男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【ひ】

人が人を愛することのどうしようもなさ

★★★ 2009年1月31日(土) トビタ東映 石井版『サンセット大通り』風味な『インランド・エンパイヤ』なのがオリジナリティ無き胡散臭さ。しかし、喜多嶋舞のやけくそな行って来いぶりには感動した。特に電車のシーンは古今東西の同工シーンを凌駕する出来。す…

白夜

★★★★★ 2009年9月26日(土) なんばパークスシネマ1 発想の発端はブレッソンであったにせよ、正反なグダグダで饒舌なダイアローグ劇。しかし、それを完璧にこなす主役2人に瞠目した。緊密なサスペンスが持続する果てに男と女の関係は所詮はロジカルには帰結…

ビリィ★ザ★キッドの新しい夜明け

★★★ 1988年1月2日(土) SABホール ごった煮的かつ趣味的な役名の数々とキャスティングは大層魅力的だが、そういう「ごっこ」が、どこかで真実に転化しないと映画的な感興は生じない。結局、最後まで「ごっこ」で終わってしまった。そんななか神戸浩の存在…

ひばり・チエミの 弥次㐂多道中

★★★ 2010年1月9日(土) 日劇会館 昔は凄かったと言うのも今更だが、それでも思わせられるひばり・チエミのタレント。特に近眼演技のひばりに萌える。そして、被写体との距離を意識し尽くした沢島のショット使いの的確さ。ただ、物語はグダグダで後半はさす…

現代やくざ 人斬り与太

★★★ 2010年2月20日(土) 日劇会館 結構、状況に迎合する主人公が今いち生半可で、安藤・諸角と西の勢力が拮抗するマクロな構図の前で矮小化される。腐れ縁の渚まゆみと同衾する文太の部屋での呟きが電車の音にかき消されるドン詰まり感。こういう深作節には…

人の砂漠

★★★ 2010年3月6日(土) 梅田ブルク7シアター7 真摯さは認めつつも、40年前のルポを今さら映画化する意味を呈示し得ていないし、更に4人の監督が撮った各挿話のテイストの近似ぶりが気持ち悪い。深夜枠のTVドラマが関の山の優等生のデジカメ金太郎飴…

ビバリウム

★★★★★ 2021年3月14日(日) 大阪ステーションシティシネマ11 不条理に絡め取られて逃げられなくなる。 こういう設定は「ミステリーゾーン」や「ウルトラQ」の昔からあるので、そんなに斬新なものではない。むしろ手垢のついた題材と言ってもいい。 しかし…

ピンク・フラミンゴ

★ 1986年9月7日(日) SABホール アナーキーであること自体に価値がある訳ではなく社会や体制や階級や思想や風化した固定観念や言語や法律や似非モラリズムや流行や懐旧や楽観や諸々の取り巻く何某かとの関連性に於いて語られるべきもの。だから、してやっ…

ヒーローショー

★★★★★ 2010年6月2日(水) 梅田ブルク7シアター2 些細なリアリズムの積み重ねによるミクロな小競り合い。そのド本気の錯綜だけでも見応えはあるが、混沌と拡散の果てに、そこには留まらない俯瞰的な時代観のようなものが現出してくる。『ガキ帝国』への本…

必死剣 鳥刺し

★★★★ 2010年7月29日(木) 梅田ブルク7シアター2 藩主・側室・別家の三つ巴の相克の圧倒に対し主人公の関わり方が浅くて脚色の甘さを感じた。終盤の殺陣も相対試合は魅せるが集団戦には新味を感じない。ルサンチマンが不足。ただ平山演出の丁寧さと役者陣…

ファースト・ミッション

★★★★ 1985年10月6日(日) 観光会館地下劇場 松竹新喜劇みたいなベタベタ展開がこの上なく泣かせる。そういう展開で溜めに溜めた挙げ句に炸裂するジャッキーのクンフー技がサモ・ハン演出の冴えもあり到達点とも言うべき切れの良さ。とにかく凄まじく速え!私…

ビッグ・バグズ・パニック

★★★ 2010年8月13日(金) トビタシネマ 導入以降の『ミスト』的世界観は悪くもないが、寄生的クリーチャーな展開に又かとも思わされ、一方で主人公の自己中キャラを凌駕するニンフォマニア女やミリタリー親爺の登場が通り一遍でもないが、終盤は既視感横溢。…

秘密への招待状

★★★★ 2021年2月13日(土) 大阪ステーションシティシネマ12 見た後で調べたらスザンネ・ピアの「アフター・ウエディング」のリメイクだそうで、未見ですが多分そっちの方が傑作なんやろなと思います。 男性2人が主演だったオリジナルを女性2人に変えてい…

ピンクパンサー2

★★★ 2010年9月11日(土) トビタシネマ 弛緩ギャグが緩い間合いで繰り出され、お約束事世界に耽溺する自堕落な快感がある。吉本新喜劇に通底する世界。天才【セラーズ】に抗する似非チャップリンめいたマーティンの胡散臭さ。アイアンズ筆頭に無意味に豪華な…

ヒッチャー

★★★ 2021年1月17日(日) シネマート心斎橋2 カルティックな評価を受けた作品で、それだからこそ40年弱の歳月を経て再上映されたんだろうが、やっぱ少なからず風化してると思う。初見です。 車の運び屋が主人公ってところが「バニシング・ポイント」を、…

