★★★★ 2018年9月8日(土) TOHOシネマズ梅田4

本当に意外であって、石井岳龍の次世代のパンキッシュ映画の担い手という印象があったから。
だって、平気で新井浩文を直立不動でビルの屋上に12時間立たせたりする人でっせ。
手法的にはズームや横移動が相変わらずだし、ここぞというときのパンクなビートも健在。
ことに、駒や盤面を舐めるようなカメラ使いは相当にエキサイティングです。
一方で、終盤のベタベタなカットバックとか、いったいどうしたんやろと思わせる。
松田龍平は嫌いじゃないのだが、さすがに彼の十八番の無感動・能面芝居は今回は疑問。
やっぱ、思いってのは伝えようとしないと伝わらないものだと思うから。
彼が主演ゆえの、あえてのベタまみれなら、まあ納得です。
次々に画面をにぎわす役者陣のあえてのベタ祭り。
そういう意味でおもしろさは尽きないのだ。
サボった訳でない茫漠の10年を誇張なく気付けば終わってしまったという事実として描く。再起動の切欠もしかりで龍平の低温演技の一貫が世界を規定するのだから豊田らしからぬベタ話法も良しと思う。それでも盤面接写の駒運びは躍動感に満ちている。(cinemascape)