男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【く】

★★★★ 1982年11月4日(木) 新世界東宝敷島 我が儘放題で傲慢かますパラノイアな主人公の描き方は『日本沈没』の田所教授に繋がる小林・橋本・森谷の最強タッグの原点だろう。際どい倫理感をハイボルテージで擦り抜け蹂躙されるマゾヒスティックな快感。森谷司…

クロユリ団地

★★★ 2013年5月18日(日) MOVIXあまがさき6 都市伝説への斬り込みに於いて『リング』から、情感と神経症的鋭利に於いて『仄暗い』から10年後退した凡作。序盤の設定が方便に過ぎず、トラウマはリアリティ無く、終盤には納得性が無い。中田には無い無…

グランド・マスター

★★★★★ 2013年6月2日(日) MOVIXあまがさき5 ど素人のトニーをカット割りとスローで修飾したのではなく、カーウァイの必然としてそうなった。魂は逸らしてない。武芸に秀でても普通人な葉門を翻弄する時代の流れ。流れに抗して潰える高潔な魂ツィイー…

狂った果実

★★★★ 1981年5月4日(月) ダイニチ伊丹 80年当時としてもここに描かれた社会的ヒエラルキーは時代から乖離しているかのように思えたが、確信的に被虐と浪花節をブロウアップした演出が見る者を揺さぶり続け虐げられし者の爆発的破壊衝動に同期させられる。…

グロリア

★★★ 1981年7月12日(日) 大劇名画座 クールなオープニングに期待は昂まったがカサヴェテスの演出には、こういう物語を転がすの為のケレンやハッタリが足りない。市井人を描いてのヒリヒリ感はアンチリアルでは可逆的に作用しワルも市井人じみては盛り上がらな…

クロニクル

★★★ 2013年10月17日(木) TOHOシネマズ梅田6 全てのクスブリ少年の為のトラディショナルな物語なのだが、上げて落とすのではなく上げずして落とすので居たたまれない。それを、ほんまウンザリなフェイクドキュの主観カメ制約により輪をかけ非情に突き…

グッバイガール

★★★ 1979年1月28日(日) 伊丹グリーン劇場 1981年2月23日(月) 梅田ロキシー メイスンとカミングス母娘にまつわる話は素晴らしいし愛おしいとも思える。両者の演技はキュートそのものだ。だが一方でドレイファスの奇矯なキャラクターが何とも鬱陶しい。作り込…

グランド・ホテル

★★★★★ 2019年8月4日(日) プラネットスタジオプラス1 今ではあたりまえのように使われる作劇の骨法、「グランドホテル形式」の語源となった、いわば始祖である。 始祖っていうのは往々にして、そのトピックだけが形骸として残り作品的価値は劣化してるもの…

下り階段をのぼれ

★★★★★ 2019年6月9日(日) プラネットスタジオプラス1 ロバート・マリガンって「アラバマ物語」1本で辛うじて映画史に名を遺した人でしょう。 って予断は、ぶっとんだ。 これは、傑作だと思う。 今年、公開されたフランス映画「12か月の未来図」ってのと…

空母いぶき

★★★ 2019年5月30日(木) TOHOシネマズ梅田3 原作未読です。 ぜんぜん見る気がしなかった。 なぜなら、日本の専守防衛とやらに雁字搦めになっている自衛隊の現状を、忠実に敷衍する内容であればあるほど煮えきらない代物になるに決まっているからだ。 …

蔵の中

★★ 1981年9月28日(月) 高島屋ホール 普通の人が変態だったら面白いが変態が変態してもつまらん。近親相姦や盗視だけでも充分倒錯的であるのに、配役に奇手を凝らし過ぎて相殺し合った感もある。技法や趣向に溺れすぎるから、もったいぶってるだけで全然面白…

グリーンブック

★★★★★ 2019年3月24日(日) MOVIXあまがさき10 アカデミー作品賞の映画ってのは信用ならんし、ましてや経緯が経緯だけに見る気もなかったのだが、見てよかったと思った。 中盤でディープサウスを旅する車がパンクして停車を余儀なくされる場面。 車外…

クローズ EXPLODE

★★★★ 2014年4月27日(日) MOVIXあまがさき2 ワイルドサイドな昭和ロックで開巻した物語は豊田十八番のパンキッシュスローへと引き継がれ以後一切澱まない。ワルメン的底浅ではなく地べたからの上昇志向とニヒリズムの噛み合わせの妙。ダサくかっこ悪…

クーリエ 過去を運ぶ男

★★★★ 2014年5月24日(土) トビタシネマ 人捜しに纏わる状況がカフカ的迷宮の様相を呈するだけでも堪らんが、ニューオリンズや中国女やエルヴィスといったここ20年の映画的売れ線アイテムで修辞してダメ押す。中でも異彩を放つのがカポ夫妻の造形。ギャグ…

グランド・ブダペスト・ホテル

★★★★★ 2014年6月9日(月) TOHOシネマズ梅田10 美術や構図や多くのギミックが行くとこまで行った感があり、結果、歴史に翻弄された男の物語は意匠に覆われ埋没ぎみ。円環は閉じてしまい、綻びは2重3重に修復されハプニングは封殺された。役者もこぞ…

