男の痰壺

映画の感想中心です

2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

長い灰色の線

★★★ 1983年3月1日(火) 伊丹ローズ劇場 フォードの懐旧的情緒は敬愛するに足るし、外様パワーを囲む一家の醸すアンサンブルの良さは否定したくもないが、題材が題材。第2次大戦に対する愛国主義的盲信ぶりには、どうしたって退いた姿勢でしか見ることはでき…

隠された日記 母たち、娘たち

★★★★★ 2011年4月23日(土) 高槻セレクトシネマ2 母娘の確執の物語として始まった物語は、祖母の大過去が点描され出してから俄かに女性の社会的自我確立に対するクロニクルとしての巨視感を得る。時制の混在が生む映画的語り口の醍醐味。そして、真っ当に冷…

ドミノ 復讐の咆哮

★★★ 2021年1月14日(木) 新世界国際劇場 「パッション」以来6年ぶりのデ・パルマ作品ということなんだが、4つ巴の話の軸が定まらないまま流されていく感じだ。 相棒を殺された刑事、父をイスラム過激派に殺された元特殊部隊の男、イスラム過激派、CIA…

逃がれの街

★★★ 1983年10月26日(水) 伊丹グリーン劇場 平素な日常も板子一枚下は地獄という話は魅力的。警察の職務に徹したプロ意識もやくざの徹底した非情さも申し分ない。ただ、脚本が不出来で転調する前後半のジャンクションが欠落してるので印象が散漫。(cinemascap…

神々と男たち

★★★ 2011年4月9日(土) 梅田ガーデンシネマ2 「神々と」と言う割には高次な命題ではなく、曳かれ者の小唄的に矮小な世界観にしか立脚していない。それでも、「白鳥」の余りにと言うしかない自己陶酔なセンチメンタリズムの強引な押し付けには若干捻じ伏せ…

地獄に堕ちた勇者ども

★★★★ 1983年1月19日(水) サンケイホール 多重テーマを容易ならざる重層構造で描くが、「リア王」に於ける王不在の中で悪女の傀儡たるボガードが牽引するのが物語構造として如何にも弱い。しかし、替わって魑魅魍魎のようなホモセクシュアルを前面に突出させ…

コロナパニック、頭がパー!!

新世界国際劇場の看板惹句はオモロくて気が利いてるのでSNSによく投稿されてるみたいやけど、今回、久しぶりに見に行って、今の気分を巧く表現しとるなあ座布団1枚!思いました。 ほんまもう、アホちゃいまんねんパーでんねんと開き直るしかないんやない…

ザ・ファイター

★★★★★ 2011年4月9日(土) 梅田ガーデンシネマ1 彼女は彼氏に、妻は姑に、弟は兄貴に、皆腹に溜めた蟠りを吐き出す物語であり、それが人間関係を壊すのでなく礎となり相互信頼を築いていく。これは理想郷。遠慮と躊躇が支配する多くの都市型コミューンが崩…

生きてはみたけれど 小津安二郎伝

★★ 1983年12月7日(水) ビック映劇 名場面集などTVドキュメントで充分なのであり不要。思い込みや決め付けでもいいから客体をひっぺがす力業がないと意味が無い。俳優・監督・評論家たちの手垢ついた証言はコラージュでさえなく凡庸に並置されただけ。作品…

バーレスク

★★★★★ 2011年4月23日(土) 高槻セレクトシネマ1 1人のタレントを活かす為だけに奉仕するプロットが連なる快感。陳腐を恐れぬトラッキングやズームのカメラ使いと編集のカットバックも強度抜群。男はあっさり許されライバルも難なく復帰。その成し崩しな終…

歴史は夜作られる

★★★ 2021年1月11日(月) プラネットスタジオプラス1 夫婦や恋人といった男と女の間には、たいてい2人にだけしかウケないパーソナルな思い出みたいなのがあって、映画はそこらへんを具体的に且つロマンチックに造形・創出することでご婦人方のハートを鷲掴…

未完の対局

★★ 1983年1月23日(日) 伊丹グリーン劇場 三国と孫演じる世代の話は2人の役者の重厚さも相まりまあまあ見せる。しかし紺野と沈の若い世代の話になると役者陣の薄さもあり内容的にもふやけて映画は細っていく。実力者揃いのスタッフだが合作の弊害を純彌では…

SOMEWHERE

★★ 2011年4月9日(土) 梅田ガーデンシネマ1 ガーリー作家の描く「男」の喘ぎの何たる形骸。空っぽバカ男の涙の1人よがりを如何にもと描くソフィアの男を見る眼に人事ながら心配を覚える。シークェンスごとに詠嘆的間合いがあるが空転し詩的でもない。エル…

エスピオナージ

★★★★ 1983年3月12日(土) シネマ温劇 冷戦下のスパイ戦の欧州を舞台に展開する様が、アメリカンドライではなく英仏の呉越同舟的どんより関係を軸にすすみ秀逸極まりない。娯楽職人ベルヌイユの技も冴え駆け引きの応酬は薩夫チック。主要キャスト4人中ブリン…

Swallow スワロウ

★★★★★ 2021年1月5日(火) 梅田ブルク7シアター4 何度か見ていた予告篇から受ける予断は、異物食がエスカレートしてリンチやクローネンバーグ的に不条理に振れていく展開であった。腹の中で釘や押しピンが人体を侵蝕しメタモルフォーゼが始まる、みたいな…

