男の痰壺

映画の感想中心です

2024-01-01から1年間の記事一覧

俺たちに明日はない

★★★ 1976年4月18日(日) 伊丹グリーン劇場 南部の倦怠とドン詰まり感。行き場のない連中が吹き溜まりに寄せ集められたワイルドバンチの痛々しいカラ騒ぎは祝祭的に描かれる余り胸に迫らない。終盤の非情への一気の転調が揺らめき交錯する視線の刹那に結実する…

貞子 VS 伽椰子

★★★ 2016年6月19日(日) MOVIXあまがさき9 化物には化物とド直球を宣う安藤&麻衣のブラックジャック&ピノコな快演に裏の裏は真理なるかなの予兆。呪怨屋敷でのリングビデオ再生の轟音は真打登場的ハッタリにときめく。が、しかし所詮は睨み女と這いずり…

アレックス・ファン・ヴァーメルダム Alex van Warmerdam

生年:1952/08/14 kenironkun.hatenablog.com

No.10

★★★ 2024年4月15日(月) シネリーブル梅田4 何かを伝えるための奇想と、奇想のための奇想では根本的に違って、そのメッセージを読み取れるかどうかはともかく、何かを描きたい伝えたいとの思いが奇想という仮構に重みを与える。一方で奇想のための奇想は受…

フェリーニの アマルコルド

★★★★★ 1976年1月11日(日) 毎日文化ホール 1977年7月10日(日) ビック映劇 朝靄の中の巨船も雪の中の孔雀も木の上の叔父貴もフェリーニ的なはったりではあるのだが、挑発は影を潜め郷愁に塗り込められる。共同脚本に内実にまだしも重きを置くグエッラが参加し…

トラベラー

★★★ 2017年2月18日(土) シネヌーヴォ 処女作には作家の本質があらわれるらしい。 なるほどと思った。 この切って棄てたかのような終わり方の冷徹。 何の救いもない。 これがキアロスタミの人生観なのだと思う。 あと、子供が主役だが、彼らは恐ろしいほど…

貴公子

★★★ 2024年4月15日(月) 大阪ステーションシティシネマ12 韓国映画の山ほどあるジャンル・ムービーの1つと別段見る気もなかったけど、監督が「新しき世界」のパク・フンジョンだと知って見た。だが見た結果は随分と迎合的に甘っちょろくなっちまったなー…

第三の男

★★★★★ 1976年9月12日(日) 三番街シネマ2 手法は模倣され尽くしたとしても時代は模倣できない。4ヶ国が統治し中世と近代がシンクロする敗戦国を舞台に持ってきた刹那感と情緒。ウェルズ・クラスカー・カラスと3枚揃った伝説。どう足掻いたって再現不可能な…

ゾンビスクール!

★★ 2016年7月9日(土) 新世界国際 覚悟をもって作られたもんではないことは百も承知だが、にしても子供に遠慮しすぎで幼稚園のお遊戯会を見てるよう。どうせならガキゾンビを八つ裂きにし首すっ飛びーの手足引き千切りーのくらいやったらどやねん。こいつら…

ゲームの規則

★★★ 2024年4月15日(月) プラネットプラスワン ルノワールの最高作とする向きもあるそうだが、どうにもなんと言うか今いちだった。だいたいに於いて俺はルノワールの映画が性に合わないんでしょうね。何見てもあんまりピンと来ないんです。 貴族たちの4角…

ナイスガイズ!

★★★★ 2017年2月21日(火) 梅田ブルク7シアター5 70年代をモチーフにしたハードボイルドってのが、もしかしたら流行? なんて思っちまうくらい全てが様になってる。 SEX&ドラッグと生活の垣根が低いんですなあ…この時代は。 そりゃあ、なんでも規制…

ちはやふる 下の句

★★★★ 2016年5月9日(月) TOHOシネマズ梅田9 孤高とも言えるクイーンの登壇により、ぬるま湯で屁をこいたような三角関係にも背骨が 通りウジウジ男はふっきれドS野郎は漢気を見せる。かくして作劇のベクトルは一気に 全国大会へ向かいたいが主人公が浮…

オッペンハイマー

★★★★ 2024年4月14日(日) 大阪ステーションシティシネマ9 今まで悪いと思ってなかったことが、ある日気づいたら悪いことだと世間ではなっていて、自分だけが気づいてなかった。昨今の我が国の松本の問題にしても自民の裏金にしてもそんな感じなんだけど、…

セル

★★★★ 2017年2月22日(水) 大阪ステーションシティシネマ9 何年か前に原作を読んでいるのだが、細部は覚えていない。 ただ、発端は昼日中ののどかな公園だった記憶があるが、映画では空港。 阿鼻叫喚が始まる掴みは映画らしくスケールアップしてる。 小説で…

ミッドウェイ

★★ 1976年7月11日(日) 北野劇場 ザナックほどの包括戦略と覚悟がミリッシュに無く、一応は顔見せ的に老朽スターを揃えてはみたが、肝心の戦闘場面までもが老朽使用済フィルムでは残骸感もいや増す。東宝の同工作と同レベル。どでかいセンサラウンド音だけが…

