男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【な】

浪花の恋の物語

★★★★ 2012年3月24日(土) 新世界東映 戯作者の近松を顛末ウォッチャーとして置いた脚本に大して効果を見出せないので、『近松物語』や『曽根崎心中』の劇的純度には劣ると感じてしまう。ただ、劇場や郭のオープンセットの贅には惚れ惚れし、それを支配する…

ナイトホークス

★★★★ 1982年3月12日(金) シネマ温劇 髭面が更に暑苦しいスタローンと怜悧なハウアーのカットバックな展開が小気味良いまでに決まった前半の出来は注目に値する。脚本の妙を新鋭マムルースの押さえた演出が倍加させる。ただ後半の個の対決への収斂は世界を矮…

楢山節考

★★★ 1982年9月16日(木) 池田中央第一劇場 遣る瀬無い悲劇味を中和しようとして木下恵介が用いた底浅な様式性がどうにも中途半端で柄じゃない感が横溢している。何だか民芸の舞台でも見てるようで興醒めだ。平易なリアリズムで押した方が底知れぬ悲劇性はより…

夏の秘密

★ 1982年9月19日(日) 伊丹グリーン劇場 たのきん映画ヒットの夢よ今一度と少女版3人組パンジーで勝負に出た東宝。って言うほど勝負したとも思えないダラな出来。まあ、たのきんみたいな白痴的能天気さを持ち合わせていない普通少女パンジーちゃんたちにはこ…

ナオミ

★ 1981年1月13日(火) 毎日ホール ウブな設定のナオミは到底ウブには見えず、又財と知性を付与されたとされるナオミも全然そう見えないという、どっちに転んでも見るべきもの無しであるなら、どうしてこんな出涸らし題材に触手を伸ばすのか。媚びた姿勢と時…

ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密

★★★★★ 2020年1月31日(金) TOHOシネマズ梅田9 監督ライアン・ジョンソンがアガサ・クリスティに捧げた作とのことであるが、「オリエント急行殺人事件」と「ナイル殺人事件」を映画で見た程度の俺には有難味がわかんない。 ではあるが、これはミステリ…

流されて…

★★★★ 1981年3月16日(月) 梅田コマシルバー システムに順応していても環境変われば瞬く間に適応するポジティヴな本能。見事に図式的ストーリーだが、笑っちまうくらいの明け透けが堪らない。安いズーム使いの醸す大らかな余裕とシニカルで饒舌な批評観。こ…

嘆きのピエタ

★★★★ 2013年6月24日(月) 梅田ガーデンシネマ2 醒めた憎しみを滾らす子と母の予断を許さぬ展開が、近代化が崩壊し行く世相を背景に錯綜と混沌のスパイラルを形成するかに見えた前半。しかし、「愛」を肯定する胡散臭さで一気にトーンダウンする。それが理…

謎解きはディナーのあとで

★★★★ 2013年8月20日(火) 大阪ステーションシティシネマ9 汚点とさえ思われたTVでの役との遊離も、劇画に平伏したクソ演出が功を奏し真面目に見る気を萎えさせマイナス二乗で吉と出た。この緩く賑々しいお祭り気分こそ正調昭和お盆映画の復刻。赤いドレ…

なんとなく、クリスタル

★★ 1981年6月1日(月) 伊丹グリーン劇場 浮気したけどバレなかったよーん的形骸化したものしか残っていないから耐え難い。時代を撃つなり身を委ねるなりをしなければ意味を成さない企画。アイデアも同時代感覚が欠如した松竹の老害体質の露呈。せめて東宝な…

嘆きの天使

★★★★ 2019年11月17日(日) プラネットスタジオプラス1 子供の頃にTV放映で見て、トラウマになるくらいの衝撃を受けた記憶がある。 それから随分と歳経てどうやろかと思ったが、サディスティックなまでの甚振りと嗜虐の怒涛の流れは、まあ、そこに特化し…

夏の終り

★★★★★ 2013年9月14日(土) テアトル梅田2 『浮雲』ほどの虚無感はないが、激情を押し殺し惰性に覆われた無為な年月を描いて細緻である。坂のある三叉路の古式ゆかしい舞台的使用。仰角アングルのパノラミックな多用。満島の毛穴や鼻汗を際立たせるデジタル…

凪待ち

★★★★★ 2019年7月12日(金) TOHOシネマズ梅田5 白石和彌のことを俺は基本的に買っているのだが、売れっ子監督になってバカスカ撮ってダメになるんじゃないかと懸念している。 これは、そういった彼の作品のなかでも、何か傑出したものではないかもしれ…

七つの会議

★★★ 2019年2月5日(火) 大阪ステーションシティシネマ1 野村萬斎の能の形式がどうしたってにじみ出る時代がかった大芝居に期待するものがあった。 俺は「柳生一族の陰謀」って映画での萬屋錦之助の大芝居が好きで、まわりの役者の日常的な芝居とまったく噛…

ナポリの饗宴

★★★ 2019年2月2日(土) シネヌーヴォ 子供のころに読んだ佐藤忠男著「世界映画一〇〇選」っていう本があって、あまりに繰り返し読んだもんだから、そこに選ばれた100の映画に俺は敏感に反応してしまう。 本作も選ばれており、佐藤先生褒めまくっておりま…

泣き虫しょったんの奇跡

★★★★ 2018年9月8日(土) TOHOシネマズ梅田4 らしくない映画やなと思ったら豊田利晃は奨励会出身のバリバリの棋士出身だそうな。 本当に意外であって、石井岳龍の次世代のパンキッシュ映画の担い手という印象があったから。 だって、平気で新井浩文を直…

ナイル殺人事件

★★★★ 1979年1月2日(火) OS劇場 クスブリばかりを集めたかのような2線級オールスター2番煎じものと思って期待もしなかったからだろうが、シネスコスクリーンに映えるエジプトの大景観は正に映画の醍醐味をもたらした。ジャック・カーディフの映画と言って…

ナインイレヴン 運命を分けた日

★★★★ 2017年12月16日(土) 新世界国際劇場 今更感がある題材に今更感のある役者。 食指がわかない映画なのだが、存外に良い。 それは、9・11という題材におんぶにだっこじゃないからだ。 ビル内のエレベーターに閉じ込められた5人の確執は、よくあるヒ…

夏をゆく人々

★★★★★ 2015年9月14日(月) テアトル梅田1 姉妹にエリセの父権にタヴィアーニの養蜂にアンゲロプロスの失踪にアントニオーニといった具合に痕跡はあるがシネフィル的小賢しさは無い。少女時代の追憶は客体化され十二分に乾いてるが尚情緒的。フェリーニな祝…

ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド ゾンビの誕生

★★★ 2017年10月21日(土) プラネットスタジオプラス1 もちろん始祖であるが故に全然怖くない。 ゆっくり歩いてくるゾンビは俺でもやっつけられそう。 それでも、16ミリ・モノクロの即物感は悪くない。 ゾンビの初出シーンの、何のタメもない、単におっさ…

ならず者

★★★ 2017年3月20日(月) プラネットスタジオプラス1 かのスコセッシが「アビエイター」で描いたハワード・ヒューズが当初のハワード・ホークスをクビにして撮り直しを重ねて出来上がったしろものなのだが、いろんな意味でおもしろい。 確かに技法上のバラ…

ナッシュビル

★★★★ 1977年9月11日(日) SABホール カメオ実名人を虚構に混在させたノンフィクションもどきのフィクションは50人以上の主要人物群の悲喜交々な寸景を一所にぶち込み掻き混ぜ泡立てる。包括的にカオスを狙った編集が成功し祝祭と音楽が形成するグルーヴ…