キラー・インサイド・ミー

★★★★ 2011年5月7日(土) シネリーブル梅田1 一定の論理に準拠するかに見えつつ結局何が何だかさっぱりと言うサイコの心理的な綾が微妙だし、中庸だがシャレっぽい語り口も微妙。体を張った2大女優の圧倒的エロスは空転し収束される深淵も無い。描かれるべ…

白いドレスの女

★★★★ 1983年2月9日(水) 伊丹ローズ劇場 新人監督による絵に描いたように巧い50年代「ファム・ファタール」ミステリーの再現に酔うが、オタク的なオマージュに終わらないのは渇いた色気の大女ターナーのプレーンな美貌とド迫力の賜物。それは80年代が纏っ…

死にゆく妻との旅路

★★★ 2011年4月23日(土) 高槻セレクトシネマ2 ブイブイ言わせてるときだと鬱陶しいとしか思えなくとも、クスブって受けに立ち行き場を無くしたときから最上の連れ合いとなる。孤絶した刹那な世界に埋没し破滅へ向かう旅路への仄甘い誘い。後暗い共鳴を覚え…

真冬のスケープゴート

毎日これだけ寒いと悴む指先をさすりながら世を儚む気持ちがいや増すのであるが、俺以上に世を儚んでいる人たちがゴロゴロでてきている中、クダまいてる場合じゃないと気を奮い立たせます。 見上げれば見えるコイツのこと、今まで存在さえ眼中になかったのだ…

ベロニカ・フォスのあこがれ

★★★★★ 1983年5月23日(日) 梅田ロキシー ドイツ版『サンセット大通り』を、光と影の極度なコントラストや技巧の粋を行く多くの小道具等、意識的に刻印された戦前ドイツ表現主義の残滓で縁取り、一方でシークェンスごとの情感は遍く濡れている。更に得意の退廃…

ブルーバレンタイン

★★★★★ 2011年5月7日(土) 梅田ブルク7シアター4 剃刀で切られるような進行形現在に寄り添う長焦点カメラの優しさが寧ろ痛ましい。ラブホ浴室でのピン送りはアイデアではなく必然。敷衍される過去が内包する破綻の萌芽が哀しい。だが、それでも皆生きてい…

愛情物語

★★★★ 1983年3月1日(火) 伊丹ローズ劇場 陳腐化を免れて輝きを持続する奇抜は希なのであって、豊穣な資本に裏打ちされた王道な通俗ドラマは永遠性を保持する。ジョージ・シドニーの奇を衒わない作風と物語に対する確信の強度は並ではない。趣味ではないが認め…

新感染半島 ファイナル・ステージ

★★★ 2021年1月3日(日) MOVIXあまがさき3 祖国が消失し国民が流浪の民となる。「日本沈没」後日譚のような発端。そして、ゾンビたちに占拠された半島にやむなく命じられて舞い戻る「ニューヨーク1997」な設定。 どちらも、大構えな活劇要件を充足…

レインマン

★★★ 2011年5月7日(土) TOHOシネマズ梅田10 疾走する車から見る架橋の光の燦ざめきどまりの娑婆感覚。場当たりなカジノシーンでしか活きない天才設定。投げ棄てられたビジネスの苦境。杜撰な構成が無理矢理お涙で隠匿されそうな不快感。ただ、こんな…

ビッグ・アメリカン

★★★ 1983年3月12日(土) シネマ温劇 既に役者として伝説領域に降り立ったニューマンを皮相的に伝説否定の表舞台に立たせる諧謔がらしいと言えばらしい。停滞しまくる展開は盛り上がらなくもそれこそ意図であったろうが、未だ欠けたのは滋味と余裕。ところどこ…

八日目の蝉

★★★★★ 2011年5月28日(土) 梅田ブルク7シアター3 今更コンセプトの作劇かと思うそばから拡散し逸れていく展開を要所で締める小池や余の重石としての存在の快楽。その役者陣の間隙を貫く若き井上真央の圧倒的スーパークールな佇まいこそ肝だろう。ベタにな…

ない袖ふれません

雇用調整助成金の財源が2020年度で1兆7000億円不足となったらしい。当初予算の35億円に対し助成決定額は2兆3000億、657倍の目眩を通り越して脳内白濁化するしかない数字だ。 月々30万円、年360万円の家計簿でやり繰りする家庭が大黒…

男はつらいよ 柴又慕情

★★★ 1983年3月16日(水) 伊丹ローズ劇場 1992年8月2日(日) 日劇会館 吉永小百合が頑固親爺に悩まされる素直な娘を好演しているものの、素直に相談相手として寅を慕うだけで色恋は何にもない。寅も約束事としてふられては見せるが如何にもとってつけたようだ。…

パラダイス・キス

★★★★ 2011年6月11日(土) なんばパークスシネマ4 抑圧から自立へ向かう少女の葛藤が所詮は受動的であっても、穴が多い構成がマニュアルな感動へと強引に収斂されても俺はかまわない。この怒り、泣き、笑う景子ちゃんの顔面ショーの感動。特に終盤は今の彼…

評決

★★★ 1983年3月18日(金) SABホール ニューマン演じる主人公は当て書きとも言える完膚無きまでの定型キャラであり意外性の欠片もない。その辺が全く物足りないのだがウェルメイドな法廷劇なのだろう。否定する気もないが欲しいのはガツンとくるようなプリミ…