男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【しは~しよ】

春婦伝

★★ 1981年10月31日(土) 関西学院大学学生会館大ホール 土台ちゃんとした物語なのだから、いじくる必要もないのに、いじくってしまったケレンが煩わしくさえある。清順流の繋ぎは時と場所を選ぶと言うことじゃなかろうか。場末的廉価感は的を射るにはターゲッ…

SHADOW 影武者

★★★★ 2019年9月6日(金) 大阪ステーションシティシネマ10 俺は、チャン・イーモウの熱心な鑑賞者ではない。 のだが、初期のころの「菊豆」、「紅夢」を見て、このおっさん形式主義に拘泥して早晩行き詰るわと思っていたら、「あの子を探して」でいきなり…

十兵衛暗殺剣

★★★ 2013年11月16日(土) トビタ東映 十兵衛は序盤けっこうリアルに弱腰だし、実践経験無き剣が道場剣法と謗られるのも正論。そういう生煮え展開故に終盤の逆転にカタルシスは無い。闇夜の大友の8人斬りの非情。湖賊女頭目の懊悩とエロティシズム。見どこ…

ジョー

★★★ 2019年8月12日(月) プラネットスタジオプラス1 1970年のアメリカ映画だそうな。 前年の1969年には「イージー・ライダー」「真夜中のカーボーイ」「明日に向かって撃て!」「ワイルドバンチ」が公開され、映画ジャーナリズムはまさにアメリカ…

ジャッカルの日

★★★★ 2013年11月19日(火) 大阪ステーションシティシネマ11 ジンネマン演出はけっこう粗いのだがテンポだけはやたら良く、感情を排した即物的描写の連鎖が気持ち良い。こういうのを力技と言う。テロルのヒロイズムに言及するわけでもないのだが、この徹底…

シャーロック・ホームズの冒険

★★★ 1981年7月7日(土) 毎日文化ホール パロディとしての彼是は俺には解らぬのもあり舞台がロンドンの前半はけっこうダレる。スコットランドに移ってからの描写の方が好き。後半、漫画に堕したと言おうが哀切極まりないラストだけでも見る価値あり。ニヒリ…

ジャッジ!

★★★★ 2014年1月12日(日) イオンシネマ大日7 見てくれは相当エッジが効いてる割に言ってることはマトモ過ぎ、一種の回顧趣味だとしても気恥ずかしい。何と言っても景子と京香に分断されたヒロイン設定が致命的で煮えきらず、ツンデレのデレも不足だ。ただ…

少女は自転車にのって

★★★ 2014年1月11日(土) シネリーブル梅田2 必死でチャリこぐ少女の見るからに喜びを体現する様は確かに微笑ましいのだが、彼女は都度言及される女性を虐げるサウジの因習に対しプロテストしてるわけでなく、個人的な価値観に準拠してるに過ぎないところが…

主戦場

★★ 2019年7月6日(土) 第七藝術劇場 従軍慰安婦問題に関しては、国同士の交渉は2015年の日韓合意で終息したはずであったのだが、韓国サイドの民間レベルの激しいロビー活動で蒸し返され現在に至る。 ってのが、おおむねの日本人の見方だと思う。 喧嘩っ…

12か月の未来図

★★★★★ 2019年5月6日(月) テアトル梅田2 1人の教師の成功譚のような体裁をとっているので、現実はそんなに甘くねえよの声も聞こえそうだ。 が、それでもいいんじゃないかと思えるのだ。 描かれたのは膨大な移民と、それがもたらした格差。 エリート校のベ…

十六歳の戦争

★★ 1981年10月10日(土) 今津文化 山田正弘の喜重映画的な高踏趣味の複層構造因果話が素人臭い演出によりグラグダになる。自治体の松本チョイスは英断というより暴挙であった。いきなり出てくる空爆シーンが「はあ?」ってな感じで茶番めくのでは2400名の…

シャザム!

★★★ 2019年4月22日(月) 梅田ブルク7シアター7 【ネタバレです】 冒頭、親子3人がドライブしてるとこから始まるのだが。 父親も長男も次男に辛くあたる。 何でかはわからない…が、そんなに悪い子にも見えない。 その子が長じて悪魔に取り入られて凄ーく…

昭和枯れすすき

★★★★ 1981年10月10日(土) 今津文化 2時間ドラマと大差ないストーリーと配役なのだが新藤・野村ラインは熟達のコクを映画に付与する。分けても秋吉久美子のノンシャランを高橋の硬質と同一画面上で均衡させたのは演出の為せる技。他の出演者も総じてベストワ…

自由の幻想

★★★ 1980年5月11日(日) SABホール 食事と排泄の或いは猥褻への価値観逆転は笑えるがTVで垂れ流される凡百のコントと紙一重。一方で理解不能なエピソードは『アンダルシア』を筆頭にした表現的な荘厳さには遠い。評価に迷うが権威に追従したくない。ブニ…

ショウタイム

★★★ 2014年5月24日(土) トビタシネマ 正直ミスキャストなのだと思う。10年前のマーフィと10年後のデ・ニーロなら静と動、重と軽の対比が効いたはず…って言うかどうでもいいわ、こんな既視感バリバリの設定。前作も然りだが、この監督のバディムービー…

