男の痰壺

映画の感想中心です

2018-01-01から1年間の記事一覧

きみの鳥はうたえる

★★★★★ 2018年10月18日(土) テアトル梅田1 個人的に現況では「素敵なダイナマイトスキャンダル」を抜いて本年邦画ベストと思う。 映画を見ていて最初の数ショットで「この映画は傑作なんじゃなかろうか」と思えるときがある。 だいたいそういうのはカメラ…

海を感じる時

★★ 2014年10月6日(月) テアトル梅田1 私は如何にして愛されてもいない男に体を与え続けたか…という言い訳を酔った席で延々聞かされてるようなもんで、そんなもんは所詮は解るわけなく解りたくもないのだ。荒井は『アデル』を擬えるが狂気の淵にさえも行か…

暗くなるまで待って

★★★★ 1974年12月22日(日) 伊丹グリーン劇場 歩道から玄関を入って居間が階下にある構造が主人公の盲目と相俟り外部からの孤絶感を増幅する。地味な衣裳で茶目っ気を封印したオードリーは皮相にも美しさが倍加。加齢の疲弊も役者魂の発露と見える。平板な演出…

お茶漬の味

★★★★★ 2018年10月18日(土) シネヌーヴォ 小津の映画を観るのは数十年ぶりです。 4Kデジタルリマスター版とか称してるけど何ほどのもんでもない。 て言うか音ずれしとるやん、舐めとんのか! 大体やねえ、デジタルリマスターとか恰好つけて言ってるが、そ…

舞妓はレディ

★★★★ 2014年10月6日(月) TOHOシネマズ梅田7 エッジ効かせるなんて野暮どすえと言う映画内コンセプトを作劇にも応用したか知らんが絶妙の緩さ。萌音ちゃんの垢抜けし行く様は本家を遥か凌駕しオジサンの萌え心を擽り、スペイン平野は京都盆地に時空を…

★★★★★ 1980年12月25日(木) 梅田東映ホール 16ミリブローアップによる痴漢シーンの即物感に対し後半の軍艦島のスタティックな叙情。閉じた世界で煩悶する魂を高田昭の撮影と一柳慧の音楽がバックアップし開放に導く。被写体を周囲の状況から切り取り凝視し…

クレイジー・リッチ!

★★★★ 2018年10月6日(土) 大阪ステーションシティシネマ7 セレブの恋愛沙汰なんか真っ平御免だし見たくもないのだが…見てみりゃ、おもしろいでやんの。 やっぱり、ハリウッド映画ってのは脚本で徹底的に練り込むんやろね。 そういうプロデューサーがごまん…

ファーナス 訣別の朝

★★★★ 2014年10月12日(日) MOVIXあまがさき2 「行くか叔父貴」「うむ」と阿吽の呼吸の後『残侠伝』的破綻へは向かわぬところが美点でもあり糞詰まり的でもある。『ディア・ハンター』ライト版な展開も既視感バリバリだが、それでも素晴らしい。最高な…

メル・ブルックス 新サイコ

★★ 1980年7月16日(水) 伊丹グリーン劇場 本気汁で撮られた映画をパロるのなら本気で撮ってパロって欲しい。思いつきのアイデアを弛緩した適当さで見せられ続けるのは苦痛。「B級西部劇」や「怪奇映画」に対する程には強固な愛がヒッチに対しては無かったっ…

散り椿

★★★ 2018年10月6日(土) 大阪ステーションシティシネマ3 木村大作について名カメラマンという表記を見るにつけ、ほんまいかいなと思うのである。 彼は70年代の大作ブームに乗っかって重宝されたわけだが…。 「八甲田山」では過酷な冬山での撮影を貫徹し…

悪童日記

★★★★ 2014年10月7日(火) TOHOシネマズ梅田6 ナチ支配下の東欧で状況を見つめる双子の冷視線は否応なく『ブリキの太鼓』のトリックスター少年オスカルを連想させるが、言うほど弾ける訳でもない。真摯な作風は原作への遠慮の裏返しとも言え、それは映…

ブリット

★★★ 1980年7月18日(金) 毎日文化ホール 寡黙すぎるマックイーンからは怒りや執念よりもナルシズムが匂い立ってかなわん気がするし、残念ながらカーチェイスは風化してしまっている。しかし、フレイカー撮影の鋭角的なショットの連続はスタティックな怜悧さを…

民衆の敵

★★★ 2018年10月6日(土) プラネットスタジオプラスワン 開巻すぐ、写真つきで登場人物がクレジットされるのだが、ちょっと珍しい。 しかし、それでもどうやろか、これはジャンルのオリジナルではあるんだろうが矢張り単線構造の物足りなさは否めないように…

ザ・シークレット・サービス

★★★★ 2014年10月19日(日) トビタシネマ ダラスに於けるトラウマが一応捨て身の横っ跳びで回収されるが、その部分は全然本気じゃない。ピアノ弾きつつ女口説き、結構しつこく追い回す親爺をイーストウッドが水を得たように快演。ジャッカルばりに八面六臂の…

ルナ

★★★ 1980年8月5日(火) ビック映劇 親と子の不寛容がもたらす絆の断絶を月は黙然と見おろすだけ。そういう諦観の果ての悟りは冷たい光に包み込まれる。採光を操るストラーロの撮影が圧倒的。だが、オペラにせよ近親相姦にせよクレイバーグと親和性がなく無理…

