男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【せ】

千年の愉楽

★★★ 2013年3月15日(金) テアトル梅田1 神話的に撮られるしかないはずのサーガなのに、相変わらずにサクサク綴られ若松のやっちゃいました感に苦笑混じりに嘆息。高良の後家との絡みのエロスの片鱗に全盛期の今村級の追い込みを渇望した。血に纏わる物語な…

青春の門

★★★ 1981年2月8日(日) 梅田東映 文太・若山・渡瀬たちが織り成す東映任侠風味の前半が過不足無い安定感で見せ、上昇気流に乗った松坂も情念に母性が加味され良い。2人監督は明らかな時間的制約によるものとしても流石のプロ仕事だと思う。(cinemascape) k…

青春グラフィティ スニーカーぶる~す

★★★ 1981年2月25日(水) 伊丹グリーン劇場 たのきんは掛け値無くバカだったと思うが、バカも使いようであって陽のマッチに陰の俊ちゃんと絶妙な役柄とのマッチングの良さ。バカにしたもんでもない勢いは観客席を埋めた若い女の子たちの熱気にシンクロする。…

0課の女 赤い手錠

★★ 1981年6月3日(水) トーエイ伊丹 戦略的にエクスプロイテーションなわけでなく根っから品性が腐った感があるのは素晴らしいとも言えるのだが、所詮は野田幸男に気の利いた演出を望むべくもなく、その天然ぶりにシラけた笑いさえも消え入る。そういう意味で…

SAFE セイフ

★★★★ 2013年7月27日(土) トビタシネマ ロシアや中国のマフィアに拮抗する3枚目のカードが汚職警官ってのが新味で三つ巴の混沌感をいや増させている。とにかく殺戮への躊躇がなく好テンポで、アクション演出に於ける手持ち長廻しとズームダウンが高度に意…

戦争と人間 完結篇

★★★ 1981年8月7日(金) 日劇会館 三部作の中では一応見所が多い。ノモンハン事件の再現は必要だったのだろうし、当時の日活が成し得る最大限のスケールであったのだろうにしても、つまらない。終末へ向かっての激動の中、夏純子扮する中国人少女の生命力が一…

ウディ・アレンの誰でも知りたがっているくせにちょっと聞きにくいSEXのすべてについて教えましょう

★★★1981年6月21日(日) 池田中央第二映劇 俎上に乗せられたのが数多あるオムニバス形式のイタリア製艶笑コメディだとは推察されるが、充分に咀嚼し薬味を加味して出てきたものとも思えない。要はパロディにもなってないし、ストレートに見るなら大して笑えな…

戦争と人間 第二部 愛と悲しみの山河

★★ 1981年8月7日(金) 日劇会館 軍閥伍代家の悪の枢軸たる面々は後方に退き、良心派の人々の幾つもの「愛」のみに焦点を当て、それが又ステロタイプで且つ素通り的にしか描かれない。表層的に描かれる歴史事変は彼等を翻弄する機能しか持ち得ない。完全な中だ…

戦争と人間

★★★ 1981年8月7日(金) 日劇会館 同じ五味川原作でも東宝色強い『人間の條件』が文芸調なら日活のこれは講談。ハッタリ親爺薩夫節も新劇系の伍代ファミリーにはフィットしてもルリ子や英樹や裕次郎の明朗さとは合わない。大陸浪人の三國は突出した怪演。 (cin…

青春の蹉跌

★★★★ 2019年7月21日(日) シネヌーヴォ 出世の為にハイソなお嬢様と結婚することになって、付き合っている貧乏女が邪魔になる。 シオドア・ドライサーの昔から繰り返されている普遍的な設定でこれを石川達三が小説にした。 達三を読んだことはないのだが、…

ゼロ・グラビティ

★★★★★ 2013年12月28日(土) TOHOシネマズ梅田8 冒頭ワンショットで顛末を見せ切る手法は如何にもだとしても、以降、主人公が2度にわたり弧絶してしまう絶対絶望の表現。我が子への喪失トラウマを絡め黄泉からの誘いの安息を断ち、それでも生きる理由…

