男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【み】

ミリオンダラー・ベイビー

★★★★ 2005年6月11日(土) 梅田ピカデリー1 他者のシナリオを律儀になぞるが、本質的には「物語」としてのロマンティシズムと同志愛とも言える役者達との共闘空間があれば良い。多分それがイーストウッドの純粋さであり限界でもある。それを映画と断言する輩…

ミュンヘン

★★★★ 2006年6月10日(土) シネマしんげき1 『シンドラー』の時代とは違い明快な答を出せない題材を選択したスピルバーグの立ち位置が物語的には苦しい。テロルの連鎖を断ち切る答は無く詠嘆的に鎮魂するしかない…というのは在り来たりと思う。随所の唸らさ…

ミークス・カットオフ

★★★★ 2021年10月24日(日) シネヌーヴォX 開拓期のアメリカて新天地を求めて荒野を彷徨する3家族と案内人。 なのだが、妻たちの1人、ミシェル・ウィリアムスのドレスがピンクっつーのがなんか違和感ありますな。まあ、どうでもいいけど。 こういう時代だ…

宮本武蔵 一乗寺の決斗

★★★ 1991年4月28日(日) トビタ東映 前3作を観ないでこれだけ観ても訳解るわけもなく、武蔵の懊悩や葛藤らしきものは俺の心を上滑りしていく。吐夢らしい豪快な造形美の片鱗を探し続けて観ていたが、それはラストの一乗寺下り松のモノクロの乱闘シーンまでつ…

宮本武蔵 巌流島の決斗

★★★ 1991年5月25日(土) トビタ東映 正直5部作の4と5しか観てないので入り込めないまま終わってしまった。アクロバティックな殺陣が売り物ではないと解っててもクライマックスは凡庸だし湿気ている。達観したかのような錦之介はいいが複雑怪奇な小次郎を演…

MINAMATA ミナマタ

★★★ 2021年9月26日(日) MOVIXあまがさき9 ①水俣病に冒された人たちの現実と企業との賠償闘争。 ②写真家ユージン・スミスの人となりと水俣とのかかわり。 という映画としての2つの立脚点があるのだが、ジョニー・デップが主役である以上、当然①を徹…

未来世紀ブラジル

★★ 1991年6月1日(土) みなみ会館 管理社会の風刺だとするなら直球でやればいい。鼻について仕方ない気障っぽい意匠は不要だし一歩譲っても統一感に欠ける。西洋的なものにオリエンタリズムと南米風味をトッピングすればカフカにでもなれると思ってるらしい。…

見知らぬ乗客

★★★ 1991年7月29日(月) シネマアルゴ梅田 ムード身上のチャンドラーが当然の如く機能せずプロット主導のヒッチが統御した映画は物語のロジックを喪失し寄る辺ない凡庸に陥る。出演者にも華が無い。極言すれば「メリーゴーランド」と「テニスの観客席」と「サ…

ミザリー

★★★★ 1991年8月4日(日) 新世界国際劇場 原作を読んでから見ていたら大層薄味なキングものと感じたと思う。グロとサディズムと文章上の多くのギミックをスッパリ切り捨て、平明化されたレトリックの対極の三文小説仕上げでも、それなりに見せられてしまうのが…

ミラーズ・クロッシング

★★★ 1991年9月15日(日) 新世界国際劇場 懐疑と裏切りの世界をのし上がる男にバーンが見えずフィニーも大物ギャングには見えない。ギャング映画の衣を借りて醒めた映像作りに余念がないものの俺のハートも冷めたままだった。圧倒的な見せ場が2ヶ所あるが、今…

ミスト

★★★★★ 2008年5月10日(土) TOHOシネマズ梅田6 キング初期傑作の完膚無きまでの映像化完成形。予断の範疇の臨界を微妙に行き来する出来は絶妙としか言えない。ハリウッド商業コード内で途轍もない絶望地獄を現出させたしたたかさ。ラストはギリギリの妥…

Mr.レディー 夜明けのシンデレラ

★★★ 1990年2月18日(日) セントラル劇場 「おかま」であることの本質には言及せず一昔前の調和的人情世界にしか物語が展開しないのが所詮限界とも思うが、それが一種心地よくもある予想外に良く出来たコメディ。想像以上の赤塚、小野寺等のカマ演技に俺は徒花…

Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼

★★★★★ 2009年1月31日(土) トビタシネマ 手垢のついた題材だが、今更の出演者たちの置いていかれたヤサグレ感が物語の背徳と同期し未曾有の頽廃を醸し出す。特にコスナー&ハートとリンクするでもなくニアミスを繰り返すムーアの痛さが良い。そして、顕現す…

水を抱く女

★★★★★ 2021年4月23日(金) テアトル梅田2 全く予備知識なしで見たので、その強引とも言える奇想譚への置換に戸惑いつつも、骨太な描写力に持っていかれる。 【以下ネタバレです】 新しい彼氏との出会いの場で金魚のでかい水槽が割れるのだが、決して巧いモ…

ミツバチのささやき

★★★★ 1986年4月6日(日) 大毎地下劇場 1994年6月26日(日) つかしんホール 怖じることなくあらゆる対象を凝視するアナの大きな黒い瞳。その瞳にスクリーン越しに吸引される観客の視線というメタ構造の一方で映画内でスクリーンの『フランケンシュタイン』を晒…

