男の痰壺

映画の感想中心です

2017-09-01から1ヶ月間の記事一覧

ベルファスト71

★★★★★ 2015年11月21日(土) 新世界国際 非日常へと踏み込んでしまう境界が唐突にやってくる映画的導入が優れているのだが、そこから繰り広げられる展開が予想以上に複層的。70年代初頭テロリズム勃興期に世界で若者達が踏み込んでいった狂気が充満する。…

風林火山

★★ 1978年5月28日(日) 伊丹ローズ劇場 何もデヴィド・リーンを期待したわけでもないが、大河感が無さすぎる。歴史の陰にスポットを当てる井上原作の滋味を三船が仕切って台無し。土台解釈が違いすぎる。謙信裕次郎登場に至っては最早哀しく笑うしかない。(ci…

ラ・ジュテ

★★★ 2017年9月18日(月) プラネットスタジオプラス1 第3次世界大戦後の核汚染された世界を描いているが、よくあるキノコ雲は一切出ない。 若干瓦礫化した街並みが出るが、それより戦慄的なのが平時のパリのオルリー空港。 何か不穏な空気が充満しているよ…

ラブ・ストリームス

★★★★ 2015年11月21日(土) シネヌーヴォ 2人を交互に描く前段が圧倒的で崩壊きわきわの心理状態を冷視する客観描写が底冷えしそうだ。しかし、どんな壊滅のカタルシスが待ってるのかと思ったら両者が合流し何だか生温い曖昧感情が付け入ってくる。それでも…

エクソシスト

★★★★ 1974年9月16日(日) 梅田グランド劇場 悪魔払いの鬼面人驚かす数々の趣向と登場人物の背景の孤独な心理地獄が相互浸食して剣呑さを倍加していく。そんな中で唯一の精神支柱フォン・シドーがフィジカルに潰える荒業が映画を転倒させクライマックスに雪崩…

三度目の殺人

★★★★ 2017年9月17日(日) MOVIXあまがさき11 どんだけ「天国と地獄」好っきゃねん。 …っていうくらい拘置所の接見所におけるミラーショットテンコ盛りです。 ただ、これがトップクラスの2大俳優のガチンコもあって魅せます。 是枝のカット割りや画…

劇場霊

★★★ 2015年12月5日(土) 大阪ステーションシティシネマ7 もはや中田は得体の知れたものしか描けぬようになったらしい。大時代な主役争いを繰り広げる女優達の相克は一応ぱるる熱演でご愛嬌程度には楽しめるが、なら脅威であるそいつも女優の成れの果てであ…

真夜中のカーボーイ

★★★★★ 1978年6月21日(日) ビック映劇 1980年5月21日(水) 関西学院大学学生会館大ホール 上辺にトライし打ち砕かれても受け入れ場所はある。そういう懐の深さを宿す60年代末NYアンダーグランドの混沌。定員制故に退場者は出るにせよ救済システムが一応機…

パリのナジャ

★★★★ 2017年9月18日(月) プラネットスタジオプラス1 2021年7月19日(月) テアトル梅田2 フランス外務省の依頼で撮られたソルボンヌ大学の紹介みたいなドキュメントという体裁。 演出がエリック・ロメールで撮影がネストール・アルメンドロス。 まあ、ド…

ラスト・ナイツ

★★★★ 2015年11月24日(火) TOHOシネマズ梅田6 方便としての「忠臣蔵」ではなく本当にこの物語を語りたかったのだと思う。凡庸な殺陣や安いCGなど万全でもないがベタを恐れぬ強度が誠実の証。オーウェンのカイザー・ソゼ歩きに「いよっ!」っと大向こうか…

男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく

★★1978年8月7(月) ダイニチ伊丹 慎ましやかな人々を描いてこその山田演出は花形スターをマドンナに持ってきて端から届かぬ感を漲らせシラける。SKDの楽屋裏の描写が旅一座的猥雑さを混じえて良いのだが、華のあるべき場面まで泥臭いのでは救われん。武田…

ダンケルク

★★★★ 2017年9月16日(土) 大阪ステーションシティシネマ1 前置きなしで、いきなり渦中に放り込まれる展開がいい。 1兵士から見た戦時の現場の混乱なんて、そんなもんだと思うから。 ノーランの「画」への拘りも実を結んでると思う。 特に戦闘機の挿話。 …

FOUJITA

★★★ 2015年11月29日(日) シネリーブル梅田1 どう考えても2つの時代の作風の変節に踏み込むしかない映画なのだが、風景や環境描写だけでアプローチしようとして木端微塵に玉砕したみたいだ。パリ時代のデカダンやアナーキズムの欠如が致命的。ど素人の学…

雲霧仁左衛門

★★ 1978年9月15(金) アサヒシネマ 多くの登場人物が捌ききれたとは言えず、ごった煮的展開を1本調子の演出での2時間半とあってはしんど過ぎ。殺陣はシンプルな場面は買えるシーンもあるが集団戦になると馬鹿みたいに血吹き出させ過ぎで失笑さえ禁じ得ない…

あこがれ

★★★★ 2017年9月18日(月) プラネットスタジオプラス1 あこがれのお姉さんが… 自転車で疾走しスカートがめくれ上がる。 テニスに興じてスコートがめくれ上がる。 と、まあ、少年の青いムラムラが炸裂するのだが、そこはそこ、何せトリュフォー先生ですから…

