男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【かあ~かの】

帰ってきた若大将

★★ 1981年2月25日(木)伊丹グリーン劇場 バブル勃興前夜の停滞期に高度成長時代のコンセプトを何の再考察もなく復刻しようという過ちもだが、何よりええ歳こいたおっさんが若大将だ青大将だと脳天気に浮かれてる様に如何様にすれば興味を持てるのだろう。加…

彼女と彼たち なぜ、いけないの

★★★ 1981年1月4日(日) コマゴールド こういうことがアンチモラルとされた時代に淡々と肩肘張らずに物語るという点だけが身上なのにタイトル「何故いけないの」ってのは野暮というもんだ。同衾する男女のインモラリズムは表層の社会的ジェンダー作劇でかわ…

風の電話

★★★★★ 2020年1月26日(日) MOVIXあまがあき5 諏訪敦彦の映画は最初期の「2/デュオ」を見たっきりで、その後見ていなかった。 フランス資本との提携らしい近年の作にも関心はあったのだが、ミニマムな私的世界を題材にする彼の作風が、見る側の一種…

ガキ帝国

★★★★★ 1981年3月10日(火) ニューOS劇場 1981年6月28日(日) 伊丹ローズ劇場 少なくとも、この映画にはマイナーなゴッタ煮的混沌の地平から何かを覆そうという気概が厳然として存在していた。西梅の地下街をそぞろ歩く横移動の臨場感もTVから流れる「ザ…

カツベン!

★★★★ 2020年1月7日(火) 梅田ブルク7シアター4 あんまり評判は芳しくないみたいで、確かに何か新機軸を打ち出したかというと無いというしかない。コメディという分野で「ファンシイダンス」や「シコふんじゃった」みたいなソリッドな切れ味を叩きつけてく…

怪盗ルパン

★★★ 2019年12月21日(土) シネリーブル梅田4 ルパンっていったら今では三世しか思い浮かばなくなってしまったが、俺の子供のころは、まだ一世がルパンであって、そのイメージは主にポプラ社が刊行していた少年向けの「怪盗ルパン」シリーズで培われたもの…

家族を想うとき

★★★★★ 2019年12月21日(土) シネリーブル梅田1 まるで俺の家族の話みたいだと思った。 そしてそれは、この日本にの今においても少なからぬ範囲で当てはまる物語だと思う。 運送業に於ける過酷な実態が取りざたされて久しいが、それでもアマゾンに抗したヤ…

風立ちぬ

★★★★★ 2013年8月25日(日) MOVIXあまがさき11 恋も仕事も限定期間の最も美味しい部分のみを抽出し、人の一切の邪心・悪意は隠蔽される。水彩画のように儚い今際の際の美しいだけの思い出は、それでも黄泉の国と隣接し境界は融解してる。出会いと再会…

解放区

★★★★ 2019年11月9日(土) テアトル梅田2 5年近くもお蔵入りになったという、この映画をめぐる背景についてだが。 そもそも大阪市が母体となって運営されているCO2という映像制作にかかわる助成団体に企画を通して製作されたが、西成のあまりにアンダー…

貝殻と僧侶

★★ 1981年6月14日(日) SABホール 跳躍するイメージが相剋するか新たな何かを産みだすかでなく並置されるだけで面白くない。その上にシークエンスが無駄に長く冗長。半分に切っても問題ない気がする。黎明期のアヴァンギャルドの初作として刻印された史的…

帰れない二人

★★★★ 2019年9月18日(水) シネリーブル梅田4 2001年から2017年。 山西省から重慶、新疆ウイグル自治区から山西省。 とジャンクーが拘る時間と空間が移ろう構成になっていて、その中で劇的に変わり行く中国の様相が点描される。特に重慶・奉節の場…

SHADOW 影武者

★★★★ 2019年9月6日(金) 大阪ステーションシティシネマ10 俺は、チャン・イーモウの熱心な鑑賞者ではない。 のだが、初期のころの「菊豆」、「紅夢」を見て、このおっさん形式主義に拘泥して早晩行き詰るわと思っていたら、「あの子を探して」でいきなり…

火口のふたり

★★★★★ 2019年8月25日(日) MOVIXあまがさき2 奇をてらった設定や人物が登場するわけでもない。 いや、最後にあるのだが、それが蛇足に思えるほどにストレートに何年振りかで再会した男と女の心の動きを精緻に追った話であって、その両者の反応や言動…

限りなく透明に近いブルー

★★★ 1981年7月6日(月) 梅田コマシルバー SEX&ドラッグの成分が希釈されて形骸的なモラトリアム青春紋様が剥き身を曝け出した。映画的表現としてもオーソドックスで破綻も無さすぎで既存論法に呑まれ丸め込まれた。それでも妥協の中に戦おうとした意志と…

かぐや姫の物語

★★★ 2013年12月14日(土) 大阪ステーションシティシネマ10 ずっと『ハイジ』がチラつく。都はフランクフルトで相模はロッテンマイヤーだ。不毛な月世界対比の現世のエコ賛歌は『狸合戦』。成程高畑の集大成かもだが、ならば少女のリリシズムをこそ全面開…

