男の痰壺

映画の感想中心です

ナポリの饗宴

★★★ 2019年2月2日(土) シネヌーヴォ
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子供のころに読んだ佐藤忠男著「世界映画一〇〇選」っていう本があって、あまりに繰り返し読んだもんだから、そこに選ばれた100の映画に俺は敏感に反応してしまう。
本作も選ばれており、佐藤先生褒めまくっております。
今回、イタリアネオクラッシコ映画祭という企画で見る機会があった。
結果、たいそう失望した。
 
16世紀から第一次大戦までのナポリ史を5つの挿話で描く。
それをイタリアンな大衆歌謡劇で彩る。
といえば聞こえがいいが、「サンタルチア」とか「オーソレミーヨ」とか高らかにうたわれてもどうもね。
それでも映画的に訴求するものがあればだが、沁みてきません。
 
挿話の合間に語り部的な感じで街頭音楽商人の一家がいて、これが貧乏人の子沢山。
お金がなくって夫婦喧嘩したり、泊まる家がなくて知り合いに泊めてもらったり、年ごろの娘がどっかの若造と恋に落ちたりで、ここのみイタリア映画らしい惻々とした良さがある。
 
あと、5話目の1人の女をめぐってのギャングの諍いの話で、その群舞の振り付けが「ウエスト・サイド物語」に似ている。
ジェローム・ロビンスは案外これにインスパイアされたのかもと思った。
 
5つの挿話が連関したテーマで貫かれてる訳じゃなく高らかに歌われるカンツォーネは他所事めいて沁みてこない。ただ幕間の譜面売り一家の悲喜こもごもだけは貧乏人の子沢山なイタリアン伝統のお家芸で安心。女房の積もった鬱憤も娘の恋路の前で慈愛に変わる。(cinemascape)