イコライザー2

★★★★ 2018年10月4日(金) 大阪ステーションシティシネマ12 ジャンルのエッセンスを寄せ集めた代物で新しいことは何もないとも言える。 前作でクロエ・モレッツが演じた役どころは、今回は黒人少年。 これを演じるのがアシュトン・サンダース。「ムーンラ…

小野寺の弟 小野寺の姉

★★★ 2014年10月25日(土) MOVIXあまがさき7 彼女の心を斟酌できぬ遮眼帯弟と同タイプ男に翻弄される姉という閉じた世界の救われなさに本気で向き合うことなく流され已む無しとするのは映画処女作としてこの監督どうなのよと思う。表現的にも見所も無…

ねえ!キスしてよ

★★★★★ 1980年8月8日(金) 毎日文化ホール 計り知れないコード横溢の時代に間隙を縫ったキワキワ感がソソる。インモラリストワイルダーのチャレンジ精神の歪な輝き。ウォルストンの地味さが徒花に徹したノヴァクを輝かせる皮肉。代役の代役マーティンの当たり…

1987、ある闘いの真実

★★★ 2018年9月27日(木) シネマート心斎橋1 ナ・ホンジンの2作(「チェイサー」「哀しき獣」)で主演をつとめたキム・ユンソクとハ・ジョンウの3度目の対峙作。 なんて見方は、本質からずれているのだろう。 それでも、この中盤でほとんど消える検事のジ…

タイタンの戦い

★★ 2014年10月19日(日) トビタシネマ ガキの喧嘩にしか見えない神々VS神々VS人間の諍いの底浅が舐められた感を煽り立て不快だ。『シンドラー』俳優2人の対峙はギャグにさえ成り損ねる。巨大サソリと蛇女とタコ怪獣出しときゃ充分やろ的製作者の高慢は…

刑事マルティン・ベック

★★★ 1980年11月26日(水) 毎日文化ホール エモーションは日常に埋没しヒロイズムはもとより存在しない。それでも事件は起こるし、刑事たちは黙々と捜査をすすめる。低温なのにニヒリズム無縁の世界からは謳われるべき情念は滾れ落ちる。この無為性は悪くもな…

響 HIBIKI

★★★★★ 2018年9月23日(日) MOVIXあまがさき1 月川翔という監督の「君の膵臓をたべたい」は見てるが、正直、凡庸な印象しかなかった。 でも、これは見違えるように良い。 差釣りが鍋島淳裕に変わったのが大きかったと思う。 持てる者と持たざる者の話…

清水港の名物男 遠州森の石松

★★★★★ 2014年10月11日(土) 新世界東映 「恋する」ことの喜びを全篇むしゃぶり尽す展開で、これを明朗な錦之助口跡で謳いあげられる嫌味無さが心地よい。花街一夜の翌朝の猿芝居な至芸。近江での志村一世一代の名演。長谷川裕見子鉄火肌の点睛。マキノ流山…

無防備都市

★★★ 1980年8月31日(日) SABホール 作り込んだと思しきドラマトゥルギーはアンナ・マニヤーニのシーンを除くと実は発露にさえ至っていない。解放直後のエモーションとリアルな風景と制約から生じた既存文法の破壊。それらは戦略的に付与されたものではなか…

ザ・プレデター

★★★★ 2018年9月18日(火) 梅田ブルク7シアター3 なんやろかね、これは。 って言うのはジャンル映画としての評価が低いのはわかる気がするからだ。 そもそも、俺はプレデターって映画館で見たのは「エイリアンVSプレデター」のみですから。 (初作はTV…

イコライザー

★★★★ 2014年11月6日(木) 大阪ステーションシティシネマ11 全ての男どもが思い描く夢の最大公約数を具現化するに全く躊躇せず工芸品を愛しむように丹念に磨き上げられた世界。この微妙な過剰さの匙加減がフークワの特質だろう。終盤のそこまでいっちゃう…

ロッキー2

★★★★ 1980年9月22日(月) 伊丹グリーン劇場 初作の成功を受けつつも未だ清新な気持ちを保ちつつで望んだであろう本作。どん底の寂寥感は消失したが予算は増えて終局へのカタルシスは倍加した。ファイトシーンの圧倒的質量感。スタローン御自らの演出も過不足…

愛しのアイリーン

★★★★ 2018年9月17日(月) 大阪ステーションシティシネマ5 原作未読…っちゅうか、ここ20年くらい漫画読んでません。 であるから、この展開の転がり方に驚いた。 吉田恵輔監督の「ヒメアノ~ル」の印象があって、狂気の予断があったのかもしれない。 確か…

ニンフォマニアック vol.2

★★★ 2014年11月6日(木) テアトル梅田1 大風呂敷を広げた挙句、結局はありふれた物語性に帰依するしかないという馬脚を現した。白黒・SMと、らしいネタを点描してみせるのだが一応の域を出るものでもない。トリアーは病気なのかもしれぬが変態ではないの…

港町紳士録

★★ 1979年8月4日(土) ダイニチ伊丹 衝動も激情も悲嘆も全て「人情」世界の微温で塗り固める松竹伝統の呪縛に捕らわれ毒にも薬にもならないヘタレ作を連作した70年代『男はつらいよ』併映作の中では捻らず直線構造な分マシな方かもしれない。吉幾三がアクが…