男の痰壺

映画の感想中心です

益荒男の卵かけご飯 或いは人類の希望

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俺はこの歳になるまで卵かけご飯をほとんど食べない人間だった。

あのいくらかき混ぜてもドローンとした白身がご飯と親和せず、口中に入ったそれがズルリと喉を通過するとき気持ち悪さは吐き気さえ覚えるのであった。

団体旅行とかで旅館に泊まった翌日、二日酔いで吐き気がおさまらないところに朝飯で生卵がついてると拷問である。人の手前、ご飯を残すことは良しとしない性格から無理して食い味噌汁で流し込むを反復して凌いできた。

 

1年ほど前だろうか、厳冬の早朝、凍え切った身体で俺は牛丼チェーンの松屋に入り通常なら牛丼並とかソーセージエッグ定食を頼むのだが、その日は卵かけご飯定食を頼んだ。290円と安く俺は貧乏だった。熱々味噌汁が体に染みわたり卵を溶いて飯にぶっかけかき込んだ。なんや、けっこう美味いやんけ。その時、俺は激しく空腹だったのだ。

 

週1くらいで食するようになってしばらくした頃、テレビで上沼恵美子がサブロー相手に卵かけご飯談義をしてるのを見た。

「あんたなんやねん、シャカシャカ10回も20回もかき混ぜて、なんやのんあれ、メレンゲかい。あのなあ、卵コンと割って醤油2、3滴ススーって垂らして3、4回ササーっとかき混ぜて、でご飯にかけてサッと食べる。男やったらそうせんかい」

サブローは苦笑いしてたけど、テレビの前の俺は自分のこと言われてるみたいで居た堪れなかった。深く恥じ入った俺は、その後そうやって卵かけご飯を食うのであった。ドロンとした白身も乙なもんであります。

 

人間の価値観なんて、ことほど左様に変質していくのだ。歳をとるほど考え方は硬直する。自戒せねばと思う。

今朝の日経新聞に、バリバリの自由経済推進者で共和党の後ろ盾、保有資産450億ドルの米コングロマリット総帥チャールズ・コーク、86歳の、富の偏在による格差の果てしない拡張に言及した言葉が出ている。

「我々が台無しにしたのか」

俺はそうは思わない。ネットによるシステムの激変を利せる時代がいつまでも続くとは思えないから。世界はやがて平準化していくだろう。

でも、柔軟な思考の広がりこそが未来への希望に繋がる糸口じゃないかと思うのです。

 

で、お前は家でも卵かけご飯食ってるのかって?

全く食べないっす。そこまで好きじゃないんで。