女王陛下のお気に入り

★★★★ 2019年2月23日(土) TOHOシネマズ梅田5 なんか変わったなと思った。 人の気持ちの流れが普通にわかるのだ。 ヨルゴス・ランティモスの映画は「ロブスター」と「聖なる鹿殺し」を見てるが、登場人物が何考えてるのかさっぱりわかりませんってな映…

13回の新月のある年に

★★★★ 2019年2月17日(日) シネヌーヴォ 俺は昔、ファスビンダーの「ケレル」ってのを見て大概うんざりしたことがあるので覚悟して見に行った。 でも、そういったその手の人専門映画みたいな雰囲気ではなかった。 これは、妻も子もいるのに、ある男に「お前…

ジュリアン

★★★★ 2019年2月2日(土) シネリーブル梅田2 【ネタバレです】 どうにも売り方が、ミスリードを誘ってよくないと思う。 「ジュリアン」という子供の名前のタイトルと子供の泣き顔のポスターからは、どうしたって虐待の映画を連想する。 おりしもクソ親によ…

ジャスティス

★★★★ 1980年7月1日(火) ビック映劇 漫画チック未満の微妙なカリカチュアの按配が良く、ポイントでは結構金もかけ厚味もある。並行する多くのプロット群は有機的錯綜を見せないのだが、それが味でもあり、自殺癖の判事や仕事の矛盾に悩む弁護士等、本筋以外の…

十八歳、海へ

★★★ 1980年7月31日(木) 毎日ホール 『青春の殺人者』の原作・脚色者を再組合せし『サ-ド』の主演コンビをマッチングさせた企画もん丸出し作。藤田特有のシラケ感は、所詮重量級の観念劇と噛み合わず、訳知り顔のわからん話がしんどい。唯一安藤庄平のヘヴィ…

昭和おんな博徒

★★★★★ 2014年8月14日(木) 新世界東映 描法が原理主義的に頂点を極めた『花札勝負』から写実に崩れ寄り腐る前の唯一の賞味ポイントで高潔な美学とキッチュな写実が融合した。枷が外れた加藤泰の全てをブチ込んだ何でもあり世界だが旧来の任侠映画システムが…

ジプシー・フラメンコ

★★★ 2014年8月14日(木) テアトル梅田2 一旦アングルを決めたら梃子でも動かさぬ依怙地な演出は好きだ。対象が120%のダイナミズムを有するの以上演出は謙虚たるべきを弁えている。只カリメ初顔合わせのセッションと母ウィニーの登壇。この2点のみで映…

★★★★ 2018年11月17日(土) テアトル梅田1 銃を手に入れたとたんに、万能感に支配され身を滅ぼす。 ってモチーフは、大藪春彦とか始め繰り返されたモチーフで特に新しいもんでもない。 しかも、本作は銃に対するフェチズムも大して見られないし、人生変わっ…

郊遊 〈ピクニック〉

★★★ 2014年9月13日(土) シネリーブル梅田2 鼻水垂らし期限切れ弁当食いつつ此処ではない何処か今でない何時かを見探す男だが、何も見てない空洞のような眼窩にも見える。チャップリン映画のようなホームレス親子の生活が痛々しいが夢も希望も世界には無い…

昭和残侠伝 吼えろ唐獅子

★★★★ 2014年10月11日(土) 新世界東映 常道的ドラマトゥルギーなら高倉・鶴田の道行きとなるべきところ、シリーズの決め事から仕方なく脇にいた池部が突如メインストリームに踊り出て唐獅子牡丹が鳴り響く。破綻してる分一種ホモソーシャルな遣る瀬無さが極…

ジャージー・ボーイズ

★★★ 2014年10月5日(日) MOVIXあまがさき3 イーストウッド主モチーフであるところの怒りの要素は希釈され尚演出家としての破綻がない分毒にも薬にもならない。コマ劇場でのヒット歌謡ショー「クールファイブ物語」米版的如才の無さで楽しい時間だ…

★★★★★ 1980年12月25日(木) 梅田東映ホール 16ミリブローアップによる痴漢シーンの即物感に対し後半の軍艦島のスタティックな叙情。閉じた世界で煩悶する魂を高田昭の撮影と一柳慧の音楽がバックアップし開放に導く。被写体を周囲の状況から切り取り凝視し…

清水港の名物男 遠州森の石松

★★★★★ 2014年10月11日(土) 新世界東映 「恋する」ことの喜びを全篇むしゃぶり尽す展開で、これを明朗な錦之助口跡で謳いあげられる嫌味無さが心地よい。花街一夜の翌朝の猿芝居な至芸。近江での志村一世一代の名演。長谷川裕見子鉄火肌の点睛。マキノ流山…

シベールの日曜日

★★★★★ 1980年9月2日(火) 梅田コマシルバー 少年大人顔のクリューガーと大人少女顔ゴッジの2人が超絶に後向きな物語の片隅感を弥増させる。その背徳すれすれの世界にドカエカメラがワンショット毎に宝石を磨き上げるが如く精緻な技巧を弄して詩情と死臭を加…

ジュリア

★★★ 1980年9月11日(木) 梅田ロキシー どうにも外側の安全地帯から見ていた女の戯れ言の感が拭えない。フランスでの抵抗運動の描写がなまぬるく、ジュリアも偶像化された虚像みたいだ。現代シーンのジェーソン・ロバーズははまってるが逆にはまりすぎで安易。…