ビッチ・スラップ 危険な天使たち

★★★★ 2011年3月12日(土) 新世界国際劇場 『チャリエン』と『デス・プルーフ』を掛け合わせ劣化させたあと、お下劣な女権信仰を全面開花させ押しまくる破廉恥だが戦略的な潔さ。無意味な時制往還もアホだし強烈なサブキャラ群も嬉しくもゲスだが、ラストは…

ヒア アフター

★★★★ 2011年2月26日(土) 梅田ブルク7シアター7 拠り所を失い彷徨う魂のミクロな邂逅の物語がスペクタクルを混じえた巨視的視座で語られつつ、でも、あくまで奥床しいあたりがキェシロフスキ的とさえ思わせる。達観したかのような新たな境地を垣間見せた…

ビッグ・アメリカン

★★★ 1983年3月12日(土) シネマ温劇 既に役者として伝説領域に降り立ったニューマンを皮相的に伝説否定の表舞台に立たせる諧謔がらしいと言えばらしい。停滞しまくる展開は盛り上がらなくもそれこそ意図であったろうが、未だ欠けたのは滋味と余裕。ところどこ…

評決

★★★ 1983年3月18日(金) SABホール ニューマン演じる主人公は当て書きとも言える完膚無きまでの定型キャラであり意外性の欠片もない。その辺が全く物足りないのだがウェルメイドな法廷劇なのだろう。否定する気もないが欲しいのはガツンとくるようなプリミ…

引き裂かれた女

★★★★ 2011年9月17日(土) 高槻セレクトシネマ1 アレン的爺い万歳映画かと思うそばから展開は微妙にズレ出し、ブニュエル臭漂う隠蔽されたド変態要素を垣間見せつつ、やがては行ってこいな遠い地平で詠嘆でもするのかと思えば、いけしゃあしゃあと引き裂か…

ビクター/ビクトリア

★★★★ 1983年10月23日(日) 新世界国際 全く期待せずに、こういうのを見たときに心底アメリカ映画は良いなあ…と思わせる…そういう作品。てらいが無く泥臭い笑いを振りまく一方でミュージカルの伝統というものを思わずにいられないセンスの良い振り付け。(cinem…

彼岸花

★★★ 1983年12月16日(金) ビック映劇 1992年2月9日(日) 日劇シネマ 頑なに自我を通す親父佐分利信が、後期小津作品の中ではとりわけ融通の利かない男で、枯淡の域には未だ遠く、小津の「赤」を偏重するカラーへの異様な拘泥と合いまり息苦しい。山本富士子が…

ヒミズ

★★★★★ 2012年1月14日(土) 梅田ブルク7シアター6 再生とか綺麗ごとの修辞ではなく自壊寸前の剥き身で再構築されよ若人よ…と言うことだろうし、でんでんや渡辺に仮託された未来を見据える親爺たれという園子温の時代感覚は圧倒的に正しい。坂道や池を配し…

昼下がり、ローマの恋

★★★ 2012年3月17日(土) 梅田ガーデンシネマ1 3話のおじんが若い女子に惚れられると言う理想郷設定が、デ・ニーロの屈託で台無し。「見て私」的乙女チックな所作は正直気持ち悪い。2話が最高で最後まで崩壊のカタストロフが持続。爆笑ボルテージも振り切…

ヒューゴの不思議な発明

★★★ 2012年3月24日(土) 梅田ブルク7シアター4 パリの広大な駅セットを縦横に駆け巡るカメラがアクションみたいなものを映し出しているがマニュアルに従属した形骸でしかなく、スコセッシが映画愛を語るにメリエスと言うのが又胡散臭く本気汁は一滴も感じ…

人生劇場 飛車角

★★★★ 2012年5月26日(土) 新世界東映 沢島の演出は旧態な小刻みなカット繋ぎの感情発露と長廻しの愁嘆場を錯綜させ緩急自在であり、任侠マターに準ずる男優陣の安定より佐久間良子のジャンル不定さも又好ましい。殺陣の見せ場は案外少ないが充分に黎明期の…

ピザボーイ 史上最凶のご注文

★★★ 2012年7月14日(土) 新世界国際劇場 弾け切らないコメディで片付け切れないそこはかとない陰惨さが匂うのだが、そのことに別に自覚的なわけでもないのだろう。相変わらず見た目ほどバカ度が高くないアイゼンバーグに胃もたれ感があるが、マッチョ親爺と…

美女と野獣

★★★ 2020年7月16日(木) 梅田ブルク7シアター3 シネコンでこれと「シンデレラ」と1100円でやってて、せっかくやからどっちか見とこと思いました。俺としては下克上物語のシンデレラに惹かれるところやったんですが、監督のケネス・ブラナーにビタいち…

ひめゆりの塔

★★★ 1982年7月23日(金) 伊丹ローズ劇場 『あにいもうと』が成功したものだから同じ水木洋子脚本の再映画化第2弾ということだろうか。が、ここには天才(秋吉久美子)が不在であったし戦争への思いは年とともに風化する。職人芸は健在で予想外に悪くはないが…

ビリディアナ

★★★ 1982年7月21日(水) 三越劇場 素晴らしくロジカルに展開していく反カトリックなアンチモラリズム。ではあるが終盤の突発的カタストロフィに至る劇的緊張が明確に醸成されてるとは言い難い。それがブニュエルなのだとしても明晰な撮影と演出であるだけに惜…