男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【き】

魚影の群れ

★★★ 1984年2月24日(金) 伊丹グリーン劇場 本来単純な構図の世代間の相克劇の筈が、歪な拘りで男と女の劇に執心し、実際映像に凝縮された内実のテンションもそっちが圧倒的なのだ。緒形と十朱の邂逅シーンの奇跡的達成と反するクライマックスのマグロ釣りのシ…

KISS&KILL キス&キル

★★★★ 2010年12月11日(土) TOHOシネマズ梅田5 申し訳に南仏から発端された物語世界が、結局はご近所戦争的ミニマム世界に限定されちまう半端さも、ヘイグル嬢の熟女的ケツの座りの良さに誘われる不条理の快楽に委ね雲散霧消する心地よさ。ローアングル…

キック・アス

★★★★★ 2010年12月25日(土) テアトル梅田1 少年が感化・触発されても超人になったりせず、あくまで身の丈に合った成長にとどまるのが良い。一方で虚構を担う少女がウルトラサディスティックにヴォーン掌中の男騒ぎを粉砕する。その構図のマゾヒスティック…

キル・チーム

★★★ 2021年1月23日(土) シネリーブル梅田3 実話に基づいてるって重みを加味しても尚、手垢のついた題材。米軍隊内部の腐敗を描いたものは「プラトーン」や「カジュアリティーズ」など枚挙にいとまがない。 しかも、低予算であるから派手な戦闘シーンなど…

キラー・インサイド・ミー

★★★★ 2011年5月7日(土) シネリーブル梅田1 一定の論理に準拠するかに見えつつ結局何が何だかさっぱりと言うサイコの心理的な綾が微妙だし、中庸だがシャレっぽい語り口も微妙。体を張った2大女優の圧倒的エロスは空転し収束される深淵も無い。描かれるべ…

奇跡

★★★★ 2011年6月25日(土) 梅田ブルク7シアター6 色々悩みつつも生きていく諦観とも言うべき境地。仄かに暖かい3世代の群像スケッチは稀有な高みを感じさせる。見続けたい停滞を振り切り疾走に移る後半に行き着くクライマックスのケレンの無さ。それも味…

気狂いピエロ

★★★★★ 1983年5月27日(金) 三番街シネマ2 全てのシーンに横溢する哀感はポップな色彩と採光で皮相にも倍加され、縦横で流麗なカメラワークは運動の儚さを照射する。カリーナとの終焉が産んだ男泣きこそ繰り返し模倣され陳腐化していく先人達の遺業の中で断固…

記憶の技法

★★★ 2020年11月28日(土) シネリーブル梅田4 池田千尋。黒沢清の愛弟子にして「クリーピー」や「空に住む」の脚本に参加。 とまあ、パロディアスユニティの血脈を引き継ぐ正統嫡子ということなのだろうが、「スタートアップガールズ」と本作を見た限りでは…

キッドナップ・ブルース

★★ 1983年6月29日(木) 毎日ホール 限りなくアドリブに近いタモリと客演者たちとの掛け合いが黴びたシネマ・ヴェリテのような制作時に見ても10以上年前の作品の如きの古臭さ。意図された無意味や仕掛けられた観念は周到な計算に裏打ちされて成立する。これ…

キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー

★★ 2012年1月7日(土) 新世界国際劇場 虚弱ガキのマッチョ信仰が能天気でない分イジイジ感がイヤ増し鬱陶しい。で、マッチョになっても結構冴えないのが輪をかけてシミッたれており、さしたる活躍もせず意気揚々と凱旋されても困る。ドクロ仮面めいた敵キャ…

奇跡

★★★ 1982年1月23日(土) SABホール オプティミストのベルイマン的なものを想像していただけに真っ先に手法に対する疑念を感じ終始それを拭うことは叶わなかった。執拗なまでの移動を組み合わせたパンニングの多用は強固な意志を欠落させ曖昧な空気を提示す…

窮鼠はチーズの夢を見る

★★★ 2020年9月17日(木) 大阪ステーションシティシネマ12 ジャニヲタと腐女子で満ち溢れた劇場におっさん1人という濃密空間の異分子になる覚悟ってのは考えただけで怖気付いて萎えそうになるんですが、見たいもんは見たいねんからしゃーないやんけと開き…

禁じられた遊び

★★★ 2012年4月6日(金) TOHOシネマズ梅田10 年月を経て「遊び」の背徳性は濾過され、残ったのは従容とした農家の日常。家族の死さえ瞬く間に埋没する。だが、半端に巧いクレマンは打算との狭間で根源的モチーフに迫れない。「別れ」と「遊び」に因果…

黄色い星の子供たち

★★★★ 2012年4月21日(土) 新世界国際劇場 若干食傷な題材なのだが、ロケやセット美術にしても役者の演技にしても、描くべき事象に愚直なまでに正対し一切逃げてない。そこに心打たれる。通常避けても構わないヒトラーまでもが当たり前のように描かれボロも…

北国の帝王

★★★ 2012年5月5日(土) プラネットスタジオプラス1 走行中や停車中の列車の脇や屋根上をボーグナインがひたすら行ったり来たりする。そこに直線運動の映画的ダイナミズムがあると言えばあるし画としても魅力的。ただ、頂上決戦的な男の確執のドラマが淡白…