戦争の犬たち

★★ 1981年10月5日(月) 伊丹グリーン劇場 1人の「スパイ」や「暗殺者」が歴史の歯車を置き換えるというところにロマンがあるのに「傭兵」が主人公故に頭とお尻に在り来たりなドンパチがあり真中もポリティカルなロジックが窺えない。ただひたすらにウォーケ…

洗骨

★★★ 2019年2月13日(水) 大阪ステーションシティシネマ8 心のこもった良い映画だとは思う。 おそらくこれは、監督の照屋年之ことガレッジセールのゴリが実体験から導いた物語なのだろう。 洗骨ってのは沖縄に続く風習で、死んだ人を風葬にし4年後にまた、…

★★★★ 1980年7月4日(金) 毎日文化ホール クタール撮影のポップとも言えるまでの明晰極まる地中海の陽光の下で又寓意を篭めた仮想国の物語としながら伊映画のような暗黒政治へのプロテストが描かれたことが驚きでさえある。アンビバレンツな魅力に充ちている。…

1999年の夏休み

★★★ 2018年8月18日(土) シネリーブル梅田3 女性漫画家の描いた少年同士の愛憎。 っていえば典型的やおい系で、それに対して門外漢である俺はどうこう言うすべもないのだが…。 そもそも、女性がボーイズラブに興味を覚える心理は不可解である。 だって、自…

セッション

★★★★ 2015年4月27日(月) TOHOシネマズ梅田7 父親や恋人との関係性が放っぽられる腑に落ちなさが3転するクライマックスの怒涛の感情振幅に上塗りされまあええかとなる勢いは好ましい。理不尽な恫喝の釣瓶打ちにズル剥け指を絆創膏で抑えて尚飛び散る血飛…

世界崩壊の序曲

★ 1980年12月9日(火) 伊丹ローズ劇場 島の火山が噴火するだけだってのに「世界の終わり」とは腹が立つを通り越し山師アレンのハッタリに畏敬の念すら覚えてしまう。しかし、そこに「序曲」とつけざるを得ない配給業者の良心の呵責。その苦渋の選択に一抹の希…

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア

★★★★ 2018年3月17日(土) シネリーブル梅田1 前作「ロブスター」は設定自体が捻りまくったものだったのだが、今作はそうではない。 ストーリーのみ見れば、これは至極まっとうなオカルト映画だ。 医療ミスってのも、恨まれる経緯としては在り来たり。 その…

全員死刑

★ 2017年11月23日(木) シネリーブル梅田2 原作未読だし小林勇貴監督の前作「孤高の遠吠」も未見であることを考慮しても、この映画はクズだ。 なんでも、撮る前に塩田明彦の「映画術」を読んだんだそうだが、いまさら、そんなん泥縄で読んでるような奴に撮…

戦艦ポチョムキン

★★★★ 1978年3月26日(日) SABホール フィルムに写し取った被写体が予め持つものだけが意味を持ち得た時代に、断片を組み合わせて意味を構築するという数百歩すすんだ発想。そして、オリジナルは伊達じゃない。教科書的な文法のみでは到底説明し切れない強…

関ヶ原

★★★ 2017年10月11日(水) 大阪ステーションシティシネマ12 駆け足にギュウ詰めに歴史のトピックを連ねていくのはコンセプトとしては有りだと思う。 喜八が「日本のいちばん長い日」で試みたのは正にそれであった。 それの再映画化を監督した原田監督の頭…

セールスマン

★★★★ 2017年6月24日(土) シネリーブル梅田3 冒頭、大がかりなアパート倒壊というハッタリがかまされる。 ただ、以後、そういうケレンは影を潜め、引越しの動機づけとしてしか機能しないのが弱い。 バランスを欠き、いらんかったんじゃないかと思う。 役者…

青春の殺人者

★★★★ 1977年3月18日(金) 阪急文化 1977年11月13日(日) 伊丹ローズ劇場 多分、大島組田村孟脚本はモラトリアムに生き何も成就できず且つ、親達の溺愛に窒息しかかる子供の衝動的解放を弁証的に問うた筈だが、今村直伝の長谷川演出は、ひたすらな細部の精緻さ…