ふたりの女

★★★ 2016年8月20日(土) プラネットスタジオプラス1 大戦末期の各国列強が侵攻する伊半島内陸部の混沌とその奔流に流されるしかない人々。中空からの掃射で目の前の人が倒れても構ってる余裕もない。そういう現実認識のリアリズムはある。ただ、輪姦描写の…

ブレイクアウト

★★ 1976年3月20日(土) 伊丹グリーン劇場 ブロンソン主演でテキトーに筋あつらえてソッコーで1本臭が滲み出ており、展開の場当たりさが突き抜ければ味と化するのだろうが、その領域には達していない。キャラも生煮え硬軟半ばの半熟卵のようなもんだし相変わ…

ブルックリン

★★★★ 2016年7月11日(月) TOHOシネマズ梅田6 棄てた故国が十全な幸せを放逐して尚彼女の心を捉えるには描き方が足りぬとも思うが女心と何とかなのだと納得する。所詮男は女が本当は何考えてるかなんて解らん。一時の気の迷いも何十年か経ち淡い想い出と化…

愚行録

★★★ 2017年2月18日(土) 大阪ステーションシティシネマ11 大学の学内ヒエラルキーなど見えるやつには見えるが関心がなければ見えない。 上昇志向からそういうものに囚われた人々を描くのはいい。 しかし、それを相対化させる一般の人々がこの映画の中には…

ゴールド・ボーイ

★★★★★ 2024年3月25日(月) MOVIXあまがさき8 金子修介の映画をそんなに多く見てるわけでもないが、それでも敢えて最高傑作と言いたくなる出来で、世評は高いようだが話半分やろと思い、まあそこそこ程度くらいは行ってくれるんかいな、との何様な俺の…

ジャン=ポール・ベルモンドの 恐怖に襲われた街

★★★★ 1976年9月5日(日) 伊丹グリーン劇場 アメリカ製ポリスアクションに一歩も引けを取らない活劇の連鎖。飄々とスタントをこなすスターベルモンドが醸す余裕とユーモア。朴念仁的相棒デネとのコンンビネーションの味わい。それらを統べるベルヌイユの演出の…

パンと裏通り

★★★ 2017年2月18日(土) シネヌーヴォ タイトルバックがビートルズ(オブラディオブラダ)? っていうかイージーリスニング使用ってことなんやろう。 そういう、手近のもんで済ませた、まあ習作ですわ。 俺も子供のころに、犬に追っかけらえてトラウマにな…

大地震

★★★ 1975年1月6日(日) OS劇場 サバイブするドラマにまでは仕切れず翻弄されるのみの群像劇であるが、主役ヘストンが無為な抗災キャラに徹し切れないのがどうしたって弱い。白昼の災厄を描くハリウッド版ミニチュア特撮は正直、東宝版を凌駕する出来でガセ…

アトリエの春、昼下がりの裸婦

★★★ 2016年8月20日(土) 新世界国際 創作という作業にリヴェットやエリセ並みに真摯なわけでも当然ない。仄かといっていいモデルとの関係性にエロスも介在しない。だが煮え切らぬ三角関係は死へと向かう諦念めいたタナトスが浄化するだろう。そういう無常と…

高野徹 Toru Takano

生年:/// kenironkun.hatenablog.com

海の上のピアニスト

★★★ 2024年3月27日(水) 大阪ステーションシティシネマ6 俺はトルナトーレの「ニュー・シネマ・パラダイス」の情に浸るだけの作風が嫌いな人間なので本作も敬遠してたのだが,今回再映されるのを機にどんなもんやろかと見てみました。で、やっぱこのおっさ…

マリの話

★★★ 2024年3月20日(水) シネヌーヴォX 濱口竜介の作品に助監督として参加していた高野徹の初長篇作品、だそうだが1時間ちょいの中篇で、それが4つの掌篇からできている。 なんでも高野のインタビューを読むと、パリに留学中に幾つかの短編を撮り、その中…

奇跡の人

★★★★★ 2017年2月13日(月) 大阪ステーションシティシネマ8 構成が秀でているんだと思う。 サリバンが到着して初対面で即ガチンコが始まる。 有無を言わせぬ完璧な掴み。 クライマックス。 記号が概念と直結する。 世界の仕組みが一瞬にして明らかになる。 …

だれかの木琴

★★★★ 2016年9月12日(月) 大阪ステーションシティシネマ6 東としては80年代川上皓市と組んだ女を描いた一連作のテイスト復刻にも見えつつ主張しない女優を据えての奇矯話に周回した老成も感じる。平日の午睡のような平穏に包まれ偏執行為にのめりこむ主…

ペーパー・ムーン

★★★ 1975年6月22日(日) 阪急文化 グッドオールドデイズ的話芸がシネフィル的に嫌らしくも巧過ぎて見とれるのだが、如何にもな大人こどものテイタムには今いち馴染めない。コヴァックスのモノクロ撮影が時に水墨画のように素晴らしく、フォードなアングルで撮…