男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想

燃えつきた納屋

★★ 1974年12月22日(日) 伊丹グリーン劇場 ヴィエルニーに捉えられた雪に閉ざされた閉塞感と凍えそうな寒々しさは良く出ているものの、劇的な起伏まで閉塞されては映画まで寒々としてしまった。結局、ドロンVSシニョレのキャスティング1点頼りで、それ以上…

長屋紳士録

★★★★★ 2024年3月3日(日) シネヌーヴォ 「晩春」以降の小津作品は大方見ていると思うのだが、戦前・戦中・戦後すぐあたりのはそんなに見ていない。これは、大戦から復員した小津の復帰作だそう。どうかと思ったが紛れもない傑作だった。 後期の作品は娘の縁…

犯罪都市 NO WAY OUT

★★★ 2024年2月26日(月) 大阪ステーションシティシネマ6 シリーズ3作目らしいが前2作は見てません。そもそもマ・ドンソクが主演の映画って「悪人伝」くらいしか見てない。まあ、あれも完全なピン主演ではなかったすけど。 格闘家出身ってことで鉄拳での…

大砂塵

★★★ 2016年10月9日(日) プラネットスタジオプラスワン 四角関係のようなものを描いてるのだが妖怪化する直前の女2人に色気もクソもなく全然そそらない。男勝りの鉄火肌にも成り切れぬので野郎どもは唐変木の烏合の衆と化する。山間でやたら爆発が起こった…

ペイ・ザ・ゴースト ハロウィンの生贄

★★ 2017年1月23日(月) 新世界国際劇場 ドイツの監督のウーリー・エデルは80年代にちょい脚光を浴びた。 「クリスチーネF」と「ブルックリン最終出口」が有名だが両方見てません。 ただ90年代に渡米しマドンナ主演で「BODY」を撮った。 これは見た…

フェリーニの道化師

★★★★ 1977年12月11日(日) 元映 1980年5月11日(日) SABホール 少年時代の回想は『アマルコルド』へ、監督自身が登場するフェイクドキュは『ローマ』へと伸延されて結実する。幼少時の記憶の中の残像は得てして主観に装飾された虚像なのだ。これは老いて消…

沈黙 サイレンス

★★★ 2017年1月22日(日) MOVIXあまがさき3 彼がそれを踏む。 映画はその瞬間に全てのエモーションが集約するようには作られていない。 神の在・不在を自問自答し煩悶するということ。 それは、虐殺される多くの島原の隠れ切支丹たちの姿と密接にリン…

落下の解剖学

★★★★ 2024年2月25日(日) MOVIXあまがさき4 カンヌでパルムドールってことで何か斬新なアイデアが呈されたのか思ったらそういうことではなかった。物語の構造はオーソドックスといっていい。それを2時間半かけてじっくり丹念に描いている。 【以下ネ…

TOO YOUNG TOO DIE! 若くして死ぬ

★★★★ 2016年7月10日(日) MOVIXあまがさき7 さして感心も出来ぬ狂騒でいっそ主役2人をヨッちゃん・ROLLYとでも総とっ替えでもすりゃよっぽど地獄らしい。が、男が彼女に対してしたこと・しなかったことへの悔恨が無限連鎖するロマンティシズムはゴン…

ひまわり

★★★★ 1976年5月30日(日) 阪急文化 1976年8月3日(火) SABホール 序盤の笑劇的導入が温いなりに効き悲劇への転調を際立たせる。絶望の中から見出した微かな希望を胸に1人行く異国。沈む気持ちに突き刺さる広大な向日葵畑と煽情的音楽は大向うを唸らせるこ…

64 ロクヨン 前篇

★★★★ 2016年6月5日(日) MOVIXあまがさき9 男が理のないことを通せざるを得ないとき、すり替えギリで搦め手から感情論でゴリ押しに突破する様を真正面から描く。映画は仕方ないことだと共感を漲らせている。警察機構のヒエラルキーと摩擦を多くの顔に味あ…

サボタージュ

★★★ 2017年1月14日(土) プラネットスタジオプラス1 技法の突出はさほど無い。 しかし、越境感は半端無いと思う。 テロルは怨嗟や怒りに根差さない。 ただ騒乱を起こすためにある。 子供は死なないというコードは知ったこっちゃない。 当たり前に木端微塵…

パリは燃えているか

★★ 2024年2月23日(金) プラネットプラスワン オリジナルが3時間なのに対して見たのは2時間半の短縮版、フランス語版がベターだろうが英語版、おそらくシネスコだったろうがスタンダードへのトリミング版、と満身創痍のものを鑑賞したってのを割り引いて…

一月の声に歓びを刻め

★★ 2024年2月19日(月) MOVIXあまがさき1 このわけわからなさは何やろかと三島有紀子のインタビュー他読んでみたんですが、自身が幼少期に受けた性被害がテーマの根っこにあるらしい。そういうことを公にして作品を作る決意には並々ならぬものを感じ…

ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅

★★★★ 2017年1月15日(日) MOVIXあまがさき8 マニュアルライクな代物と高を括っていた。 なんせ俺は「ハリー・ポッター」だって1本も見たことない男なのだ。 でも、素直にハリウッドの誠心誠意の本気汁が注力された本作に平伏します。 30年代と思し…

