男の痰壺

映画の感想中心です

お茶漬の味

★★★★★ 2018年10月18日(土) シネヌーヴォ
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小津の映画を観るのは数十年ぶりです。
4Kデジタルリマスター版とか称してるけど何ほどのもんでもない。
て言うか音ずれしとるやん、舐めとんのか!
大体やねえ、デジタルリマスターとか恰好つけて言ってるが、それって北斎の版画を写真に撮って展示してるようなもんで、その写真の画素がどうだってのはどうでもいいやって話でね…。
 
映画は良かった。
これは、「麦秋」と「東京物語」の間に位置するのだが、原節子は出てないし笠智衆はパチンコ屋の親爺という脇役です。
しかも、セルフリメイクらしい。で、そのオリジナルも観ておりません。
であるから良かった…のかもしれません。
 
途中までこれは「東京暮色」に匹敵するダークサイドに振れた作品かと思っていた。
だが、彼は帰ってきた。
延々と続く夜食のシーンが小津らしくない歪さを発散する。
でも、ここが勝負という確信が長さを緩ませない。
 
「鈍感さん」と彼は揶揄されるが、数年前に老作家が「鈍感力」とういう本を上辞した。
読んでないが、なんとなくそやろねと思うのだ。
だって、鈍感装わないとやってられないもんです。
夫婦なんて。
 
有閑主婦連の言いたい放題が炸裂する前半が乗りに乗る台詞の応酬と微妙な間合い繋ぎで息をもつかせぬところ転調してダークサイドへ流れ込む。足るを知らぬ木暮の突き放した描写。しかし終盤の長い夜食の顛末は小津の計算を超え常道な収束を補完する。(cinemascape)