★★★ 2024年10月12日(土) Tジョイ梅田5
予備知識ゼロで見たので展開の理不尽に戸惑った。でも、よくよく考えてみたら世の中では公平なんて幻想なんだし、人より苦労しても報われなかった人生なんて山ほどある。それでも内山拓也の前作「佐々木、イン、マイマイン」では報われなかった佐々木の多少なりとも煌めいていた日々や、彼を追悼する仲間の存在が救いとなっていた、はずである。
先行きに見えてきた微かな希望や、笑い燦めく儚い日々や、贖罪による赦しや、でなければ耐え難い絶望と孤独や、行き場のない怒りや、そういう何かが前振りにあっての唐突に来る終焉が常套であろう。そんなありきたりでなく現実まんまを描きたかったと言うならそれも良しなのだが、であるならそれとは別の何かが足りない気がする。
考えるに、その何かとは作り手の映画が行くべき方向への意思表示の度合いのような気がする。ブレッソン「少女ムシェット」やルイ・マル「鬼火」とかが、冷徹に自壊を観察してるだけのように見えて、映画の筆法にただならぬ手管を凝らしているのに比べて流されているだけに見えてしまうんです。それらと比べることは場違いで酷だと思いますが。内山拓也には期待してるので敢えて。