男の痰壺

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マリの話

★★★ 2024年3月20日(水) シネヌーヴォX

濱口竜介の作品に助監督として参加していた高野徹の初長篇作品、だそうだが1時間ちょいの中篇で、それが4つの掌篇からできている。

なんでも高野のインタビューを読むと、パリに留学中に幾つかの短編を撮り、その中の1つが出来が良くて公開したいなと思ったが短かすぎるので新たに3つの日本での話を創作したとのことで、それが女優のマリにまつわる話で、パリで撮った短篇は、そのマリが監督しようとしている(或いは監督した)映画として4本目に配置された。

で、結果として、やっぱ4つ目の挿話が最も強度がある。まあ、強度があると言っても、フランス人の男女が林の中を散策しながら各々ランボー萩原朔太郎のエロい詩を朗読するってだけのもんなんですがね。

 

新たに付加された3本の中で、1本目が現実と妄想が混濁する様に於いて最大限に誉めるならブニュエル的に面白い、と言えるかも知れない。ただ、冒頭と最後に配された両者の越境以外の中盤がどうにも生煮えな感じでむず痒くも青い。

 

この、1本目と4本目を見る限り、日本映画に久しく見なかった作家主義的な個性の登場を期待させるものではある。

2本目、3本目は意図がわからんし、俺にとってはどうでもよかった。タイトル他語り口のフォルムにはホン・サンスの影響も読み取れるが、それは高野本人も言及してるところである。

 

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