスピション FINAL

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2004年9月某日。とある屋台のおでん屋。
1人の男が暖簾を開けて顔を出した。
「遅いぜ!ベイビー」
いきなり1人の男ががなりたてた。
男は鷹揚に頷くと横の席に腰掛けた。
「場所がわかんなくてよ」
「おかげで竹輪30本喰っちまったじゃんかよ」
「何で竹輪ばっかり30本も喰うんだよ、親爺泣いてるじゃねえか…おう!はんぺん5個とよ、牛蒡天5個…マヨネーズつけてな」
「結局、お前も練物じゃんかよ、しかもマヨネーズだあ?泣けるね」
「ケチャップつけてるお前に言われたくないぜ、なあジーン」
「…」
「どうしたんだよ、急に黙りこくりやがって」
「いや、一時は飛ぶ鳥落とす勢いだった俺たちもよ、最近じゃあめっきり仕事もなくなっちまってさ、しけた屋台で1杯とは…って思うとよ」
「そうだよなあ、今回の仕事だってよ1年前だったら絶対断ってるぜ」
「大体、『ゴジラ』って名前からして気にいらねえ、あの金持ち逃げしたグラサン野郎もゴジラだったっけ」
「ありゃあゴジだよ」
「大丈夫か?今度のリューヘイ・キタムラってのは」
「知らねえ…まあ今回俺たちが金出すわけじゃないからな、ちょこっと物見遊山でアルバイトしに来たようなもんじゃねえか」
「そりゃそうだ。しかしよ、もうちっとマシな役なかったのか?」
「…」
「お前が米人ジャーナリストのジミーで俺が仏人観光客のフランソワだったっけ」
「どっちとも、ちょっと出てきて、すぐゴジラに喰われちまうんだろ…」
「いや、あの後リューヘイからFAXが来てたの見なかったか?ジミーはカマキラスに両手両足をちょん切られて、フランソワはクモンガに糸でグルグル巻きにされて脳味噌チューチュー吸われるそうだ」
「…そっか」
「…」
「何とかならんのか?」
「…大統領まで演った俺たちがよ」
「寂しすぎるぜ」
「…だよな」
「…」
「…」
「よっしゃ…」
「うん?」
「とりあえず、竹輪5本!…何?売り切れ?なめとんのかあ!クソ親爺」

屋台を破壊し尽くして夜の町の雑踏に消えた彼らの行方を知る者は誰もいない。