ミナリ

★★★★ 2021年3月26日(金) TOHOシネマズ梅田6 移民した日本人たちを題材にしたものが、えてして日本人ムラの中の話になるのに対して、この家族は個で屹立している。それは、日本人と韓国人のメンタリティの違いというより、監督・脚本のリー・アイザッ…

★★ 1986年4月6日(日) 大毎地下劇場 獄中より指示しての作業でどれ位作品を支配できるのか解らぬが劇作はともかく描写は西洋文化のフィルターを通したものにしか見えなくて凡庸。切実な悲嘆や絶望は表層化され薄っぺらい。カンヌ受賞はジャーナリスティックな…

ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女

★★★ 2010年4月10日(土) 新世界国際劇場 近世の歴史の彼方から立ち上がる横溝的謎解きのオーソドキシーをシネスコ画面の手堅さが補完する醍醐味。だが「レクター」的役回りのリスベットはキャラ立ちする割に真っ当でインパクト薄く2番煎じ感漂う。ラストの…

未完の対局

★★ 1983年1月23日(日) 伊丹グリーン劇場 三国と孫演じる世代の話は2人の役者の重厚さも相まりまあまあ見せる。しかし紺野と沈の若い世代の話になると役者陣の薄さもあり内容的にもふやけて映画は細っていく。実力者揃いのスタッフだが合作の弊害を純彌では…

ミッション・クレオパトラ

★★ 2011年7月9日(土) トビタシネマ モニカは何処?サギやー!アホンダラ~と今更言う気もおきぬデブ親爺とヒゲ親爺のしょうもないコント。無理難題をクリアするに魔法でチョイで済むならドラマは不要。お座成りな攻防と大団円には欠伸しか出ない。(cinemas…

みゆき

★★★★ 1983年9月23日(金) 伊丹グリーン劇場 可愛い女の子と仕方なく同居し煮え切らない甲斐性なしでも何故か女の子にモテモテという露骨すぎる夢物語をお仕着せ企画であろうが何とかしようとしたとき希に映画は歪な輝きを獲得する。映画史的(?)に相米のデ…

ミクロの決死圏

★★★ 2011年10月22日(土) TOHOシネマズ梅田10 ハリウッドメソッドの残滓はあるが、にしても驚きの即物感である。情緒や説明は廃して切り込む快感こそが先鞭であった。そして、省略の妙が最高に活かされるラスト5分の畳み掛け。美術的な鮮度落ちはや…

ミッション:8ミニッツ

★★★★ 2011年11月6日(日) MOVIXあまがさき4 さして巧くもない反復のギミックが中段で放棄され、物語が別側面を見せ始めたときに、ダンカン・ジョーンズの前作同様の遺棄されしものへの慈しみが浮上する。残留思念の永遠とパラレルな現世に届く一抹の…

ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル

★★★ 2011年12月25日(日) MOVIXあまがさき7 アクション連鎖とコンゲーム的丁々発止が同期するドバイシークェンスを頂点に映画は停滞色が強まる。レアの退場も痛かった。以降、映画はエロスとバイオレンスが廃され挙句お子様映画化し、スペクターもど…

ミッドナイトクロス

★★★ 1982年4月3日(土) OS劇場 デ・パルマに深淵なるものを求めちゃあいないが、そもそも劇画的なスプリットスクリーンやダブルフォーカスの使いまくりは余りに表層的すぎて幼稚だ。カメラのグルグル回転は思い入れが上滑りしまくっている。(cinemascape) k…

水のないプール

★★★★★ 1982年4月7日(水) 梅田東映ホール 何かの切欠で人はアンチモラルな非日常へ躊躇無く簡単に越境してしまう。冷たい汗とクロロホルムの夏の倦怠。撮りようでは救い無き話を、まったりした独特のユーモア感覚で巧くカバーリング。虚無だが真摯な内田のキ…

ミッドウェイ

★★★ 2020年9月13日(日) MOVIXあまがさき10 エメリッヒとマイケル・ベイってどっちがどっちだったかわかんなくなるのだが、「パールハーバー」がマイケル・ベイですか、未見ですが。何れにしても、両方ともドッカンボッカン大好きの深く考えるタイプ…

mid90s ミッドナインティーズ

★★★★ 2020年9月12日(土) シネリーブル梅田4 行き場のない少年が、スケボー仲間と出会い経験を積んでいくという幼年期の自我の芽生えもんなのだが、この少年が本当にいい。 俺くらいの歳になると、世俗の色気から遠ざかり枯淡の境地に達しつつあるので、街…

11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち

★★★ 2012年6月16日(土) テアトル梅田2 稀代の道化か清心な殉教者かと問われたら、若松のスタンスは前者に近い筈だが、そうならば徹底的に笑いのめしてやるのが霊魂に報いる道であろう。遠慮は不要だった。東大や市ヶ谷での井浦新のリアルにダメな口跡が出…

ミッドナイト・イン・パリ

★★★ 2012年6月14日(木) 大阪ステーションシティシネマ9 導入は『マンハッタン』の焼き直しだが、にしても巣晴らしいパリ賛歌で、続く2組のカップルの寸景も微妙な軋轢描写が相変わらず絶品。が、時空を超えてからの描写は殆どしょもない楽屋落ちの羅列で…