男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【しは~しよ】

JAWS ジョーズ

★★★★ 1976年1月4日(日) 梅田グランド劇場 警察署長の煩悶やシャークハンターの戦中懐古話等、申し訳程度にドラマが描かれてはいるが、矢張り鮫の予想外のデカさにつきたと思う。出ることがわかってて待ちかまえる観客をも殆ど仮死状態に至らしめるほどのシ…

17歳の肖像

★★★★ 2010年5月12日(水) TOHOシネマズ梅田6 足るを知るには、あっち側に行き戻って来るしかないという言説を語りつつ、教条的価値基準には準拠しないというポーズがクールな一方で感じる時流への媚びの微妙。ただ、圧倒的なのはロック勃興前夜のロン…

春江水暖

★★★★ 2021年2月27日(土) テアトル梅田2 グー・シャオガンという新人の長篇デビュー作で、撮影に2年をかけたという力作である。 力作とは思いますが、影響を受けた監督にエドワード・ヤン、ホウ・シャオシェン、ジャ・ジャンクーの名前を挙げている通りの…

ハロルドとモード 少年は虹を渡る

★★★ 2010年9月11日(土) シネヌーヴォ 現実逃避にしか見えぬ少年の奇行の果てに正体不明の婆さんがいたわけだが、人生訓めいた更正方向ではなく閉じた世界に2人で埋没してゆく被虐性には一応惹かれる。ただ、余りに語られぬバックボーンゆえに所詮は絵空事…

十三人の刺客

★★★★ 2010年10月8日(金) TOHOシネマズ梅田3 場数を踏んだ者のみが成せる長丁場の戦闘の緩急と構成の妙は素ん晴らしい。だが、序盤で提示された「みなごろし」のルサンチマンは今いち解消されぬまま、ヒロイズムやニヒリズムに置換され、どうにも糞詰…

シャルロットとジュール

★★★ 2010年11月20日(土) 第七藝術劇場 結局、そんなことならさっさと済ませて失せやがれということなのだが、弄ぶかのようなシャルロットのお茶目さの執拗な過剰感は見てて不快ではない。男の未練や強がりと親和し呼応してるからだろう。ラストの決めはベ…

小説吉田学校

★★★ 1983年4月11日(月) 伊丹グリーン劇場 森繁の渾身な成りきりこそ見物だが、クソ真面目な森谷に山本のような寝技が出来得る訳なく抑揚の無いエピソードの断片的なつなぎ合わせに終わった。角栄・佐藤・中曽根など不要で三木武吉との確執こそど真中に据える…

処刑教室

★★★ 1983年5月28日(土) 伊丹ローズ劇場 単細胞なまでにコンセプトは一貫しており、ガキ相手だろうが何だろうが殺られたら殺り返すってことでいいじゃんってなもんで、アメリカンな論理は怖くもあるが惹かれるもんもある。いやあ、オーソドックスは強度がある…

処刑剣 14BLADES

★★★ 2011年9月23日(金) トビタシネマ プロット毎の魅せ方は悪くもなく、決め構図に心射られそうになることも無くはない。特に温泉でのドニー&ヴィッキーの嬉し恥ずかしな青春プレイの甘酸っぱさはナイス。だが、肝心の大枠が端折り過ぎで根の部分で置いて…

ジョージ・ハリスン リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド

★★★ 2011年11月26日(土) 大阪ステーションシティシネマ8 お庭の花壇のお花の陰からヌボーっと現れるジョージにスコセッシの気持ちは集約されている。肩入れし切れない取り留めの無さ。期待した快楽の編集リズムは無く、ポールやクラプトンとの確執も突っ…

少女ムシェット

★★★★★ 2020年11月17日(火) テアトル梅田1 ブレッソンをそんなに見てるわけではないが、これは今まで見た中でベストであるし、今年見た旧作の中でも最上位に置くだろう。 貧乏で悲惨ということを映画はけっこう好んで取り上げる。そして、この主人公の少女…

ジャコ萬と鉄

★★★ 1982年5月29日(土) 新世界東宝敷島 黒澤が三船を発見したのではなく、或る意味で僚友谷口との共有物であったわけである。そういう歴史的意味を探る上では外せない1本だが、だからといって殊更どうという訳でもない。しかし男2人の対決の映画ってのは、…

昭和残侠伝 破れ傘

★★★ 2012年5月26日(土) 新世界東映 これでもかの義理の釣瓶打ちが並列に配置されるだけで一向に錯綜も相乗もせず、挙句にばったばったと登場人物を殺して回収するだけ…で、お決まりの道行き&殴り込みと相成るのが釈然としないが、まあ、それでも「唐獅子…

11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち

★★★ 2012年6月16日(土) テアトル梅田2 稀代の道化か清心な殉教者かと問われたら、若松のスタンスは前者に近い筈だが、そうならば徹底的に笑いのめしてやるのが霊魂に報いる道であろう。遠慮は不要だった。東大や市ヶ谷での井浦新のリアルにダメな口跡が出…

終電車

★★★ 1982年7月2日(金) 大毎地下劇場 50年代ロマネスクの主要舞台であった大戦下のパリに舞台を設定し文句無しのスター2人を主演に迎えて極めつけのメロドラマになるかと思いきや、2人の男の間を揺れ動くドヌーブが何考えてるのやら解らないトリュフォー…