君がいる、いた、そんな時。

★★★ 2020年8月3日(月) テアトル梅田1 こういう話が悪いとは言わないが、世界があまりに収縮しているんじゃなかろうか。 フィリピーナの母親と日本人の父親をもつハーフの少年が、クラスでクソガキどものイジメの標的になっている。 そこそこガタイもいい…

銀嶺の果て

★★★ 1982年5月29日(土) 新世界東宝敷島 黒澤的単線構造の典型を実直な谷口演出で見せられたって最早見どころは無い。が、演出のやりたいことは良く解る。民謡の使い方など微笑ましい限りで、そういう部分は尊重したい。(cinemascape) kenironkun.hatenablog.…

キャバレー日記

★★★ 1982年7月5日(月) ダイニチ伊丹 定型的物語を不定形とは言え伊藤克信に解体する程の力があるわけではなく、「さあさあさあ」の掛け声を増幅させた狂騒の更なるデフォルメこそが欲しかった。ストーリーの面白さで、それなりには見せてくれるがフォトジェ…

恐竜の島

★★★ 1981年8月2日(日) トビタOS劇場 着ぐるみともダイナメーションともCGとも異なる実寸大張りぼてロボの恐竜たちが、実風景の中でリアルな肌触りを醸す。動けないものを如何にして脅威として見せるかの初源的活劇性への探究がなかなかの味わいで楽し…

新喜劇王

★★★★ 2020年7月18日(土) 新世界国際劇場 チャウ・シンチーは「少林サッカー」からしか見てないので、この映画のオリジナル「喜劇王」は未見。本作はシンチー自身によるそのセルフリブートである。 前作は主演もシンチーだったが、今作では女性に変更された…

桐島、部活やめるってよ

★★★★ 2012年8月17日(金) MOVIXあまがさき1 部活組と帰宅組と間で揺れ動く者の青春の悶々という超ミニマム命題が、素晴らしくシュアな技術と技法で解題されそうになるが、そういう閉じた空間を破り外世界を窺うにオタクどものゾンビごっこを持ち出し…

恐竜が教えてくれたこと

★★★★ 2020年6月17日(水) シネリーブル梅田1 なんやねんと思いました。邦題が。 化石好きのマニアック小僧のしよーもない話かと思ってしまいそう。 原題は「テスとの普通じゃない夏」 テスってのは女の子の名前で、まあ、言うなれば、この映画は避暑地での…

凶弾

★ 1982年9月15日(水) 梅田グランド 悲愴なる(筈だった)ラストに向けてこれ以上無いご都合主義で組み立てられたストーリー。そういう映画は山ほどあるのだが、負って立つ主役が感情移入のしようもないトホホな野郎。こういうマイナス要素は掛算ならプラスに…

希望の国

★★★ 2012年10月27日(土) シネリーブル梅田2 無人の街で2人きりで末期を迎える老夫婦に切ないまでに心は共振をしつつも、「希望」の欠片も存在しない展開に萎える。柔な作劇が通じない状況への戸惑いは理解するが、嘘でも「希望」を謳うべきだろう。若し…

危険なメソッド

★★★ 2012年10月27日(土) TOHOシネマズ梅田7 確執や愛憎など常道なメリハリがクローネンバーグは不得手。かと言って、カルトな精神学世界を舞台にしつつ得意の変態嗜好も遠慮して出せない。結果、ダラで平板な凡作となった。皮肉にもキーラの茶番演技…

疑惑

★★★★ 1982年12月12日(日) 伊丹ローズ劇場 「悪女」という流行語も手垢の付いた時期に今更という感じの2大女優対決といった90%負けのコンセプトで作られたのに、圧倒的に見る者を引きずり込む吸引力は年季の入った女優の底力なのだろう。演出もカメラも役…

恐怖の報酬

★★★ 1981年1月11日(日) 大阪府中小企業文化会館 何度か繰り返されるサスペンスの山場はクローズアップの力感が漲り弩級とは言えるが、ドラマトゥルギーの欠如が決定的。食い詰め者達の脱出願望に更なる切実さが欲しかった。要はハートに沁みてこないのだ。…

機械じかけのピアノのための未完成の戯曲

★★★ 1981年2月8日(日) SABホール コンセプトは悪う筈もない。ただただ映画的ケレンが不足なのと下世話な世界に及び腰なのだ。曰わくありげな長ったらしいタイトルにちょっと期待しすぎた。インテリ貴族達の斜陽にしても男女の不倫愛にしても今一食い足…

キャッツ

★★★★★ 2020年1月25日(土) 梅田ブルク7シアター7 舞台は未見だし、楽曲も「メモリー」は耳にしたことがあるが他は知らない。 当然にストーリーもどんなもんかは知らなかった。コアな舞台ファンからしたら門外漢であります。 前評判は散々であったし、実際…

金環蝕

★★★ 2019年10月6日(日) シネヌーヴォ 子供の頃にTV放映で見て、とんでもなくオモロイと思った記憶がある。 それは、多分に宇野重吉の歯抜けメイクが醸すいかがわしさと仲代のクールで怜悧な佇まいのガチ対決によるもんだったと思う。 何十年も経ってよう…