男の痰壺

映画の感想中心です

2020-01-01から1年間の記事一覧

戦場のメリークリスマス

★★★ 1983年7月18日(月) 伊丹ローズ劇場 崇高で毅然とした魂の相克を描くに同性愛への越境はいいとして、ならばビジュアル男優の配置は余りに芸が無い。ボウイと坂本には正味うんざり。庶民的たけしが良いだけに尚際立つ。大島らしからぬ巨視観の一方で又らし…

ツーリスト

★★★ 2011年8月13日(土) 新世界国際劇場 刺激度ゼロの展開ではあるが、世の中を睥睨するかのようなアンジーのウォーキングと太鼓持ち宜しいジョニーのドM感が、意外に明媚なヴェネチアの風情と相俟って心地よい。ジャンルの欠落した間隙を埋める凡作として…

中国女

★★★★ 1983年7月3日(日) 吹田映劇 ある種の革命の萌芽がお遊び的な男女の嬉し恥ずかしイズムの中で生成される点を露呈させて傑作。カリーナと哲学者との青い即興から5年、大学教授とビアゼムスキーの掛け合いは、少なくとも内実を伴うものに感じられた。撮影…

リバティ・バランスを射った男

★★★★ 2020年12月6日(日) プラネットスタジオプラス1 子どもの頃にテレビ放映で見て良い映画だと思った記憶があるのだが、それは、何かどんでん返しみたいなのがあったように覚えていたんだけど、そんなもんはありませんでした。同じ頃に放映されてた「テ…

この愛のために撃て

★★★★ 2011年8月27日(土) 梅田ガーデンシネマ2 アクションとして健闘作だが今一歩の切れが無い。しかし、時流迎合なカメラブレと細切カッティングに依存せず、混沌の中で主線から逸れ敵味方に混在する端キャラの女たちの錯綜する視線のドラマを抽出する演…

キッドナップ・ブルース

★★ 1983年6月29日(木) 毎日ホール 限りなくアドリブに近いタモリと客演者たちとの掛け合いが黴びたシネマ・ヴェリテのような制作時に見ても10以上年前の作品の如きの古臭さ。意図された無意味や仕掛けられた観念は周到な計算に裏打ちされて成立する。これ…

[リミット]

★★★★★ 2011年9月23日(金) 新世界国際劇場 ソール・バス風タイトルからして一発やったろと言う気合が窺えるが、超絶な制約を自ら課し制圧するド根性以外はヒッチ風な作風でもない。寧ろ柔軟で闊達であり奇異を衒ったところも無いのが驚異的。ご都合主義な設…

映画年間概観 2009

映画2009 2009年の劇場鑑賞映画が112本。6年ぶりに100本を超えてしまった。新たな暗黒時代の到来であろうか。過去の経験則からいって、映画をいっぱい見てる時期というのは、あんまり幸せとは言えないからだ。とは言え、現実逃避にせよ、気分…

家族ゲーム

★★★★★ 1983年7月21日(木) 三番街シネマ3 盛り込むではなく削ぎ落とすアプローチで60年代ゴダール的ポップへの回帰が図られた上でボソボソ声の優作が止めを押す。十三・さおりの硬軟助演の妙もハマり全てが理想的な上、ブニュエルな晩餐から終末示唆の午睡…

野獣の青春

★★★★ 2011年9月17日(土) 高槻セレクトシネマ1 歪な意匠に拘泥しないプログラムピクチャーの語り部としての清順演出は、ド変態が五月雨的に登場し次々と人が死ぬ異様な展開の中でも崩れない。舛田利雄的安定と石井輝男的不均衡のフュージョン。微妙な味わ…

東風

★ 1983年7月3日(日) 吹田映劇 映画文法の解体から発したゴダールの破壊願望は奇跡的均衡を保ちつつ『ウィークエンド』で結晶化し、東風に晒されて更なる越境を志向する。ならば、地平の彼方に旅立てばいいものを戻って来ちまうだらしなさ。そこは好きだが映…

世界侵略:ロサンゼルス決戦

★★★ 2011年9月18日(日) MOVIXあまがさき4 溜めが無い直截さを美点と思おうとしても、一方で海兵隊の面々を描くに情緒を垂れ流している。ミクロなエリアでのロボット兵じみたエイリアンとの戦いは『ブラックホーク』以後の映画内での近代市街戦描写の…

脳天パラダイス

★★★★ 2020年11月28日(土) シネリーブル梅田4 通常、この手のテーマでありそうな家族の再生とかには端から興味がないのだろう。ここでそれは、解体された後、組み替えられた異なる様態での再構築の気配を見せる。が、それもどこまで本気かわかりません。 …

炎のランナー

★★ 1983年7月14日(木) 戎橋劇場 仰々しいお洒落な音楽に乗って、とんでもなく在り来たりなスローモーションで疾走する選手達。コマーシャリズムの極北とは言え露骨過ぎ。より速く走る肉体という原初的テーゼは懐古趣味でピューリタニズムな形骸に囚われ陳腐…

処刑剣 14BLADES

★★★ 2011年9月23日(金) トビタシネマ プロット毎の魅せ方は悪くもなく、決め構図に心射られそうになることも無くはない。特に温泉でのドニー&ヴィッキーの嬉し恥ずかしな青春プレイの甘酸っぱさはナイス。だが、肝心の大枠が端折り過ぎで根の部分で置いて…