新少林寺 SHAOLIN

★★★ 2012年7月28日(土) トビタシネマ 流れを読ませない多くの予兆を秘めた前半は素晴らしい。だが、少林寺VS圧政者という構図はラウVSツェーの個人レベルの内部闘争に摩り替わる。熱いのだが釈然としない。ただ、ラストジャッキーに担わせた万感の想い…

女囚さそり けもの部屋

★★★ 2012年8月25日(土) トビタ東映 冒頭の地下鉄シーンは良い。だが、その後街中を腕ぶら下げて走る梶は、さそりじゃなくて女の子になっちゃってるのだよ。伊藤演出の本気度の低下は著しい。その後も何に抗うのか不明の物語が綿々と続き白ける。李の怪演も…

情事

★★★ 1982年11月8日(月) 梅田ロキシー 前代未聞の問題作であったろうしアイデアは文句無く傑作ではあると思うのだが、未だ中途半端に自然主義の尾をひきずっており、圧倒的な喪失とヒリヒリした不安を抽象化し画面内に定着させ得ているとは思えない。撮影者の…

ジャンゴ 繋がれざる者

★★★★ 2013年3月8日(金) MOVIXあまがさき1 『キル・ビル2』に類した語り口は闊達な一方で説明的リアクションショットが気になる。臨界寸前の腹の探りあいは相変わらず見所だが、破壊的に越境するでもなく良識コード内で納まる。肥えたタラの今後が危…

少年

★★ 1981年3月1日(日) SABホール この題材を黒塗りの日の丸で規定してしまうところに大島の横暴を感じる。情緒的な泣かせと政治的な反権力指向の狭間で物語は宙に浮いて居所を失う。後者であるならよりブラックな諧謔を、前者であるなら木下イズムへの転向…

シャイニング

★★★ 1981年3月21日(土) トビタシネマ 過去の時制が侵食するスタティックな超常現象の描写やスタディカムの長尺使用の酩酊感などの鉄壁はニコルソンの迎合的な過剰演技に侵食される。全く相容れない両者は統一を攪乱してるし予想を超えるイメージも少ない。…

ジョジョ・ラビット

★★ 2020年2月13日(木) TOHOシネマズ梅田5 なんだか、チュウボーが学校で教わったヒトラーユーゲントやゲシュタポや「アンネの日記」とかのネタを組み合わせて作って、ビートルズやらボウイやらをバックに流してイカスじゃんみたいな小賢しさを感じて…

自由を我等に

★★★★ 1981年4月19日(日) SABホール 大甘理想主義を謳歌する映画だが、予想外にクールなデザインも有している。そのあたりの欧州的ニヒリズムの存在がキャプラとかの勇気と信念のマッチョな透徹と同工にして異曲だ。工場シーンが『モダン・タイムス』の…

じゃりン子チエ

★★★★ 1981年4月13日(月) 伊丹グリーン劇場 『ハイジ』なんかで培った徹底現地ロケハンを大阪に導入し写実の中の虚構とナンセンスが際立つ。時折見せる戯画的なチエの横顔がリアル少女してるのが高畑の趣味か…。限り無くバカな父親と果てしなく優しい母親が…

少女娼婦 けものみち

★★ 1981年6月4日(木) 毎日ホール 少女が男を乗り変えるに際してのスッタモンダを持って回った観念劇エッセンスで修飾して可愛げが無い。加えて、母親との関係描写がでてくると益々何が何だか解んない世界で、煙に巻く寺山なら未だしも神代では見てられない…

ジョン・ウィック パラベラム

★★★ 2019年10月18日(金) 梅田ブルク7シアター11 始まってから30分ほどは、このシリーズも遂に、ある種の頂に到達したんやなあという感慨をもって見ていた。 物語は、渦中から始まりノンストップであります。そして、出ました!100人斬りってなわけ…

ジョーカー

★★★ 2019年10月8日(火) TOHOシネマズ梅田1 再三にわたり、ゴッサムシティの荒廃した現状が語られるのだが、ニュースの音声のみで、そこをもうちょっと丁寧に描かないと終盤の暴動とその中で格差への怨恨を晴らすジョーカーのアイコンとしての役回りが…

ジャッジ・ドレッド

★★★★ 2013年9月14日(土) 新世界国際劇場 スローモーなるドラッグの幻視効果を執拗に描いて、そのハイスピード撮影が人体破壊に敷衍するあたり、この際どい専制題材を描くに毒をもって制する感がある。設定の空間限定の閉塞は容赦の無さによって破砕され、…

シュロック

★ 1981年7月25日(土) 三越劇場 当時、日本の片田舎にだってブルース・リーや優作の真似事をしたくって、そんなバカみたいなことに明け暮れていた野郎どもは自主映画世界には山ほどいたのであって、こんなもん金取って見せるものではないと思った。パロディと…

春婦伝

★★ 1981年10月31日(土) 関西学院大学学生会館大ホール 土台ちゃんとした物語なのだから、いじくる必要もないのに、いじくってしまったケレンが煩わしくさえある。清順流の繋ぎは時と場所を選ぶと言うことじゃなかろうか。場末的廉価感は的を射るにはターゲッ…