おかしなおかしな大追跡

★★ 1976年5月16日(日) SABホール スラプスティックはシテュエーション・コメディより難易度が高いことをマザマザと見せつけられる。命を張らんばかりの芸のみが感銘を与え得るのに坊ちゃん嬢ちゃんのママゴト芸を頭でっかちが撮ったって小賢しさしか覚え…

日本で一番悪いやつら

★★★★ 2016年7月16日(土) 梅田ブルグ7シアター5 文太・松方あたりで散々やり尽された物語の焼き直しだし、綾野も成り上がり演技が『新宿スワン』とかぶる。ただ、上場企業から振り込めサギまで日本 風土に遍く蔓延する「成果主義」という怪物を徹頭徹尾フ…

シェルブールの雨傘

★★★ 1976年8月3日(火) SABホール 浪花節だよ人生は的な物語を情緒メロメロの歌曲でビショビショにまぶしてくれるので息苦しい。本来小ネタで繋ぐ挿話も歌で綴られ身に沁みない。ストーリーを今更に読み返して見るといい話なのだがストンと落ちないのだ。…

ネオン・デーモン

★★★ 2017年1月13日(金) 大阪ステーションシティシネマ2 成り上がりモノとしての体裁を保っている前半は演出も硬質にエッジが効いており良いのだが、後半、構成上の破綻が演出も浸食しグダグダ感が弥増す。 もちろん、意図された破綻なのだろうとは思う。 …

ルーム

★★★★ 2016年7月23日(土) 新世界国際劇場 映画は男を放逐しガン無視する。ひたすらに母息子に寄り添い寡黙だが真摯な視線で見守り続ける。そういうスタンスが心から的確と思う。色々あっても子はやがて母親を乗り越えていくだろう。理解と成長が世界を変容…

ミニー&モスコウィッツ

★★★★★ 2024年2月12日(月) プラネットプラスワン 【ネタバレです】 前代未聞の卓袱台返しが呈される。最初は唖然として、次にざけんなと腹が立ち、でも何日かしてカサヴェテスの全てを肯定する包容力に平伏す思いに至った。 例によってしんどい状況が繰り広…

犬神家の一族

★★★ 1976年11月16日(日) 伊丹ローズ劇場 泥々の因縁話を欲の皮の突っ張り合い程度で茶を濁した感があり本質は遠ざかる。ジャパネスクと崑テクの融合はコンセプトは明快だが、腐乱死体の湖中ショットや金田一閃きの3連繋ぎなど冴えた断片が馴染みきれてない…

皆さま、ごきげんよう

★★★ 2017年1月14日(土) テアトル梅田2 ドリフのコントのようでもあるしシュールな寸劇がブニュエルの「自由の幻想」のリニューアルバージョンのようにも見える。 特に安い中世挿話から展開するのが意識的なのか?。 概ね映像主義的作風からは遠い。 相当…

夜明けのすべて

★★★★★ 2024年2月15日(木) TOHOシネマズ梅田9 「ケイコ」に続いて又もや何らかの生きづらさを抱えた者たちの話かいな、三宅唱は才能あんねんから題材の方向性を何某かに偏向していってほしくないなー、と一抹の懸念をもって見たのだが、それでもやはり…

バルカン超特急

★★★ 2024年2月5日(月) プラネットプラスワン イギリス時代のヒッチコック作品としては圧倒的高評価を得てる作品みたいだが、設定が全てであって、画面内に映り込んだものが物語を離れ自走しだして意味を帯びるような後期作品の絶対性には遠いと思いました…

ちはやふる 上の句

★★★ 2016年4月19日(火) TOHOシネマズ梅田6 可愛く元気でちょいドジという少女漫画の鉄板キャラを広瀬すずが見物とさえ言える熱量で演じるが、それでも尚ルーティンで退屈。カルタなのにスポ根もどきの作劇構成も『シコ』・『ピンポン』といったジャンルの…

続 青い体験

★★ 1976年8月21日(土) 伊丹グリーン劇場 どうにも慎みというものがイタリアン小僧には無いので、生さぬ恋の暗い情念などが発生しようもなく、大体モモ如きボンクラが両手に花の美味し過ぎる環境に置かれるのは映画とはいえ理不尽に過ぎる。その物語的怠惰を…

アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場

★★★ 2017年1月14日(土) 大阪ステーションシティシネマ2 終盤でテロリストの機関銃搭載のジープが爆撃後の現場に通りかかる。 瀕死の少女を抱えた両親が懇願し彼らは機関銃を降ろし少女を運ぶ。 辛うじてのニュートラルな描写だと思った。 言うたら、こん…

獣は月夜に夢を見る

★★★ 2016年7月23日(土) 新世界国際劇場 ジャンルムービーとして新しい見どころは取り立てて無いのだが北欧の漁村の寒々しい風情が良い。特に地場の水産加工場を主舞台とした点で虚構は生臭いリアリズムを足掛かりに土着的なフォークロワへと近似する。主演…

ジーザス・クライスト・スーパースター

★★★★★ 1976年8月29日(日) 元映 1980年5月21日(水) 関西学院大学学生会館大ホール 魂の相克と言うに偽りないソウルフルシャウトの連続で「今宵やすらかに」を筆頭に感涙ものの名曲揃いだ。演出はアイデアに富み歌詞イメージを時空を超え延伸させる。キャステ…