突撃隊

★★★ 2015年12月5日(土) プラネットスタジオプラス1 曰くありげな屈託キャラで登場するマックィーンだが、全部うっちゃって戦闘状態になっちまうもんだからその設定は回収されない。起承があって転結がない中、兎のようにピョン跳ね走りで駆け抜ける彼がア…

火の鳥

★★★ 1978年8月19(土) 伊丹ローズ劇場 大スケールの物語を得意の映像マジックで何とかカバーしようという心意気は感じるし、脚本も「黎明篇」を巧くダイジェストしているのだが、アニメ使用が何とも中途半端で肝心要の「火の鳥」に至っては実景に全く溶け込ま…

新感染 ファイナル・エクスプレス

★★★ 2017年9月8日(金) 大阪ステーションシティシネマ11 父性の回復といった命題が主軸にあるが、それよりも否応なしに浮上するのが自己犠牲だ。 ・幼い愛娘 ・身重の愛妻 を救う為に男たちは死ねるか(ゾンビになれるか)?…といった問いかけがベタに繰…

コードネームU.N.C.L.E.

★★★★★ 2015年12月1日(火) 梅田ブルグ7シアター3 友情の生成や恋愛の萌芽といった嬉し恥ずかし成分を刻印するに一旦シャレのめさずにおれないガイ・リッチーの意外な純情に共感。ヒロシのテーマのシーンが白眉。相変わらず説明過多でくどいカッティングも…

砂の器

★★★★ 1978年10月29日(日) ダイニチ伊丹 ローカルネタを徹底解題する清張文脈を炎天下を背広を脱いで歩き回る刑事の汗と歩行のリアルで担保する橋本イズム。その若干のマンネリが大浪花節の一大ページェントに大梶を切る。すれすれ勝負だが年間を通したロケの…

散歩する侵略者

★★ 2017年9月10日(日) MOVIXあまがさき5 柄にもなく、まっとうなものをやろうとして案の定スベッたようなもんだと思う。 何をやるかって?愛だそうだ。しかも、男と女の。 それは、極めてミニマムな至近距離の関係に存在する。 に、対して宇宙人の侵…

第七藝術劇場の怪

大阪は十三の飲食と風俗が混在するメインストリートに第七藝術劇場という映画館がある。 はるか昔、俺が中高生だったころはサンポードアップルシアターという名前で、寅さん映画などを観に行った記憶があるのだが、一旦つぶれて数年後に第七藝術劇場と名を変…

ウィンチェスター銃’73

★★★★ 2015年12月20日(日) プラネットスタジオプラス1 鳥瞰で捉えられた商人の惨殺死体やデュリエに嬲り殺される優男などけっこうに血なま臭いプロットも混じえつつも説話的な語り口故に牧歌的。冒頭の射撃大会の件などは童話世界のよう。西部劇の体裁を借…

仁義なき戦い 完結篇

★★★ 1978年11月23日(木) トーエイ伊丹 1991年7月28日(日) 新世界東映 お祭り騒ぎの後の衰亡の歴史を綴った後日談的な寂寥。金子という隠し支柱が消えベクトル無き内部抗争の行き詰まり感は3度目の登板の松方や大友役の宍戸への交代によっていや増される。新…

ワンダーウーマン

★★★ 217年9月5日(火) MOVIXあまがさき6 何でもDC映画化史上、アメリカで最大の興収であっただとか、成長の物語なのであるとか、前評判が良かったのだが… しょうもなッ! 何が成長やねんと思うんです。 だって、彼女は、そもそも人間ではないんです…

007 スペクター

★★★★★ 2015年12月5日(土) 大阪ステーションシティシネマ1 白猫がニャンと飛び出て世界が転倒したわけだが昼行燈メンデスは旧『カジノロワイヤル』的ドM世界へのずれ込みを回避する。中興『私が愛したスパイ』から4半世紀ぶりに再度現出したシリーズの総…

夜の儀式

★★★★ 1978年10月8(日) SABホール 土壇場での攻守の逆転というモチーフは『魔術師』から10年を経てTVという枷の中で凝縮された。「様式」と「室内」という基調に刹那的に差し込まれる「リアリズム」と「屋外」がニクヴィストの撮影で煌めく。それにし…

ブランカとギター弾き

★★★ 2017年9月4日(月) シネリーブル梅田1 こういう真摯な映画には世間の評価は甘くなるし、俺も例に漏れない。 ストリートチルドレンを描いた映画である。 だが、その解釈には新味はない…と敢えて言わせてもらう。 今一歩足りないと思うもの。 ・ブランカ…

恋人たち

★★★★ 2015年12月13日(日) テアトル梅田2 男2人の挿話は真摯なのだが最重要と思われる再生への契機や起点が描かれないので判ったような判らないような釈然としなさだ。橋梁検査という職も若干狙った感がある。一方で主婦の原エネルギーは作為をふっ飛ばし…

ヒポクラテスたち

★★★★★ 1980年11月12日(水) SABホール 5人は渦中から傍観者になり又再び渦中へと入って行かざるを得ない。甘酸っぱい追憶と茫漠たる不安に晒された青春。大森自身がその出口に立った臨場感こそが映画に真実を付与した。青さも含め持てるもの全てを投入し…