男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【さは~さん】

ハンテッド

★★★ 2003年5月31日(土) 梅田ブルク7シアター5 デル・トロのトラウマは物語を転がすための方便として緩さを黙認しても全編に渡って骨子となる「子殺し」というテーマが何の切実味もなく悲愴感が欠片も感じられない。電車を使ったチェイスの冴えのみが往事の…

ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ

★★★★★ 2022年2月23日(水) MOVIXあまがさき1 映画の骨子は、楽曲「奇妙な果実」を歌う歌わせないをめぐってのビリー・ホリデイと米当局との確執みたいな建て付けだが、そこは案外に淡白だと思う。映画の評価が今一なのはそのへんなのかもしれません。…

THE MOLE ザ・モール

★★★ 2022年2月16日(水) 新世界国際劇場 ポスターの惹句に「この男、ヤバすぎる」とありましたが、俺のもった印象は、「この男、胡散臭すぎる」です。 フェイクドキュなんじゃないかの疑念が拭い難いのだが、英BBCやNHKBSでも放映された作品だそう…

明治俠客伝 三代目襲名

★★★★ 1992年8月16日(日) トビタ東映 受けの芝居では鶴田浩二に敵う男優は居ないと思う。渡世の筋と愛の狭間でのギリギリの煩悶を男ならこう身を処すべしと決めたら迷わぬ潔さ。藤純子とのコンビもしっくりくる。真っ当なドラマトゥルギーに拮抗する美学的加…

三月のライオン

★ 1992年9月13日(日) 扇町ミュージアムスクエア 行き着くところまで行く閉じた世界と言うならそれはそれで結構だが、理想化された奥村公延の爺さんが出てきた瞬間に物語は白日のもとに客体化され一気に醒めた。他者の青い夢想を延々と聞かされるのは苦痛であ…

SAYURI

★★★★ 2006年7月22日(土) パルシネマしんこうえん 少なくとも登場人物としては語り部たる西洋が介在せず日本・京都の中で完結する物語をアジアの看板女優3枚が支配する点、それがハリウッドの潤沢な資本で精緻な再現が試みられた点で2重3重のアンビバレ…

サンシャイン2057

★★★★ 2007年4月21日(土) ナビオTOHOプレックス4 醒めた達観のようなものが全篇を覆っておりながら使命感も併存する世界がクール。規則的に回転する巨大アンテナが深層心理に及ぼす詠嘆と深淵がエフェクトとして効いている。そして、最後の1シーンの…

さらば箱舟

★★★★★ 1991年6月9日(日) 毎日文化ホール 津軽から沖縄へと飛翔した舞台は同一モチーフをリプレイし続けた寺山の表現方法に於ける閉塞世界からの解放を感じさせた。モチーフは変わらないが多くのトリッキーな仕掛けを散りばめた伝承譚的な味付けの一大叙事詩…

サマーフィルムにのって

★★★ 2021年9月5日(日) シネリーブル梅田4 時代劇マニアの女子高生が作る自主映画の話だそうだ。端から胡散臭え〜っとか思ったらダメなんでしょうけど、やっぱウソくさい。 だいたい、監督が主演の男に惚れて恋する乙女になっちまって悶々とか、何やっとん…

サラエボの花

★★★ 2008年1月19日(土) シネリーブル梅田2 疲弊を刻んだ母エスマの表情が多くを語るにせよ、やはり母娘の内面史に迫るには安易であってもトラウマの源泉を見せる必要があったんじゃなかろうか。いずれにせよ、男運無さそうな母を背に娘サラはやがて頚木か…

山椒大夫

★★★ 1991年11月16日(土) 高槻松竹 児童向け教本のような日本版「母を訪ねて」を幾ら豪華装丁で映画化したって、そこに何の新解釈も見られないのでは退屈だし又徒に長い。普遍的な題材故の解りやすさが西洋受けしただけとしか思えない。(cinemascape) keniron…

サルート・オブ・ザ・ジャガー

★★ 1990年5月27日(日) トビタシネマ 創造された独特の世界観はミニマムながら多少認めるものもあるが、所詮ハウアーにせよジョアン・チェンにせよ本物とは言えない付け焼き刃の体技で迫真性が無いこと甚だしい。物語も地味に淡々と進むだけの単線構造で何の…

ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト

★★★★★ 2008年12月19日(金) TOHOシネマズ梅田4 キースは代替不能なキャラだがミックの地平は数億光年超えてる。60代の爺いがケツ振り20代の「スタート・ミー・アップ」を歌う凄さ。一方、これは琥珀の映像の珠玉の宝石箱。9割ストーンズに負うが…

ザ・ファブル 殺さない殺し屋

★★★★ 2021年6月18日(金) 梅田ブルク7シアター7 1作目に比べて格段に良いと思います。 て言うのは、主人公の環境説明とかグダグダする必要がないので展開がタイトになるし、出演者たちも役が馴染んで熟れてくる。前作でスベリまくりに思えたギャグも今回…

3時10分、決断のとき

★★★★★ 2009年8月31日(月) シネリーブル梅田2 匙加減が良いのだ。情に流されれば胡散臭いが、折にふれて非情に棹さす。黴臭いオールド・ウエスタンの復刻を何の衒い無く高度な愚直さで貫徹したマンゴールドはやはり買いだろう。又、役者が完膚無きまでに皆…