蜘蛛の巣を払う女

★★★★ 2019年1月14日(月) TOHOシネマズ梅田3 何の因果か知らないがスウェーデン版3部作もフィンチャー版も見ている。 が、俺は、このリスベットという不幸な生い立ちでパンクヘアでピアスでタトゥーで小柄でレズビアンでフェミニストで天才ハッカーな…

クリード 炎の宿敵

★★★ 2019年1月13日(日) MOVIXあまがさき9 ドラゴ父子かわいそう…って、そう思ってしまう物語軸ってどうなんよ。 そのへんスタローンも焼きが回ったと思うのだ。 まあ、そんなこと抜きにしても安直な物語ではあるのだが。 子供のころ、タイソンの試合…

来る

★★★★ 2018年12月9日(日) MOVIXあまがさき6 中島哲也はジャンルとしてのホラー映画に本当に関心があるのかって疑問。 たぶん無いんだと思う…っていうかあんまり巧くもない。 映画の前半は、人間の負の部分を拡大した陳列ショーで、嫌な連中ばっかの、…

黒い警察

★★★ 1980年7月4日(金) 毎日文化ホール 前後する『ダーティハリー2』と同工異曲のネオファシズムものだがマカロニウエスタンの国らしい扇情的な泥臭さ。しかし、おもろい。法的制裁をかいくぐる外道どもを処刑しまくるってのは快感だが危うい。その辺、遵法…

くるみ割り人形と秘密の王国

★★★★ 2018年12月4日(火) 梅田ブルク7シアター6 ジャンルとして、さして好みでもない映画です。 ファンタジーとして例えばティム・バートンの「アリス・イン・ワンダーランド」とか 古典の復刻版として例えば「美女と野獣」とか そういうの、まったく、見…

喰女 クイメ

★★★★★ 2014年8月24日(日) 梅田ブルク7シアター6 劇中劇とリアルワールドのシンクロは間々あるが、稽古場をジャンクションとして噛ませ錯綜の3次元がクロスオーバーする妙味。美術・音楽も良いが三池演出もカメラサイズを含め縦横。知れてる筈の「四谷怪…

クワイエット・プレイス

★★★ 2018年10月28日(日) MOVIXあまがさき9 演出が的確なので、印象は悪くない。 とくに掴みは相当にいい。 しかし、巷間言われてるように、物語がすすむにつれて馬脚が現れる。 まあ、ゾンビであるとか宇宙人であるとかに人類が滅亡寸前まで追い込ま…

暗くなるまで待って

★★★★ 1974年12月22日(日) 伊丹グリーン劇場 歩道から玄関を入って居間が階下にある構造が主人公の盲目と相俟り外部からの孤絶感を増幅する。地味な衣裳で茶目っ気を封印したオードリーは皮相にも美しさが倍加。加齢の疲弊も役者魂の発露と見える。平板な演出…

クレイジー・リッチ!

★★★★ 2018年10月6日(土) 大阪ステーションシティシネマ7 セレブの恋愛沙汰なんか真っ平御免だし見たくもないのだが…見てみりゃ、おもしろいでやんの。 やっぱり、ハリウッド映画ってのは脚本で徹底的に練り込むんやろね。 そういうプロデューサーがごまん…

グリース

★★★ 2018年8月11日(土) 大阪ステーションシティシネマ5 この映画を公開当事に高校生だった俺は見ていない。 のだが、受験期でラジオから流れる主題歌はイヤというほど聞いた覚えがある。 終盤、似合わぬアイビーを身にまとった(しかし髪はリーゼント)ト…

クレアのカメラ

★★★★ 2018年7月22日(日) シネリーブル梅田4 映画配給会社(?)の有能社員でカンヌ映画祭に仕事で来ている女性がいきなりクビになる。 街中の小さなブースみたいなところで仕事をしているキム・ミニがファーストカット。 これは、ラストショットのアパー…

グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札

★★★ 2015年4月4日(土) 新世界国際劇場 嫁の覇権物語として反対勢力の定番・姑の不在によるドラマ力の弱さやヒッチ・カラス・オナシスが顔見せ的役回りしか担わない消化不良やドゴールとの確執に収斂させる伏線の欠如など多くの緩さを呑んで尚好ましい作品…

クレイマー、クレイマー

★★★★★ 1980年11月23日(日) 梅田東映パラス 単に社会事象への問題提議の映画だったら、ここまでの感銘は無かろう。親が子を想い子が親を想う様を緻密なディテールで積み重ね、それこそが事の本質と言ってるかのようだ。ベントンの演出は精緻を極めアルメンド…

空海 KU-KAI 美しき王妃の謎

★★★ 2018年4月6日(金) TOHOシネマズ梅田5 まず、何より「闇」が足りない。 バンバンの照明を当てたデジタルでクリアな画面に棲む「魔」はどうしたって薄いのである。 前半は「陰陽師」の疑似バージョンだ。 空海&白楽天は安部清明&源博雅と同じよう…

グレイテスト・ショーマン

★★★★★ 2018年3月4日(日) MOVIXあまがさき9 「ラ・ラ・ランド」が50年代MGMミュージカルへのオマージュを捧げたのに対して、本作は、60年代のワイズやジュイソンを筆頭とした巨大ミュージカルへのリスペクトが感じられる。 ロイド・ウェーバーな…