映画年間概観 2008

映画2008 2008年、映画館で観た映画は90本。色々あったが、よう頑張ったんちゃうやろか。 例年通りシネスケでの採点での上位を書く。 邦画★★★★★「母べえ」邦画★★★★「愛の予感」「いろはにほへと」「拝啓総理大臣様」「アフタースクール」「ぐるり…

刑事物語2 りんごの詩

★★★ 1983年7月27日(水) 伊丹グリーン劇場 2段構成になっているのが必然ではなく場当たりにしか感じられないので散漫な印象になった。マドンナ園みどりの鈍臭さが悪くないだけに勿体無いのだが、そこはそれ遣りたい事は豊富で飽きない作りだし、武田の激情的…

スリーデイズ

★★★ 2011年10月8日(土) 大阪ステーションシティシネマ6 ご都合主義とまでは言わずとも場当たり的だし、主人公の疑心や善悪への葛藤の詰めが甘く釈然としない。アクション監督としてのハギスは若干ベタとも思うが、父と息子や夫と妻の間の熾火のような心の…

日本の夜と霧

★★★★ 1983年12月11日(日) 伊丹ローズ劇場 1990年9月29日(土) みなみ会館 反体制闘争を描くに製作も制約を逆手に取った体制打破気分を横溢させるいう前代未聞の戦略。大島の空気を読む山師才能が全開。2世代の闘争の総括が呈示されたとも思えぬが吉沢京夫の…

Mank マンク

★★★★ 2020年11月29日(日) シネマート心斎橋1 ハーマン・J・マンキーウィッツ。 正直、「市民ケーン」以外に大した仕事があったのかと思ってしまうのだが。 篇中、30年代のMGMスタジオで、セルズニックにドイツから招聘された若きスタンバーグを前に…

激突!

★★★ 2011年9月30日(金) TOHOシネマズ梅田10 ことの起こりからシャレじゃないと気づくまでは、ショットが織り成す純粋芸術たろうとするスピルバーグの矜持がイケイケの接写多用の弩級感と相まり完璧なのだが、映画はやがてマシスンのモノローグに侵食…

スター・ウォーズ ジェダイの復讐

★★★★ 1983年9月4日(土) 阪急プラザ 前置きゼロでハン・ソロ奪還が始まる砂漠惑星のシークェンスは正に息をもつかせない。惜しげなく投入されるキャラと魅惑的な舞台設定に心もめくるめく。レイアもジャバの掌中で艶めかしい。だが終盤のディズニーテイストに…

アンノウン

★★★ 2011年9月23日(金) 新世界国際劇場 意外性はあったが、卓袱台をひっくり返すようなことをしといて、ベーシックなハリウッドマターに準拠するから生煮えになる。3転4転の破綻こそが望ましい。異郷感覚のムードは撮影の良さもあり秀逸。ガンツも歴史の…

映画年間概観 2007

映画2007 2007年度ベスト映画邦画「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」洋画「今宵、フィッツジェラルド劇場で」 今年映画館で観た映画は75本。例によってシネスケ採点★4と★5を抽出すると邦画★5「大日本人」「赤い文化住宅の初子」「スキヤキ・ウ…

サマー・ナイト

★★★★ 1983年9月5日(日) ビック映劇 どうでもいいよな1夜の狂騒を6人の登場人物で描くさして笑えぬアレン流艶笑劇シェイクピア風味。しかしウィリスのフィルターワークが完璧で黄金色の光に縁取られた真夏の避暑地が統御された世界を産み出している。とにも…

さすらいの女神たち

★★★ 2011年10月8日(土) 梅田ガーデンシネマ2 舞台と楽屋に於ける女たちの圧倒的実存の前では、アマルリックの主人公の物語は決してあざとくもないにせよ、どうしても作為めいてしまうのが気の毒であるが、それも又本望であろう女愛を感じる。黒子に徹する…

東京物語

★★★★★ 1983年12月7日(水) ビック映劇 1992年2月9日(日) 日劇シネマ 戦後小津フィルモグラフィ中、物語へ準拠が形式への拘泥と拮抗し、感情吐露が諦念と併置された点で『東京暮色』と双璧。スタティックな構図と華麗なカッティングのリズムの錯綜。そして、熱…

佐々木、イン、マイマイン

★★★★★ 2020年11月28日(土) 大阪ステーションシティシネマ7 今年も残すところあと1ヶ月となったわけだが、多分、これが俺の日本映画ベストになりそう。 相変わらず四宮の空気の肌触りまで感じさせる撮影が絶品ということもあるが、語らねばこの先生きてい…

孫文の義士団

★★★ 2011年9月23日(金) 新世界国際劇場 ものすごく生真面目すぎてしんどく、情に溺れたヒロイズムにも退く。雌伏の期間のアンチドラマチックなグダグダは、成程「忠臣蔵」との類似の指摘が頷けるかったるさ。贋流役者の中の真剣ドニ-が傍流的役回りなのも…

探偵物語

★★★★ 1983年9月27日(火) 三宮東映プラザ 思春期少女のロスト・ヴァージン願望が息苦しいまでに画面に充満し、又ひろ子がそれに完璧に同期した感があり腐りかけの夏蜜柑のように切ない。だが、優作がタコ吸盤の唇で吸い尽くし世界を終焉させる。故に少女は旅…