サマーウォーズ

★★ 2009年9月1日(火) 梅田ブルク7シアター1 誇大妄想狂の戯れ言みたいでかなり気色悪い。肉を切られ血の海でのたうつことでしか暴走するシステムという今更設定にはケリをつけてほしくない。お茶の間のキーボード早打ちで鼻血ブー如き生温さが世界を救う…

サブウェイ123 激突

★★★ 2009年9月12日(土) 梅田ブルク7シアター5 バブル崩壊後の残滓を湛えたムードが傑出しており、且つマジ本線途上での脱力会話ギャクも冴える中、プロット丸々ギャグ化する身代金輸送プロセス。ヘルゲランド冴えとると思う端から電車暴走と主役対峙のコ…

さよなら子供たち

★★★★ 1989年6月17日(土) セントラル劇場 主観的で情緒的な物語が終盤に視線が客体化され、それまで背景にいた大人達が物語の前面に出てくる構成に感銘した。居たたまれない悔悟の念を追慕するに終わらず、怒りと尊厳とを物語に付加し得ているからだ。こうい…

さまよう刃

★★★ 2009年10月16日(金) 梅田ブルク7シアター1 見飽きた題材を取り上げるに、こうも今更のアプローチしか無いのだろうか。沈鬱な好演だと思うが竹野内の葛藤は「今」のライン上には立ってない。何時までも良識派を気どるマスメディアの走狗では仕方ない…

さよならゲーム

★★ 1988年10月16日(日) 新世界劇場 ロートル爺さんが若手を導くという話なら解るが、壮年期のおっさんがマイナー世界に耽溺し、くすぶり人生で自己愛に浸るという物語が心を射よう筈もない。それを、知ったような顔して悦に入るコスナーのナルシズムが上塗り…

サボテン・ブラザース

★★★★ 1987年5月31日(日) 友楽スカラ座 日本で言うなら「旗本退屈男」や「桃太郎侍」とかがガチなリアルワールドに放り込まれたらどうなるかという目新しくもない題材を律儀にご丁寧に作っているのが愛おしい。50年代ボブ・ホープやダニー・ケイの喜劇のテ…

サンドラの小さな家

★★★ 2021年4月19日(月) 大阪ステーションシティシネマ8 シングルマザーが親子で住めるまともな家を希求して一念発起、独力で家を建てちゃう。的な絵空事ムービーでないのはいいんですが、結局は何から何まで人様のおかげやんか。ってのもまあ、人の善意っ…

サンダーアーム 龍兄虎弟

★★★ 1986年9月28日(日) 友楽スカラ座 秘宝とか邪教とか手垢つきまくりの題材をジャッキー流にアレンジしたところで垢は落ちないのであって、柔な歌手アランとのコラボでは共闘戦線的妙味も欠如。何よりジャッキー演出が緩くて好きじゃない。(cinemascape) ke…

ザ・ロード

★★★ 2010年7月9日(金) 梅田ガーデンシネマ1 絆と言う他ない父子の相互信頼と愛を直裁に謳うことに意義があると認めつつ、余りに他に何の新味もないことに戸惑う。語り尽くされた事後の世界観だが、愛妻の記憶を、又自らの生への我執を断ち次世代へ継承す…

さびしんぼう

★★★ 1985年9月15日(日) 阪急文化 小綺麗にまとまってはいるが、富田靖子に典型的美少女と道化の2人の「さびしんぼう」を演らせたのが意図的に不純なものを感じるし、無意味な混乱を持ち込んでいる。作り手が自己陶酔した世界についていけないものを感じる。…

サバイバル・オブ・ザ・デッド

★★ 2011年2月12日(土) トビタシネマ ロメロはゾンビについて何らかの命題を解こうとしてるのだろうが全く関心を持てない類のものなのだ。広大な本土から渡海して島へという舞台設定の映画的推移や『ロリ・マドンナ』的ご近所紛争話も何ものをも喚起せずに…

ザ・ファイター

★★★★★ 2011年4月9日(土) 梅田ガーデンシネマ1 彼女は彼氏に、妻は姑に、弟は兄貴に、皆腹に溜めた蟠りを吐き出す物語であり、それが人間関係を壊すのでなく礎となり相互信頼を築いていく。これは理想郷。遠慮と躊躇が支配する多くの都市型コミューンが崩…

SOMEWHERE

★★ 2011年4月9日(土) 梅田ガーデンシネマ1 ガーリー作家の描く「男」の喘ぎの何たる形骸。空っぽバカ男の涙の1人よがりを如何にもと描くソフィアの男を見る眼に人事ながら心配を覚える。シークェンスごとに詠嘆的間合いがあるが空転し詩的でもない。エル…

ナチ卍第三帝国 残酷女収容所

★★ 1983年3月12日(土) シネマ温劇 残酷な人体実験が身体的トラウマに起因するという解りやす過ぎる展開が興を削ぐ。もっと訳の解らない人間本来の残虐嗜好を表出させるべきであろう。おそらく『愛の嵐』がもたらしたのであろうC級派生商品の1本だが被嗜虐…

さや侍

★★★ 2011年6月11日(土) なんばパークスシネマ5 筒井的とも言える弛緩したシュールレアリズムからお手盛りのギャグ展覧会(これも前2作の方が笑える)へ至るあたりは良いのだが、終盤はアナーキズムが消失し一気に迎合世界に安住してしまった。それならヘ…