男の痰壺

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ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ

★★★★★ 2022年2月23日(水) MOVIXあまがさき1

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映画の骨子は、楽曲「奇妙な果実」を歌う歌わせないをめぐってのビリー・ホリデイと米当局との確執みたいな建て付けだが、そこは案外に淡白だと思う。映画の評価が今一なのはそのへんなのかもしれません。

 

恥ずかしながら、ビリー・ホリデイ聞いたことありません。だから、演じるアンドラ・デイの歌唱が似てるのかどうなのかは判る由もないんですが、それでも元々の彼女のタレントが声質を近づけつつもモノマネ芸に留まりきれない圧倒の破砕力で迫ってくる。

「こ、これは…まるで、美空ひばりやー」

美空ひばりも、そんなにちゃんと聞いたことないのに、皮相にもひばりは偉大だったーとか倒錯した感慨が俺を包むのであった。

 

監督のリー・ダニエルズは「ペーパーボーイ」の爛れ切った澱みの一方で「大統領の執事の涙」みたいな一片の汚れもない作品も撮る。喰えない野郎だと思っていたが、ビリーの死までの数年間のヘロイン塗れの疲弊を撮って感情移入の欠片も見せない。なんだか今村が昆虫を観察する視点でパンスケの生涯を撮ったみたいな抜けた明るさがある。

 

この映画は、アンドラ・デイの力演とリー・ダニエルズの演出を見れば必要充分に思えるのです。

 

アンドラの声質を寄せつつ尚圧倒の破砕力を持つ歌唱が遥か時空を超えて我がひばりと連結。憑依が捨て身を多元化する。演出は彼女と当局との確執を深押ししない。薬塗れの疲弊の数年間を感情移入抜きで描くそれは優れて今村的な突き放しで開放的。(cinemascape)

 

 

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