海獣の子供

★★★★ 2019年6月19日(水) TOHOシネマズ梅田4 原作未読です。 女子高生の日常のミニマムな悩みとかから始まった物語が、どんどん流転・漂流して、クライマックスは「2001年」のスターゲイトのような神秘・宗教的世界に突入し、そして再び日常に戻る…

ガタカ

★★★ 2014年2月5日(水) トビタシネマ ホークの下卑た感とロウの持って産まれた感がドンピシャの『太陽がいっぱい』焼き直しだが、それだけである。寧ろ信じて念じ続けりゃ何とかなる的甘さが後退とも思える。未来社会の多くの意匠は局地的で広がらないが切…

家族の灯り

★★★★★ 2014年3月15日(日) シネリーブル梅田3 真面目なドライヤーやブレッソンを装いつつ舌を出すオリヴェイラ。凪の水面の湖底では悪意と洒落っ気が絶妙に混在する。老妻の偏狭を撃ち、善人ぶった老父の妄執を叩きのめす呵責の無さは怖いもの知らず。銅版…

悲しみは女だけに

★★★★ 2019年3月30日(土) シネヌーヴォ よくもまあ、こんだけ救いのない物語を構築したもんだ。 戦後まもない広島、尾道が舞台だが、小津や大林の映画とは別世界。 しかし、この時代はみんな、こんな感じだったのかもしれません。 夢も希望もないっちゅうか…

家族のレシピ

★★★ 2019年3月16日(土) 大阪ステーションシティシネマ10 主人公の父親が急逝してシンガポールに行こうとするその心理が見始めた当初、いかにも説明不足で入り込めない。そのへん、監督のエリック・クーの語り下手なのか、編集で切られたのかは知る由もな…

戒厳令の夜

★★★ 1980年7月11日(金) 伊丹ローズ劇場 壮大な歴史ミステリーロマンの筈なのに山下・鶴田・大木が繰り広げる極右的アナクロニズムのみが浮かび上がる。ちぐはぐ極まりない若松と山下と宮島がどういうポリシーの元に掻き集められたのか…という方がよっぽどミ…

隠し砦の三悪人

★★★ 1978年11月5日(日) 伊丹ローズ劇場 瞬時の判断で騎乗追走しの鮮やかな3人斬りの挙句に冗長な藤田との申し合い。決定的な個の脅威が存在せぬ状況で内輪揉めに終始する世界観は余程の芸どころ不在では厳しい。上原美佐の学芸会は突き抜け笑えるが【黒澤】…

影武者

★★★ 1980年4月26日(土) 伊丹ローズ劇場 冒頭の盗賊と信玄の対峙は仲代2役と山崎をフィックス同一ショットに捉え十数年ぶりの黒澤新作への期待感を煽るのに充分な画力が漲る。だが結局そこだけで大状況へ傾注する老害が全篇を覆い編集のキレは皆無。挙句に長…

帰らざる日々

★★★ 1980年7月31日(木) 毎日ホール リアルタイムの青春は苦しみと不安の連鎖であるにしても、回顧の中では輝きだけが残像のように残り続ける。そういう自明の理を平易化されて出されても何がどうとも思えない。どうしようもなく不幸な連中ばかりで泣けるが若…

海潮音

★★★★ 2018年9月2日(日) シネヌーヴォ 決して完成度が高いとは言えないし描き込み不足も往々にしてあるが、それでも面白かった。 橋浦方人の商業映画2作目なのであるが、それでこういう一種ビスコンティ紛いのバロックな崩壊劇をオリジナルで作ろうとした…

悲しみよこんにちは

★★★ 1980年9月2日(火) 梅田コマシルバー 少女の仄暗い葛藤を描いたにしても所詮地獄まで行く訳でもないお嬢サガンの 自己弁明に興が乗らない。セバーグが素晴らしいという他に何が必要だというのかと 開き直るほどとも思えないが、英国臭に違和感あるニヴン…

★★★★★ 1980年10月12日(日) SABホール 怒涛のように錯綜する個人史と国家・世界史の断片だが内省的な静謐と超現実の戦慄が交錯。母の洗髪場面の幻想味も相当なのだが何気ない草原が風でそよぐだけで内包した何かが醸し出される。タルコフスキーの到達点。…

KANO 1931海の向こうの甲子園

★★★ 2015年1月25日(日) MOVIXあまがさき10 力作なのだが余りに総花的展開で散漫の誹りは免れない。挫折した永瀬の自己回復の物語と混成ダメチームの成功譚はリンクしつつも根っこで化学反応は起こさない。更に何故か札商の青木が語り部で、大沢の出番に…

風の又三郎

★★ 1979年2月4日(日) SABホール 製作時に観たならどうだったか知れぬが、こうも特殊撮影のアラが目については乗れない。その部分に負ったリリシズムこそが肝の題材だけに致命的。これが更に10年前の作品であったなら、よりレトロな風情も加味され別種の…

風に立つライオン

★★★ 2015年3月14日(土) TOHOシネマズ梅田3 修造キャラが既視的な主人公だが現地ロケの空気は子供達を通じて吹き抜ける。全篇ケニア舞台で貫徹して欲しかったところだがドラマ構築にネタ不足で真木の五島パートが併走する。そして、これが又仄かな諦観を内…